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53 Sクラス昇格




 祝勝会から数日後の朝、俺の家にギルドから呼び出しがあった。


 居間にいたジャネットが顔を出す。


「何だい、あんたまた呼び出しかい? 今度は何をやらかしたのさ」


「朗報だ、今回はお前も呼び出されてるぞ」


「はあ!? 何であたしまで呼び出されるのさ? もしかして、この前の祝勝会でまずいことでもやっちまったかね」


 頭をガリガリとかくジャネット。どれ、教えてやるか。


「安心しろ、本当に朗報だ。俺たちがSクラスに昇格するそうだ」


「Sクラスに!?」


 驚いたジャネットが目を丸くする。


「ああ。褒賞も届いているから取りに来てくれとのことだ」


「やった、あたしもついにSクラスか! やっぱりAとSじゃ大違いだからね!」


「そんなに違うものなのか? クエストはAクラスなら自由に受けられるだろ」


「それはギルドで公開されてるクエストだろ? Sクラスだとギルドや国から直接頼まれるクエストも多いのさ。この前の騎士団の依頼みたいにね」


「なるほど、そうなのか」


「これからあたしたち、ますます活動の幅が広がるよ」


 嬉しそうにジャネットが言う。それは俺にとっても好都合だな。


「俺は昼過ぎにギルドに行こうと思ってるが、お前はどうだ?」


「ああ、あたしもそれでいいよ。じゃあまた後でね」


「わかった。俺はカナを学校まで送っていくから留守番頼むぞ」


「あいよ。行ってらっしゃい」


 そう言って、ジャネットが二階の自室へと戻る。俺も支度を終えると、カナを連れて玄関を出た。








 午後になり、昼食を取った俺とジャネットはギルドの窓口へと来ていた。


 窓口に着くや、レーナが声を上げる。


「リョータさん! 凄いです! Sクラスですよ、Sクラス!」


「そうはしゃぐな。声が大きいぞ」


「だって、Sクラスですよ! この国に十人といない選ばれし者ですよ!」


「盛り上がってるところ悪いんだけどさ、あたしもSクラスになるんだよね?」


「あ、はい。ジャネットさんもSクラスになりますね」


 冷静さを取り戻したレーナが言う。


「そもそも、どうして俺たちがSクラスに?」


「どうしても何も、リョータさんはすでに盗賊退治、魔族の侵攻を撃退、砦の上級魔族を撃破と文句なしの功績じゃないですか! 昇格の条件を十分満たしています!」


「ジャネットはどうなんだ?」


「ジャネットさんはすでに昇格が間近でしたからね。この前の砦の攻略戦で基準に達したということです」


「なるほど」


 うなずく俺に、レーナが言う。


「でもリョータさんなら、Sクラスなんて通過点ですよね。きっと近いうちにSSクラスに昇格するに違いありません」


「さあ、それはどうだろうな」


「あたしもレーナに賛成だね。それどころか、リョータならSSSエスエスエスクラスにでもなっちまうんじゃないのかい?」


 そう言ってジャネットが笑う。どうでもいいが、エスエスエスとはゴロが悪いな。トリプルエスとかの方がいいんじゃないだろうか。というか、そんなクラスはないだろう。


 そんなことを考えていると、レーナがいろいろと持ってきた。


「こちら、王国からの褒賞になります。金貨が三百枚と……目録、ですか? リョータさん、美術品にでも興味があるんですか?」


「まあ、個人的な趣味だ」


「そうですか。美術品が好きだなんて何だか意外ですね。金貨は重いですから、百枚ずつに分けておきました」


「ああ、すまんな」


 受け取ろうとする俺に、レーナが熱っぽい目を向ける。


「リョータさんは本当に凄いです……。Sクラスになりますし、名誉騎士にもなりましたし、お金にも不自由してませんし……。もう手に入らないものなんてないんじゃないですか?」


「そんなことはない。それに、ここまで来れたのはレーナのサポートがあったからだ。感謝している」


「え、そ、そんな……」


「感謝の気持ちをこめて、今度食事にでも招待したいがどうだ?」


「ほ、本当ですか!? はい、喜んで……」


 顔を赤らめてレーナがうなずく。


 隣ではジャネットがじろりと睨んでくる。お前はいつもいっしょにいるのだからいいだろう。


 荷物を受け取り帰ろうとすると、レーナが声をかけてきた。


「そうだ、近いうちにまたお城からお仕事のお話がくるそうです。直接リョータさんのお宅に連絡するそうです」


「わかった。では今度食事の約束でもしよう」


「は、はい……」


 うなずくと、レーナが頭を下げる。


 俺はジャネットに金貨の入った袋を一つ手渡して、ギルドを後にした。




「しっかし、金貨ってのは重いもんだねえ」


 袋を一つ抱えるジャネットがぼやく。


「そう言うな。それはお前にやるんだしな」


「えっ!? ちょっと待ちなよ、これ金貨百枚なんだよ!? いくら何でも多すぎるだろ!」


「何、気にするな。いつもこんなに渡せるわけじゃないからな。もらえるうちにもらっておけ」


「さすがリョータ……。それじゃ遠慮なくもらっておくよ」


「もちろん、その分しっかりと働いてもらうからな」


「それは任せてよ。あたしもSクラスになったんだしね」


 そう言ってジャネットが笑う。


 俺も笑みを返しながら、家へと帰った。






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