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50 姫騎士の決断




 サラが副団長を辞める。突然の話に、俺たちはサラへと驚きの目を向ける。


 そんな俺たちの様子にも動じずに、サラが口を開いた。


「そんな目で見るな。遊撃隊に専念したいから他の者に副団長を任せることにしただけだ」


「まだ正式には決まっていないが、殿下の後任にはシモンを考えている。今回彼に席を外してもらっているのはそのためだ」


 なるほど、そういうことか。確かにこのお姫様は前線に出ていたいのだろうしな。騎士団を束ねるのは他の者に任せた方がやりやすいだろう。


 サラが話を続ける。


「もっとも、この前の戦いで私の遊撃隊はかなりの損害を受けてしまってな。お前たちのおかげで死者は最小限に抑えることができたが、ケガ人は結構いるのだ。しばらくは動ける者たちだけで活動するしかない」


「そこで、というわけではないのだが、君たちには殿下と共に遊撃隊の客分として事に当たってもらいたい。逆に言えば、君たちに頼みたいのは遊撃隊が動くような大きな仕事だということになるな」


「まあ、こうなると遊撃隊というよりも特別対策班とでもいった方が適切かもしれないがね」


 そう言ってサラが笑う。


「つまり俺たちはサラの下で働くことになるというわけか。これはこき使われそうだな」


「失敬な奴だな。これでも私は部下たちからはそれなりに慕われているんだぞ」


 それはお前が怖いからそう接しているんじゃないのか。そう思ったが、もちろん口には出さない。


「そういうわけで、今後しばらくはお前たちに手伝ってもらうことになる。よろしく頼む」


「ああ、こちらこそ」


 そして、俺たちは立ち上がって握手をした。ジャネットもサラと手を握る。カナも何だかよくわからない様子で握手をした。


 再び席に着くと、サラが口を開く。


「それでは目録の写しと依頼したい仕事、褒賞の金貨はギルドを通じて渡す。それより今日はこの後祝勝会だ。三人とも楽しんでいってくれ」


「サラも参加するのか?」


「もちろんだ。主だった武官は皆参加する。もっとも私は武官としてではなく王族の代表として出席するのだがな」


「そうか。ではお前とは飲めないのか?」


「まさか。半分はお前のお披露目のようなものだし、私もお前の卓に行くさ。遠慮はしなくていいぞ」


「じゃあ、あたしも腹いっぱい食ったり飲んだりしていいのかい?」


「もちろんだ。この際自分の胃袋の限界に挑戦してみるのもいいのではないか?」


「ははっ、お言葉に甘えさせてもらうよ」


 ジャネットが嬉しそうに笑う。カナに向かって、あんたもしっかり食うんだよなどと言っている。


「私もお前とはゆっくり話したいと思っていたところだからな。今日はとことんつき合ってもらうぞ」


「王女殿下のお言葉とあらば逆らうわけにはいかないな」


「王女殿下ではなく、友人として、だろう?」


「そうだったな。それでは友人としてお相手しよう」


「そうだ、それでいい」


 満足そうにうなずくと、サラはオスカーに目配せする。それを受けてオスカーが言う。


「用件は以上だ。式の後で疲れているところご苦労だった。それでは後ほど祝勝会で会おう」


「ああ。それでは失礼する」


 二人にあいさつすると、俺たちは団長室を後にした。




 部屋を出ると、外にはシモンが立っていた。もしかしてずっとここで待っていたのか。俺たちの案内など下っ端に任せればいいものを、何とも律儀な奴だ。


 俺たちを控室まで案内するシモンが、俺に聞いてくる。


「団長からは何かお話がありましたか?」


「ああ、おおむねシモンから聞いたのと同じ話だった。今後しばらくは国内の膿を出すことになるようだな」


「はい、魔族との戦いに明け暮れている間に、国内にもいろいろな問題を抱えてしまっていますから」


「サラがずいぶんとやる気を出していたぞ。まあ、自分の国なのだから当然か」


「はっはっは、それはそうでしょう」


 肩を揺らして笑うシモンに、俺は言った。


「お前もこれからは忙しくなるだろうしな」


「おや、私の話もあったのですか? さては副団長の下でこきつかわれるのですかな」


 やはりそれが彼女に対する共通の認識なのだろうか。それとも騎士団ではお決まりの冗談なのか。俺には判断がつかない。


「まあ、じきにわかるさ」


 確かにこの男なら、経験も豊富だろうし剣の腕も十分だ。この性格なら、おそらく団員たちからの信頼も厚いであろう。新たな副団長には適任だ。


 不思議そうな顔をするシモンに案内されながら、俺たちは城の廊下を歩いていった。






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