46 レーナの賞賛
砦から自宅に帰った翌日、ギルドから祝勝会の日取りやら何やらの連絡が来た。
今回は上級魔族を倒したとあって、いつも以上に報奨金も大きいらしい。他にも上の方でいろいろとやり取りがあるようだ。
とりあえず昼過ぎにギルドに来てくれとのことだったので、俺はカナとジャネットを連れてギルドへと向かった。
ギルドの窓口に行くと、レーナが嬉しそうに手を振ってきた。
「リョータさん、凄いです! 本当に凄い!」
「来るなりずいぶんとご機嫌だな、レーナ」
俺の言葉に、レーナが顔を赤くしながらも熱っぽく言う。
「だって、リョータさんずっと活躍しっぱなしですよ!? しかも今回は姫騎士様でさえ倒せなかった魔族の大物をやっつけたんでしょう? 凄いなんてものじゃないですよ!」
「お褒めにあずかり光栄だが、用事があって呼び出したんだろう? 今日は何の用だ?」
「あ、そうでした! 今シモン様を呼んできますね!」
そう言って、レーナは窓口から席を立つと急いで奥の方へと走って行った。
その後ろ姿を見つめていると、ジャネットが声をかけてくる。
「しっかし実際大したモンだよ。こんな短期間でここまで名を上げた冒険者なんて、あんたが初めてなんじゃないかね」
「そうなのか」
「そりゃそうさ。あたしらじゃかなわないような魔族を立て続けに二体も葬ったんだからね。この前の奴なんて、明らかに大将格だったしね」
ジャネットもずいぶんとテンションが上がっているようだ。まあ、この前の砦の攻略では彼女も派手に暴れていたしな。気分も高揚しているのだろう。
少し待っていると、レーナがシモンを連れて戻ってきた。
「リョータ殿、わざわざお越しいただきありがとうございます」
「こちらこそ。こうしてギルドで話すのも何度目かな」
「いや、まったくですな」
シモンが豪快に笑う。
「今回は何の用だ?」
「ええ、まずは祝勝会へのご招待です。そこで褒賞などのお話もすることになると思います」
「そうか。またああいう式典があるのか?」
「そうですね。今上の方では勲章と何らかの称号の授与が話し合われているところらしいです。称号の授与となれば、陛下もおでましになられるでしょうな」
前回よりも大事になるというのか。それは勘弁してほしいのだが。
シモンがつけ加える。
「それと、団長と副団長がリョータ殿にまたお話があるそうですので。そちらの方もよろしくお願いします」
「そうか、わかった」
「日時はまたお知らせしますが、来週くらいになるかと思います。お伝えするのは以上です」
「ああ、いつもすまないな」
そう言う俺に、シモンが言う。
「それと最後になりましたが、サラ様の窮地をお救いいただきありがとうございました。あらためてお礼申し上げます」
「礼には及ばないさ」
俺たちにあいさつすると、シモンはその場から去っていった。
レーナが声を上げる。
「す、凄いですねリョータさん! 褒賞だけじゃなく、陛下から称号までいただけるなんて! そんな冒険者、Sクラスでもほとんどいませんよ!」
「そうか。それは光栄だな」
「もう、リョータさんったら感動が薄いですよ! 本当に凄いことなんですからね!」
「しょうがないさ、うちの大将はそういうことにはとんと無頓着なんだから」
肩をすくめながらジャネットが笑う。別に無頓着なわけではないが、それがどの程度利用価値があるのかよくわからないのでな。
それから、思い出したようにレーナが言う。
「そう言えば、カナちゃんももうすぐ学校に行くんですよね」
「ああ。その前に一度、俺も行く。学校の関係者にあいさつしたいからな」
「カナちゃん、学校は楽しみ?」
「カナ、学校、楽しみ」
表情を動かさずにカナがうなずく。この反応は、カナも結構喜んでいるな。
「学校ってのは、冒険者養成学校以外にもあるのか?」
「はい。上流階級の皆さんが通う学校に、私たちのような仕事につく基本を学ぶような職業学校もあります」
「どこの国にでもあるものなのか?」
「それは国によるんじゃないでしょうか。冒険者養成学校はどこの国にもあると思いますけどね」
「それは誰でも学べるようなところなのか?」
「望めば基本的には入れますけど、子供を学校に行かせる余裕がある家は限られてますからね。大人になってから行くという人も多いですよ」
なるほど、やはり義務教育というわけにはいかないか。
レーナがカナに笑いかける。
「カナちゃん、よかったね。学校に行かせてもらえて」
「うん。リョータ、やさしい」
「そう言われると照れるな」
「あんたもすっかり保護者だね、リョータ」
「まったくだな」
そう言ってみんなで笑う。
何にせよ、カナの学校に城の式典と、今週も忙しそうだ。まあ、退屈しないですみそうだな。
レーナにあいさつすると、そのまま市場に夕食の買い出しに向かい、それから俺たちは家へと帰った。