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43 姫騎士との再会





 砦の制圧に、それほど時間はかからなかった。


 四魔将とやらを倒したからか、魔族どもは動揺しサラたち騎士団によってあっさりと排除されていった。オレとジャネットも、砦に乗りこんでサクサクと連中を狩っていく。ずいぶんとあっけないものだな。




 砦を制圧すると、俺たちは騎士団の一人に司令室へと招かれた。


 やや広めの部屋には、サラと数名の騎士の姿があった。俺たちの姿に、サラがこちらへと振り返る。


「よく来てくれた」


「ああ、お誘いとあらばな」


 さてはお小言でももらうのだろうか。俺はこいつには目をつけられているからな。


 だが、サラの第一声は俺の予想を裏切るものであった。


「まずはお前たちに礼を言わせてほしい。我々を助けてくれて感謝する」


 どういう風の吹き回しだ? 俺たちに感謝の言葉のみならず、頭まで下げるなど。


「意外だな。俺はてっきり余計なことをするなと怒られるものだとばかり思っていたのだが」


「それは心外というものだ。私は命の恩人に礼も言えないほど恩知らずではない」


 そう言って、俺たちに椅子に座るよう勧める。


 席に着くと、サラは俺の顔を見ながら聞いてきた。


「聞きたいのだが、なぜお前たちがここにいる?」


「オスカーに頼まれたんだ。お前たちを支援するようにな。命令書もある」


「それは準備のいいことだ」


 命令書を見てサラが苦笑する。


「話では、かなり攻略に手間取っていると聞いたのだが」


「そうだ、敵の指揮官クラスがなかなか手強くてな。それをあらかた叩いていよいよ総攻撃という時に、あの上級魔族が現れたのだ」


「なるほど、俺たちはちょうどいいタイミングで到着したというわけか」


「そういうことになるな」


 うなずくと、サラは言った。


「ところで、あの技だが……」


「あの技?」


「とぼけるな。あの上級魔族を倒した技だ。あれはいったい何なのだ?」


「ああ、あれか」


 まあ、適当に凄い技だと思ってもらおうか。


「詳細は明かせないが俺の奥義だ。剣術、魔術、あらゆる技術を詰めこんだ必殺の技だから適当に想像してくれ」


「想像と言われてもな。あんな技、私の想像を超えている」


「それならそれでいい」


 そう言う俺に、サラは少し顔を赤くしながら言う。


「正直私はお前の力を見誤っていた。まさかあれほどの力の持ち主だったとはな……。オスカー団長の言う通り、お前は我々にとってなくてはならない存在だ」


「そんなに褒められると、さすがの俺も照れるな。いったいどういう心境の変化があったんだ?」


「私を茶化すんじゃない。今は心からそう思っているんだ。それはここにいる者たちも同じだ。お前たち、そうだろう?」


「はい。我々はリョータ殿のおかげで命を救われました。あなたがいなければ、我々は全滅しサラ様のお命もなかったかもしれません」


 サラにうながされ、周りの騎士たちが口々に俺に賞賛の言葉を浴びせてくる。あまり慣れていないだけに、いささかくすぐったいな。


「なんだいリョータ、話が違うじゃないか」


 隣のジャネットが、俺をひじでつついてくる。


「姫様には嫌われているなんて言ってたのにさ。見てみなよ、姫様の顔」


「姫様の顔?」


「ああ、あれはリョータに惚れてるね。大方あんたに命を救われたのと大技見せられたのとで、一気にコロッといっちまったんだろうさ」


「そうなのか?」


「あんたも鈍いねえ。ま、これ以上ライバルを増やさないでおくれよ、あんたにはあたしがツバつけてるんだから」


 ジャネットも勝手なことを言う。


 だが、サラが俺に好印象をもってくれたのなら俺にとっても都合がいい。何せ、れっきとした王族なのだからな。これからはいろいろと話も通しやすくなるだろう。


 そんなことを考えていると、サラが俺たちに言う。


「これから後方の部隊も砦に入る。この場で祝勝会をやろうと思うのだが、お前たちにもぜひ参加してもらいたい。どうだろうか」


「それは願ってもない申し出だ。ぜひ受けさせてもらおう。ジャネットはどうだ?」


「そりゃ大賛成さ。酒もあるんだろ?」


「もちろんだ。もっとも、口に合うかまではわからないがな」


「口の方を合わせるさ。というより、酒なんてのは酔えれば何だっていいんだよ」


「それはよかった」


 ジャネットの言葉に、サラが笑う。


 俺はカナにも聞いてみた。


「カナは祝勝会、出たいか?」


「祝勝会、何?」


「そうだな、いろんな食べものが出てきてみんなで騒ぐ集まりだ。カナはそういうの嫌いか?」


「わからない。でも、楽しそう」


「そうか。じゃあカナもいっしょに祝勝会に混ざろうか」


「リョータ、いっしょ。カナ、混ざる」


 そう言って、カナが俺の手を強く握ってくる。目が輝いているところを見ると、カナもずいぶんと楽しみなようだ。


「そのお嬢さんが参加するのなら、間違って酒を渡さないように注意しないとな」


「何、俺が注意するさ」


 サラの言葉に、俺が笑う。



 その後、祝勝会が始まるまで俺たちはしばし語らった。




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