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42 真の奥義





 腕を一本吹き飛ばされ、うめき声を上げる自称四魔将。その後ろから、俺は一声かけてやる。


「どうだ、俺のお気に入りの剣の味は?」


「い、今のは貴様の仕業かあぁぁぁっ!」


 怒りも露わに、魔族が俺を振り返る。どれ、一つ解説してやるか。


「もちろんだ。望みとあらばもっと見せてやってもいいぞ」


「図に乗るなよ人間。一度見た技をこの我が二度食らうとでも……」


 そのセリフを言いきらないうちに、魔族の脇腹に槍が突き刺さる。


「ぐおおおぉぉぉ!?」


「どうした、一度見た技はもう通じないのではなかったのか?」


「貴様、これはいったい……」


 苦痛に耐えながらも、魔族が俺に殺意を叩きつけてくる。ふん、腐っても上級魔族といったところか。


 どれ、もう少しヒントを与えてやろう。


「いいか、俺の方をよく見ていろよ。見逃すと痛い目を見るぞ?」


 俺の言葉に、魔族が敵意をみなぎらせながら睨みつけてくる。いつまでそんな顔をしていられるかな?


 サラたち騎士団の連中も固唾を飲んで見守る中、俺は一言つぶやいた。


「奥義・宝剣群乱」


 その瞬間、俺の右前方のあたりの空間から突如一本の剣が現れた。


 高速で打ち出されたその剣は、魔族目がけて飛んでいくと容赦なくその左肩に突き刺さる。


「うがあああぁぁぁ!」


 あたりに再び魔族の叫びがこだまする。ふっ、モーション無しの攻撃だ。回避もままなるまい。


「な、何だ、今の攻撃は……」


「何、俺の奥義の一端を垣間見せただけさ」


「す、凄いよリョータ! あんたにこんな隠し玉があったなんて!」


 魔族を手玉に取る俺に、ジャネットたちから歓声が上がる。連中には俺が未知の技を繰り出しているように見えているのだろう。


 もちろん、これも転移魔法の応用だ。とある場所に用意しておいた剣や槍を500メートルくらいの高度に転移させ、落下するのに任せてやる。


 5秒も経てばいい感じに速度がつくので、その状態で俺の周りの空間に転移させればちょっとした投擲器のできあがりだ。


 真空状態であれば、5秒も落下すればv=gtの公式にしたがい速度は約50m/s、時速にして約180キロほどにもなるからな。10秒なら約100m/s、時速360キロ程度だ。


 実際には空気抵抗でかなり減速するはずだが、こうして打ち出してみると結構なスピードで発射されている。まあ、地球とは空気抵抗係数も大気の密度や粘度も、あるいは流体の影響なども異なるかもしれないしな。


 そもそもこの世界の大気の組成はどうなっているのだろうな。ひょっとしたら、地球とは全く違う元素からなっているのかもしれない。


 そんなことはさておき、魔族は相当まいっているようだ。このくらいダメージを与えれば、奥義なしでも俺とサラ、ジャネットの三人でどうにかなりそうな気もするが、せっかくの獲物だ。こいつは渡さない。


「おのれ人間……。妙な奇術を使いおって……」


「お気に召したかな?」


 肩から剣を引っこ抜く魔族に、俺はとびきりの冷笑で応えてやる。


「調子に乗るなよ! あの程度の攻撃、油断しなければ十分叩き落とせるわ!」


「そうか、では本当にできるかどうかやってみてもらおう」


 俺は笑うと、魔族に向かい再び奥義を放つ。


 次の瞬間、魔族目がけて四本・・の剣が放たれた。予想外だったのだろう、魔族の目が驚きに見開かれる。


 そして、四本の剣のうち二本が魔族の腕を容赦なく吹き飛ばした。


「うぎゃあああぁぁぁぁ!」


 ついに腕一本になった魔族が、絶叫を上げながらその場にうずくまる。そんな魔族に、俺が声をかける。

 どのみちこいつが生きていられるのもあと数十秒だからな。最後に少し話でもしてやろう。


「どうした、俺の技など見切ったのではなかったのか?」


「貴様、同時に四本も放つことができるのか……!」


「俺は一本しか放てないなどと言ったおぼえはないが? だいたい初めに言っただろう、宝剣『群』乱と」


「ぐううぅ……」


 ふむ、周りの連中も度肝を抜かれているな。がんばって考えた甲斐があった。


 昔アニメで見た某英雄王の技にインスパイアされて編み出した技なのだがな。威力・見た目共に申し分ない。さすがに武器を空中浮遊させることはできないが。


 うめき声を上げる魔族に、俺が死の宣告を言い渡す。


「さて、それではお前にはそろそろご退場願おう。さらばだ」


「ま、待て! 貴様、我の配下にならぬか? 四魔将の側近だ、地位は約束されているぞ! それほどの力、人間どものために使うよりも我らと共に振るう方がはるかによいとは思わんか!」


 やれやれ、魔族という奴は追いつめられるとどいつもこいつも似たようなことを言ってくるな。魔界四魔将でこれなのだ。もしかしたら、以前城で出くわした魔族が案外魔界大公とやらだったのかもしれんな。


 もちろん、俺がそんなシけた条件を飲むわけもないのだが……ちょっと待て、後ろの連中、なぜそんな不安そうに俺を見る? まさか本気で裏切るとでも思っているのか? 命の恩人に向かって、失礼な奴らだ。


 ここは行動で示すとするか。


「奥義・宝剣群乱」


「ぎゃああああぁぁぁぁあああ!」


 俺の言葉と同時に、俺の周囲から幾本もの剣や槍、斧が高速を保ったまま魔族へと放たれる。


 それはさながら戦闘機からの機銃掃射のように魔族の身体に穴をあけ、地面からはもうもうと土煙が上がる。


 身がすくむような断末魔が響き渡る中、煙の向こうの魔族の巨体が徐々に小さくなっていく。



 土煙が晴れると、そこにはかつて魔族だったものが細切れになって散乱していた。





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