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39 魔界への侵攻





 騎士団長に呼ばれ、俺たちは団長室へとやってきた。


 長机の片側には俺とカナ、ジャネット、反対側には団長のオスカーとシモンが座る。


「リョータ君、今日はご苦労様」


 そう言って、オスカーが俺たちに茶をすすめる。


「今日の用件なんだが」


「いよいよ魔界に侵攻するんだろう?」


「察しがいいね、その通りだ」


 オスカーがうなずく。


「今回、魔族から人間の領域を奪還するため四王国連合軍が遠征を行うことになった。すでに我が国からもサラ王女率いる第一陣が出立している」


「あの女か」


 そういえば今日は姿が見えなかったが、そういうことか。


「そうだ。そしてリョータ君には、彼女と共にガンダ砦を攻略してもらいたい」


「ガンダ砦?」


「うむ。ピネリから南西に行ったところにある魔族たちの拠点なのだがね。どうやら強力な魔族がいるらしく、攻略にてこずっているようなのだ。そこでぜひ君に手伝ってもらいたくてね」


 ほう、強力な魔族か。それは少し興味をそそられるな。


「俺は構わんが、あのお姫様は俺が参加することに納得するのか?」


「彼女も軍人だ。命令には従ってもらうさ。命令書も渡しておくから問題はないよ」


 そうだといいのだがな。妙なわがままを言い出さないことを祈ろう。


 と、そこでジャネットが口を開く。


「ちょいと待っておくれ。報酬はどうなってるんだい?」


「ああ、もちろん弾ませてもらう。砦を攻略したあかつきには、金貨二百枚をお渡ししよう」


「に、二百枚!?」


 思わぬ数字に、ジャネットが目を丸くする。


「ほ、ホントなのかい!?」


「もちろんだ。あの砦にはそれだけの価値があるのだよ。だから、是が非でも落とさねばならん」


 オスカーが強い調子で言う。


「それに、サラ王女が苦戦するほどの相手だ。このくらいの報酬でなければ割が合わないだろう?」


「へえ、騎士団ってのはずいぶんと気前がいいんだね。リョータ、これはお得だよ。引き受けようよ」


「お前がそう言うならそうなのだろうな」


 あのお姫様がリーダーだというのが不安だが、まあ問題ないだろう。


「わかった、引き受けよう」


「おお、引き受けてくれるか」


 オスカーとシモンが安堵の笑みを漏らす。


「それで、いつ出発すればいい?」


「うむ、できればなるべく早く向かってほしい」


「聞き方が悪かったな。いつまでに着けばいい? 今日中か?」


「今日中? それはさすがに無理だろう。ピネリの町からさらにこの位置にあるんだ。強化馬車を使えば別だが、それでは疲労がたまるだろう」


 そう言いながら、オスカーが地図を指さす。なるほど、ピネリからさらに100キロほど南西なのか。確かにここを押さえれば、魔族の脅威はかなりやわらぐだろうな。


「問題ない。今日のうちに着けるだろう」


「そうか? よければ騎士団の強化馬車を出すが……」


「大丈夫だ。シモンには話したが、俺は転移魔法の心得が少しあるのでな」


「ああ、それなら聞いているよ。そうか、それで飛ぶわけだね?」


「そういうことだ」


 オスカーの言葉に俺はうなずく。


 地図を指さしながら俺は聞いた。


「このあたりから、砦の方に目印になるような建物や地形はないか?」


「そうだな、このあたりは山になっている。この川を目印にするのがわかりやすいだろう」


「なるほど、ではこのあたりは……」


 そんな調子で、俺はオスカーから地形を聞き出す。転移の目印にするために、なるべくいろいろと聞いておく。


 まあ、ガンダ砦と念じてすぐに飛べればすむ話なのだがな。念のためだ。


 一通り話を聞き終えると、俺たちは席を立つ。


「話はわかった。それではさっそく向かうとしよう」


「本当にいいのかね? 今日は式典で疲れただろうし、休んでくれていいのだよ?」


「気遣いは無用だ。さっさと片づけてくるさ」


「そうか、ありがとう。それではよろしく頼むよ」


 そう言って、オスカーとシモンが立ち上がる。


「まかせておけ。報酬はまた連絡をくれるのか?」


「ああ、それでもいいのだが、終わったら一度報告に来てくれないかね?」


「わかった、そうしよう」


 うなずくと、俺たちは城を後にした。




 家に向かい歩いていると、ジャネットが話しかけてきた。


「なあ、これからその何とか砦とやらに向かうんだろ?」


「ああ、そうだ」


「そのさ、ホントに連れて行くつもりなのかい?」


 そう言いながら、ジャネットがカナを見つめる。ああ、カナのことを心配しているのか。


「カナのことなら問題ない。俺が守る」


「それはわかるけどさ、いきなりこんな本格的な戦いに連れてって大丈夫なのかい? 魔族との最前線だし、カナはまだ学校に行ってないんだろ?」


「カナ、大丈夫。行く、いっしょ」


「カナもこう言っている。置いていくわけにもいかないさ」


「まあ、あんたたちがそう言うならいいんだけどねえ……」


 やや納得しがたい表情ながら、ジャネットが渋々うなずく。大丈夫、お前が心配するようなことは起きないさ。




 家に帰ると、俺たちは部屋に戻って戦支度を整えた。




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