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38 勲章授与式





 今日は城で勲章の授与式だ。


 カナとジャネットも、レーナに見つくろってもらった服に着替えている。二人ともよく似合っているな。


 ジャネットはああでもないこうでもないとレーナと揉めた挙句、俺と大差ないスーツ姿に落ちついた。スカートはやはり性に合わないとのことだ。


「それじゃ、そろそろ行こうか」


「うん」


 俺は白いワンピース姿のカナの手を握ると、玄関を出て城へと向かった。




 城の城門まで歩いていくと、そこには見慣れた人物の顔があった。


「おお、皆さん、よくお越しくださいました」


 俺たちの姿を視界に認めると、騎士団のシモンが俺たちに向かって言う。


「今日は私が皆さんをご案内します」


「ああ、よろしく頼む」


 そう言うと、俺たちはシモンの後に続いて城へと入っていく。





「はあ、こいつは凄いねえ……」


 城に入ると、ジャネットが思わず感嘆の声を上げた。俺も前に入った時はびっくりしたからな。


 もっとも、カナはあいかわらずきょろきょろとあたりを見回している。これだけ広い空間が珍しいのだろう。



 そんな俺たちを、シモンは控室のようなところへと連れて行った。しばらくしたら迎えが来るらしい。


 少し聞いてみたのだが、今日の式典では軍のナンバー1である軍務卿とやらが勲章を授与するそうだ。なんだ、王様みずからではないのか。


 式が終わった後はまた団長室に来てもらいたいとシモンに言われ、俺はそれを了承した。この前の魔王領侵攻うんぬんの話であろう。




 控室は豪華な装飾がなされ、ずいぶんと立派な部屋だった。


 俺の家の部屋も結構立派なはずなんだが、やはり城は違うな。


「こういう部屋ってのは、何だかこう、落ちつかないもんだねえ」


 椅子に腰かけながらジャネットが言う。そのわりにはずいぶんとくつろいでいるように見えるが。


 まあ、落ちつかないというのは俺も同感だ。


 カナは部屋のもろもろが珍しいらしく、落ちつきなく部屋を歩き回っている。さすがに勝手に美術品を触ったりということはないだろうがな。


 城の者に注いでもらった茶を飲みながら、俺たちは呼び出されるのを待つ。



 しばらくして、シモンが部屋にやってきた。そろそろ式典か。


「皆さん、お待たせしました。それではまいりましょう」


 そう言うと、シモンは俺たちを授与式の式場へと案内する。俺たちも後に続いた。





 式場には、立派な服を着た連中が何人も集まっていた。おそらく国の高官やら貴族やらなのだろう。


「それではリョータ殿、前へ」


 シモンにうながされ、俺は前の方へと出る。


 目の前に、恰幅のいい中年がやってきた。このおっさんが軍務卿とやらか。


 何事か口上を述べて勲章を俺に手渡すと、後ろに下がるように指示される。


 カナたちのところへ戻ると、軍務卿は長々と演説をしゃべり出した。これは聞かされる方も苦痛だな。


 内容をまとめると、今回魔族の侵入を阻止したのをきっかけに、いよいよ反転攻勢に出るということらしい。すでに先発隊は出発しているそうだ。


 周囲から俺の方に期待の視線が集まっているのがわかる。


 いや、疑わしげな目や嫉妬も感じるな。突然現れた冒険者に、周りの反応も様々なようだ。


 まあ、それも当然か。何せ外見的には、俺は高々17歳のただのガキでしかないのだからな。そんな子供が一人で魔族の群れを退けたなどという話を聞かされて、信じる者など普通はいないだろう。


 その辺は、これからの俺の活躍次第なのだろうな。




 式典も無事終わり、俺たちはシモンに連れられ控室へと戻る。


「何だか偉そうな連中がいっぱいいたねえ」


 おもしろくもなさそうにジャネットが言う。


「そうだな、俺のことをこころよく思わない連中も多いようだ」


 そう返す俺に、シモンが言う。


「いえ、そんなことはありませんよ。軍務卿やオスカー団長をはじめ、リョータ殿のことを評価している人はかなり多いのです」


「そうなのか?」


「はい。これからの戦いで武名を上げていけば、その数はさらに増えていくことでしょう。もちろん、リョータ殿に魔族との戦いに参加してもらえれば、の話ですが」


「それはこれからの話次第だな」


 魔界侵攻か。それもおもしろそうだな。少しは手ごたえのある魔族に出てきてもらわないと、俺の奥義も出さずじまいで終わりかねないしな。


「ジャネットは魔族と戦うことに異存はないか?」


「ああ、むしろ願ったりだよ。連中をもっと奥地へ追いやることができれば、あたしもマースの守りを心配する必要がなくなるからね」


 そう言えばそうだったな。まあ、俺が行くからには追いやる程度ではすまさんが。


 やや気がかりなのがカナだ。俺が守るとはいっても、やはり進んで連れて行きたくはない。


「魔界に行くといっても、カナはついてくるのか?」


「カナ、リョータ、いっしょ。魔界、行く」


 そう言って、カナが俺の手を強く握る。これはやはり置いてはいけないようだ。俺ががんばるしかあるまい。



 控室に戻ると、俺たちは団長から呼ばれるまでしばし部屋でくつろいだ。





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