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35 女たちの戦い





 買いものの日、俺はカナ、ジャネットと共に王都の広場でレーナが来るのを待っていた。


 午後の広場は人であふれている。何せ街自体が狭いからな。少しはわかりやすいよう、俺たちは中央の花壇のギルド側で待っている。


 カナはシャツにジャケット、半ズボン、ジャネットはいつものジーンズにジャケットだ。


 二人ともそんななりだし、髪も短いので、パッと見だと男と間違う奴もいるだろう。




 ほどなくして、人ごみの向こうからレーナの姿が見えてきた。俺たちに向かって手を振ってくる。


「皆さん、こんにちは。お待たせしてしまいましたか?」


「いや、俺たちも来たばかりだ。休みなのにわざわざすまないな」


「いえ、そんなこと」


 そう言うレーナの顔が少し赤い。そんなに俺といっしょにいられるのが嬉しいのか。まあ、俺は嬉しいがな。


 今日はよく晴れているせいか、それとも職場ではないからか、レーナの服も少し薄着だ。薄手のブラウスに、丈がやや短めのスカートをはいている。


 膝上までが見えるくらいのスカートもさることながら、やはりその豊満な胸に目が行く。薄着なこともあって、いつもより一段と自己主張が激しい。


 そんな俺の視線が気に入らなかったのか、ジャネットが少し不満げな顔をする。そして次の瞬間には、彼女は俺の左腕に抱きついてきた。


「リョータ、そろそろ行こうよ! あたしらに服を買ってくれるんだろう?」


「なっ、ジャ、ジャネットさん!? 何してるんですか!?」


「何って、ただのスキンシップだよ。いつもやってることだから気にしないでよ」


「い、いつも……?」


 驚きに目を丸くするレーナに、ジャネットがふふんと薄笑いを浮かべる。


 おいおい、あまり事を荒立てるようなことを言わないでもらいたいな。まあ、抱きつかれるのは一向に構わないが。


 そんなジャネットに刺激されたのか、レーナも俺に近づいてきた。


「ジャネットさんばかりずるいです! だったら、わ、私だってそうします!」


 そう言って、俺の右腕に抱きついてくる。大きな膨らみが俺の二の腕に押しつけられる。うん、悪くないな。


「ちょっ、レーナ、リョータから離れろよ!」


「どうしてですか? ただのスキンシップなんだから、私がやったって別にいいでしょう?」


「これはあたしとリョータの仲だからやれることなんだよ! 勝手にマネしするんじゃないよ!」


「それを言うなら、王都に来てからはリョータさんはずっと私のところに来てたんですよ? しばらく離れていた人に言われたくありません!」


「な、何だとぉ……」


 お互い一歩も譲らず、俺の腕に抱きつきながら睨み合う二人。やれやれ、どうしたものか。文字通り両手に花ではあるのだが。


 その時、カナが俺の顔を見上げてきた。


「カナ、どうした?」


「カナ、リョータ、手、つなぐ、できない」


 少し悲しそうな目でカナが言う。


 それを聞いて、ジャネットとレーナがハッとカナの方を振り向く。


 そして、二人とも慌てて俺の腕から離れた。


「ご、ごめんねカナちゃん! はい、私はもう気がすんだから、手を握ってもらってね?」


「ごめんよカナ、あんたのこと忘れてたわけじゃないんだよ? ほら、リョータもぼさっとしてないで手握ってあげなよ」


「ああ」


 ジャネットにうながされ、俺はカナに右手を差し出す。どうにも理不尽な言われようという気がしないでもないが。


 差し出された手を、カナはまるで横取りを警戒するかのようにジャネットとレーナを交互に見ながら、誰にも渡すまいという感じでパッとつかんでくる。


 その様子に、ジャネットとレーナが思わずばつの悪そうな笑みを浮かべた。


「あらあら、あたしたち、すっかりカナに警戒されちゃってるねえ……」


「ごめんねカナちゃん、そんなつもりじゃなかったのよ」


「元はと言えばお前のせいだぞ、ジャネット。お前がいきなり抱きついてきたりするからだ」


「悪かったって。ごめんよ、カナ」


 素直に頭を下げたジャネットだったが、顔を上げると不満げに俺を見る。


「でも、なんだか納得がいかないねえ。リョータは嬉しそうにでれっとしてたわけだしさあ」


「そ、そんなことはない」


 さすがに自分でも、言ってて苦しいと思う。


 そんな俺の内心を読み取ったのか、レーナが追及してくる。


「リョータさん、もしかして家ではいつもあんなことをしてるんですか?」


「いや、あれはジャネットが勝手に言ったことだ。いつもしてるわけじゃない」


「でも、たまにしてあげると嬉しそうにそのままでいるだろ? もっと頻度を増やしてあげてもいいんだよ?」


「ハ、ハレンチです! ダメですよ、リョータさん! カナちゃんの教育にも悪いです!」


「何さ、部外者が口を出すんじゃないよ」


「いいえ、カナちゃんのためです。ここは言わせてもらいます」


 そんな感じで二人の舌戦が始まった。まいったな、こうなってしまっては、もはや俺が口を挟む余地はない。



 こんな調子で、はたして無事に買いものができるのだろうか。少々不安を覚えながら、俺たちは店へと向かった。




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