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33 騎士団からの連絡





 ギルドから連絡があった。先日の魔族撃退の件について、騎士団の方から話があるということだ。


 俺がその話をすると、ジャネットが興味を示す。


「てことは、あんた城に行くのかい」


「まあ、そういう流れになるだろうな。お前も来るか?」


「いいのかい? あたしも城は見てみたいねえ」


「じゃあ来るといい。ジャネットはもう俺のパーティーなんだしな」


「リョータ、話がわかる! それじゃあたしも準備してくるよ!」


 そう言って、彼女は二階の部屋へと戻っていった。





 玄関で待っていると、ジャネットが上から降りてくる。


「まずはギルドかい?」


「ああ、そうだな」


 下まで降りてくると、俺と手を握るカナを見る。


「カナ、あんたもいっしょに来るのかい?」


「カナ、ギルド、行く、いっしょ」


「そりゃいっしょに行くさ。カナは俺のパーティーだからな」


「そうかいそうかい……って、はぁ!?」


 うんうんうなずいて、それからジャネットが素っ頓狂な声を上げる。


「パーティーって、そりゃいったいどういう意味だい?」


「言葉の通りだ。カナはパーティーとして俺たちといっしょに来る」


「いや、冗談だろ!? こんなちびっ子連れてってケガでもしたらどうするんだい!」


「それは心配ない。俺が守るからな。それに、カナはこれから冒険者養成学校にも通うから大丈夫だ。それにお前も、カナくらいの年にはもう冒険者になっていたんだろう?」


「そ、それはそうだけどさ……」


「第一、カナがいっしょに行くと言ってきかないんだ。俺がそばにいる以上危険などないのだから、別に問題ないさ。それに考えてみたら、一人で留守番させておく方が何かと心配だしな」


「そ、それもそうか……?」


 いまいち納得がいかないといった顔のジャネットだったが、それ以上何かを言うつもりはないようだ。


 話もついたところで、俺たちはギルドへと向かった。







 ギルドの受付に行くと、レーナのところに騎士団のシモンが立っていた。俺たちに気づき、声をかけてくる。


「おお、リョータ殿。はて、人が増えたようですな」


「ああ。紹介する。新しくパーティーに加わった、剣士のジャネットだ」


「どうも、よろしく」


「おお、あなたがジャネット殿ですか。腕利きの冒険者だそうですな。噂は我々の耳にも届いていますぞ」


「それは光栄だね。騎士団屈指の強者にあたしの名前が知れているなんてさ」


「それはこちらのセリフですよ、ジャネット殿。私のことをご存じとは」


 シモンが嬉しそうに笑う。


 俺はジャネットにこっそり聞いた。


「あいつはそんなに有名なのか」


「そりゃそうさ。騎士団長と姫騎士に次ぐ、騎士団ナンバー3の使い手だからね」


「姫騎士?」


「……あんた、姫騎士も知らないのかい」


 あきれた顔で、ジャネットがため息をつく。


「この国のサラ王女が、騎士団で副団長をやってるんだよ。姫騎士ってのは、そのサラ王女のことさ」


「ああ、あの女のことか」


「なんだ、会ったことがあるのかい」


「生意気な奴だったんでな。少し説教してやった」


「……あんた、ホントに怖いもの知らずだね……。感心するよ」


 降参とばかりに、ジャネットが両手を上げる。


 かわって、シモンが俺に話しかけてきた。


「ところでリョータ殿、さっそくなのですがお話をお聞きしたい。先日の件なのですが……」


「ああ、そのことか。お前らにももう報告は入っているだろう。ピネリもマースも、どちらも俺が片づけた」


「マースの件ならあたしが証人だよ。なんせ、あたしはその時リョータに助けられてるんだからね」


「はい、別に疑っているわけではないのです。ただ、いったいどうやってピネリやマースまで行ったのかと……」


「それなら簡単なことだ。少し経ったらついてきてくれ」


「え? 別に構いませんが……」


 シモンの返事に、俺はそのまましばらく待つ。シモンが怪訝そうな顔で俺の方を見ている。



 そろそろ頃合いか。俺はタイミングを見計らって、シモンといっしょにギルドの前まで転移する。


 驚くシモンを尻目に、俺は彼に向かって言う。


「これでわかったろう。俺にはちょっとした転移魔法の心得がある。これでお前たちより一足先に南へ向かったわけだ」


「て、転移魔法……?」


 まだ状況がよくわからないといった顔でシモンが言う。まあ確かに、この世界の常識だと冒険者が転移魔法を使うとは思わないかもしれないな。


 カナたちのいる窓口まで歩いて戻りながら、俺はシモンに魔族のところへ向かうまでを説明する。


 内容はジャネットに語ったのと同じ、つまりほとんど嘘だ。もっとも、本当のことを言ったところで信じるわけがないだろうがな。100キロも遠くへひとっとびするほどの転移魔法の使い手など、この世界に俺以外存在するのかどうかもあやしいからな。


 これでもいろいろと気をつかってはいるのだ。さっきもわざわざシモンに承諾をとってから数十秒待ったのだからな。別に承諾なしで即転移することもできるのだが、そんなことをしたらせっかくの俺のチートがバレてしまう。


 まあ、バレたらバレたでどうということはないのだが、こういうことは秘密にしておいた方がいろいろと都合がいいだろう。そのためには、多少の不便は甘受しないとな。




 窓口に戻ると、レーナとジャネットがそろって俺に不満げな声をぶつけてきた。


「リョータさん! いきなり消えるのはやめてください! シモン様までいっしょにいなくなって、私びっくりしちゃったじゃないですか!」


「そうだよリョータ、心臓に悪いじゃないのさ。カナだってびっくりするだろ。な、カナ?」


 ジャネットがカナの方を振り向くと、カナが俺に近づいてきて俺の手を握る。どうやら心配させてしまったみたいだな。


 俺はカナの頭をなでながら言う。


「すまん、カナ。心配したか?」


「リョータ、大丈夫。カナ、平気」


 カナのご機嫌も損ねずにすんだようだ。よかったよかった。




 その後ジャネットといっしょに、魔族討伐のくわしい状況をシモンに説明する。


 聞き取りを終えると、彼はまた連絡すると言ってギルドを後にした。報酬や恩賞などについても、その時にまとめて連絡するそうだ。



 用事も終わり、レーナに一声かけると俺たちはそのまま家路についた。





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