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31 カナの才能





 カナが冒険者の適性をチェックしてる間、俺はレーナと窓口で話をしていた。


「ところでリョータさん、聞きたいことがあるんですが」


「ああ、どうした?」


「ピネリやマースのギルドから妙な報告がきているんです。ピネリの町では昨日凄く強い剣士が現れて、みるみるうちに魔族を討ち果たしていったとか。マースの町からは、魔族の長らしい敵をやはり突如現れた剣士が倒したとの報が入っています」


「ほう」


「ほう、じゃないですよ。マースからは、はっきりリョータさんが魔族を倒したって報告が来てるんですよ? ピネリでも、その剣士はリョータと名乗っていたそうですし。これはいったいどういうことなんですか?」


 そこまで聞いているなら、もう俺に聞く必要もないだろうと思うのだが。


「どういうことも何も、その報告の通りだ。どちらも俺が片づけた」


「ええ!? そんなのおかしいですよ! だって、昨日はリョータさん、お城に呼ばれていたんでしょう? マースまでだって凄い時間がかかるんですよ? 騎士団よりも早く着くなんて、おかしいじゃないですか!」


「俺は城の団長室で真っ先にその報に触れたからな。その足ですぐに飛んだのだから、何もおかしいところなどない」


「あ、それもそうですね……って、飛んだ!?」


「俺は転移魔法の心得が少々あるんだ。だから連中を出し抜けたんだよ」


「え、そうなんですか? でも、転移魔法って初心者だとそんなに遠くまで飛べませんよね……?」


「その辺は使いようさ。町の外に馬を置いてそこに飛べば、他に先駆けて到着することも不可能じゃない」


「な、なるほど……。騎士団が着いた頃にはすでに戦いが終わっていたそうですが、そういうカラクリだったんですか……」


 本当は一気に町まで飛んだのだがな。


 まあ、レーナにはそのくらいに思ってもらうのがいいだろう。俺としても、手の内を全て明かすつもりは毛頭ない。


 納得した様子のレーナが、少し身を乗り出す。


「でも、そうだとすればリョータさん、またお城に呼び出されるかもしれませんね。魔族撃退の功で表彰されるんじゃないでしょうか? 勲章をもらってもおかしくないですね!」


「ああ、そういうこともあるかもしれないな」


「その時はまたギルドを通じてリョータさんに連絡しますので、待っててくださいね?」


「わかった」


 勲章よりも金の方がありがたいがな。もっとも、その勲章に信用力があるなら話は別だが。この前どら息子からもらった名剣とやらは、本当に効果があるのかどうにもあやしいしな。






 しばらくして、カナが戻ってきた。担当者の男の姿もある。さて、結果はどうだったのかな。


 担当者が口を開く。


「一通り、この子の適性を調べてみましたが」


「どうだった?」


「はい、この子には治癒魔法の適性があるようです」


「ほう?」


「訓練すれば、軽いケガを治すくらいの魔法はすぐにでも使えるようになるでしょう。潜在能力はなかなかに高そうです」


「そうか」


 それは予想外だな。あまり期待はしていなかったが、人には意外な才能があるものだ。


 俺に近づくと、カナが俺のそでをくいくいと引っぱって聞いてくる。


「リョータ、カナ、凄い?」


「ああ、凄いぞカナ。まさかカナにそんな才能があるとはな」


 そう言って、俺はカナの頭をなでてやる。カナは俺を見上げながらされるがままになっている。


 それにしても、治癒魔法か。またずいぶんと便利な魔法に適性があったものだな。


 カナを前衛に出すつもりは元々ない。これで戦士系に適性があろうものなら、どうやってカナを説得しようかと困っていたところだ。


 だが魔法士系なら、前に出る必要はないからな。加えてケガを治せるというのなら、ケガ人が出た時には重宝するだろう。まあ、オレがケガ人を治癒魔法士のところへ転移させればすむ話ではあるのだがな。


「だが、訓練というのはどうやればいいんだ? カナはこの通り、自分で本を読んで勉強するのは難しいぞ」


「そうですね……。ご興味がおありでしたら、子供向けの冒険者養成学校に通わせてみてはいかがですか? いずれにしても、冒険者になるのに字が読めないのでは不便でしょうし、学校で勉強した方がいいと思いますが」


「ほう、そんな学校があるのか。カナは学校に行ってみたいか?」


「学校、何?」


 カナが首をかしげる。そうか、そんなに一般的なものではないんだな。


「学校というのはな、お前と同じくらいの子供が集まっていっしょに勉強するところだ」


「勉強?」


「こうやって字を読んだり、いろいろなことをおぼえたりするんだ。カナはそういうの、嫌いか?」


 俺が聞くと、カナは頭をふるふると横に振る。


「カナ、字、読みたい。学校、行きたい」


「そうか」


 それもいいかもしれないな。カナには同年代の友だちもいないし、多くの人とふれあう機会はあった方がいいだろう。


「わかった、それじゃ手続きをしておこう。レーナ、頼めるか?」


「はい、もちろんです。よかったね、カナちゃん」


 レーナが言うと、カナはこくりとうなずいた。俺もいよいよ親になった気分だな。




 手続きを終えると、俺はカナの手をつないでギルドを後にする。心なしか、カナの足取りも軽いようだ。


 俺もその様子に満足して、カナと二人家路についた。




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