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221 頼もしい部下




 王都から、頼もしい連中がやってきた。


 総督府へとやってくる4つの騎影に、出迎える俺も思わず頬がゆるむ。


 4人は馬から降りると、まっすぐに俺の下にやってきてひざまずく。


「よく来たな、お前たち。待ちわびていたぞ」


「リョータ様自らのお出迎え、恐悦至極にございます」


 壮年の男――クロノゲート親衛隊副隊長ケビンが、一同を代表してあいさつする。


 俺の隣に立つジャネットも、嬉しそうにメンバーに声をかけた。


「待ってたよ、あんたたち。やっと気兼ねなく飲みにいけるね」


「うす、いくらでもつき合いやす、姐さん!」


「あんたはすぐにつぶれるからねえ」


 威勢よく言うガイに、さすがのジャネットも苦笑する。


 俺と手をつなぐカナも、こいつらの到着を待ちかねていたのか実に嬉しそうな無表情だ。


 氷結魔法士のクラウスが、感心したといった顔で言う。


「それにしても、想像していたより活気に満ちていますな。これもリョータ様だからこそでしょうか?」


「それはわからんが、この町の住民がこれから自分たちの町をつくっていこうという意欲に満ちているのは確かだ。俺が来る前からシモン……騎士団の副団長が地ならしをしていたしな」


「ですが、それを引き継ぎ軌道に乗せたのはリョータ様でしょう」


「まあ、そうなるか」


 半分以上はサラのおかげな気もするがな。


 弓兵のソアラも感想を口にする。


「すでにいろいろなお店もできているんですね。暮らしていくにも不自由せずにすみそうです」


「ああ。商業はイアタークの要だと思っている。見ていろ、これからますますこの町は賑わっていくぞ」


「おお! それは凄い!」


 親衛隊のメンバーたちが声を上げる。


 まあ、このエリアの特産品はほぼ独占状態にあるからな。クレマンをはじめとする優秀な官僚たちもいることだ、うまいことやれば相当な儲けになるだろう。支配領域が拡大すれば、物流や交易の要にもなるだろうしな。


「立ち話も何だ、まずは宿舎に行って荷物を置いてこい。その後俺の執務室に来てくれ。少し用があるのでな」


「はっ、お気遣い痛み入ります。それでは後ほどうかがわせていただきます」


 ケビンが頭を下げる。女官に案内させて、俺たちはいったん執務室へと戻った。








 執務室に戻り、俺はいくつか仕事を片づける。


 しばらくして、来客を告げる声があった。


 中へ通すように言うと、親衛隊のメンバーが部屋に入ってくる。


「ご苦労。宿舎はどうだった?」


「はい、あのような立派な部屋を与えていただきありがとうございます」


「すげえですねリョータ様、俺が入れる部屋もあるなんて」


「あの部屋は特別だ。喜べよ、ガイ」


「へい! ありがとうございやす!」


 俺が一通り宿舎の感想を聞いた後、ケビンが尋ねてきた。


「して、ご用とは何でございましょう」


「ああ、そうだ」


 俺は机の上から何枚か書類を手にする。


「お前たちを総督府護衛官に任命する。総督直属の精鋭部隊だ。今後は俺の指示のもと、おおっぴらに働いてもらうことになる」


「おお!」


 俺の言葉に、隊員たちが歓声を上げる。


 それから、ガイが何か気づいたようにつぶやいた。


「んん? てことは、俺もこれからは役人になるってことですかい?」


「そういうことだよ。あたしも今じゃリッパなお役人様さ」


 向こうのテーブルから、そんなジャネットの声が飛んでくる。何が立派な役人だ。お前は日がなそうやってカナと遊んでばっかりではないか。羨ましい。


 気を取り直し、俺は一人ずつ任命証を手渡していく。ケビンには次席護衛官をやってもらうことにした。まあ、どうせジャネットでは集団に指示を出すことはできないだろうからな。事実上のクロノゲート親衛隊長みたいなものだ。


 このあたり、サラとグスタフの関係に似ているかもしれんな。もっとも、あいつの場合は自分が前に出ざるをえないから、やむをえずではあるが。うん、やっぱり全然違うな。


 書類を配り終えると、ケビンが質問してくる。


「して、我々は具体的には何をすればよろしいでしょうか?」


「うむ、そうだな……」


 俺の警護は当然として、魔界の探索はまだ早いしな。あれ、こいつらには何をやってもらえばいいんだ?


 悩む俺の視界に、カナと楽しそうに遊ぶジャネットの姿が映る。


「……当面の間は、俺やカナの護衛だ。手すきの者はとりあえずカナの相手でもしてやってくれ」


「御意」


「わかりやしたぜ、リョータ様!」


 そう叫ぶや、ガイがカナの方へと駆け出していく。おい、手が空いた時と言っただろう。お前、本当にロリコンじゃないだろうな?


 ジャネットはガイにカナをまかせると、部屋の向こうへと姿を消す。


 気を取り直すと、俺はケビンたちに向かって言う。


「今夜はお前たちのために一席もうけてある。存分に楽しむがいい」


「これはこれは、何から何までありがとうございます」


「今日はゲストも用意している。楽しみにすることだ」


「それは楽しみですな。リョータ様のことです、びっくりするような方がいらっしゃるのでしょう」


「まあ、それは間違いないな。期待していろ」


 そんな話をしていると、ジャネットがこちらへと戻ってきた。


「話はすんだかい? ほら、お茶を持ってきたよ。あんたたちもそこに座りな」


「これは隊長、わざわざありがとうございます」


「お言葉に甘えさせていただきますね」


「うおおおっ!? あ、姐さんみずからお茶を! あ、ありがたくいただきやす!」


 がばっと立ち上がったガイが吠える。ちょっと、うるさいぞお前。カナがびっくりするではないか。



 俺もその輪に混ざり、菓子をつまみつつ隊員たちと談笑した。





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