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203 カナの評価




 親衛隊の忠誠を確認した俺は、カナと二人でしばらくジャネットが隊員の相手をするのを見物していた。


 ……俺は、今まであんなバケモノと稽古していたのか……?


 ケビンとガイの二人を相手に、ジャネットはまったくひるむ様子を見せない。むしろ嬉々として、二人に向かい剣を振るっていく。


 剣を切り結ぶたび、ガイの巨躯が揺らぎケビンの身体が地面から浮かび上がる。ケビンは力を受け流すことでこらえているようだが、力を流し切れていないことは明白だった。


「ほらほら、甘いよケビン!」


「ぐはあぁっ!」


 剣が泳ぎがらあきになった胴体に、ジャネットが一発蹴りをくれる。


 軽装の鎧を身につけているにもかかわらず、ケビンは後ろへと吹き飛ばされ地面に倒れこむ。息が詰まっているのか、すぐには立ち上がろうとしない。


 と、今度はガイが両手持ちで振り下ろした大斧を、またしても片手持ちの剣で受け止めると、そのまま力比べを始める。


「ほらほら、まだまだ足んないよ?」


「う、うおおおお!」


 ガイが吠えると、身体中の筋肉がぶわっとふくらむ。まさに筋肉の塊だ。


 そんなガイの渾身の斧を、ジャネットはそんなものか、といった顔で押し返していく。


「あんたもまだまだだね」


 そうつぶやくと、ガイの斧を勢いよく跳ね上げ、丸見えの腹に拳を叩きこむ。


「ぐぶっ!」


 ジャネットよりも遥かに巨大な身体が、くの字に折れ曲がったかと思うと、そのまま地面へと沈んでいく。


 ……俺が稽古で食らってた蹴りや拳って、あんなに威力があったのか……? いや、さっきジャネットは「今度はちゃんと手加減するから」って言ってたぞ、まさかあれで手加減してるのか……?


 冗談じゃないぞ、これ以上あいつと稽古などしていたら、そのうち本当に殺されてしまう。あんな攻撃を食らっても死なずにすんでいるのは、転生時に神様じいさんに肉体強化されたおかげだろうか。

 今、俺は多分はじめてあの神様じいさんに本気で感謝している。


 ひざの上に乗るカナがつぶやく。


「ジャネット、強い」


「ああ、強いな。俺も驚いているくらいだ」


「リョータ、あの人たちに勝てる?」


「ああ、もちろんだ。何なら今戦ってみせようか?」


 カナにいいところを見せるチャンスとばかりに俺が言うと、向こうからジャネットが声をかけてきた。


「おーい、リョータ、こいつらもうへばっちまったよ。どうだい、あんたも少しあたしにつき合わないかい?」


「絶対にごめんだ!」


 断固拒否すると、俺はカナの頭をなでる。誰がお前の相手なんかするもんか。


 それにしても、あいつらがやめなくて本当によかった。カナの目の前でやめられなどしようものなら、カナに俺の人望を疑われかねんところだったからな。何とか威厳を保つことができた。


 ……いや、さっきはもしかして、かなり格好悪いところを見せてしまったのではないか? 気が動転するあまり、思わず懇願するような形であいつらを引きとめてしまった。


 も、もしかして、カナ、俺のあんな姿を見て「みっともない」とか思ってないだろうな……?


 不安に駆られた俺は、ひざの上でじっとフィールドを見つめるカナに聞いてみる。


「な、なあ、カナ」


「なに?」


「さっきのことなんだが、カナ、俺があいつらにやめないでくれって言った時、俺のことをどう思った?」


 くるりと首をこちらへひねったカナは、何か考えこんでいるのか、そのまましばらくじっと俺を見つめていた。俺の額に汗がにじむ。


 それから、一言つぶやいた。


「えらい」


「え?」


「仲間を大事にする、えらい」


「カ、カナ……」


 そうか、カナにはそう見えていたのか。俺が仲間想いの男だと……!


 俺はカナに向かって言った。


「もちろんだ! あいつらは俺直属の親衛隊だからな! 当然大切にするぞ!」


「友だち大切にする、いいこと」


「ああ、そうだぞ、友だちは大切だからな」


 そう言いながら、俺はカナの頭をなでる。



 そういえば、俺とカナがはじめて出会った時も、俺はカナに友だちになろうと言ったのだったな。今では友だちというよりすっかり家族といった感じだが。

 カナにとっては、友だちというのは特別な意味があるのかもしれんな。



 フィールドに目をやると、今度はジャネットが4人全員を相手に戦っているところだった。あいつ、何であんなにあっさり魔法をはじき返すことができるんだ。





 しばらくカナといっしょにフィールドを見つめながら、俺たちは稽古が終わるのをのんびりと待った。




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