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182 転移魔法の研究

 マクストンから帰った俺は、次の日書斎で今までの記録に目を通していた。


 これまでいろいろと調べてきたが、転移魔法の制約や限界もずいぶんと見えてきた。


 たとえば、動物の首だけ転移させるといったような、対象の変形をともなう転移が不可能なのは以前から知っていたが、どうやら変形をともわなくとも、生物の内部から何かを転移させることはできないようだ。


 これは大きな制約だ。もしそれが可能であるのなら、敵の血液をすべて転移してしまえば一発で仕留められるのだがな。

 すべてとまでは言わずとも、人一人が死に至る程度の血液なら、敵が何人いようと大した量にはならないしな。この前の岩程度の消費魔力でも、ざっと数千人は殺せるだろう。


 まあ、血液は身体の一部として扱われているのかもしれないが。


 逆に、生物の内部に何かを転移することもできない。これも実に残念だな。人間なんてたかだか数滴の毒で死ぬんだ。それこそ腹の中に2,3滴転移してやれば、何万人でも殺してしまうことができる。

 あるいは、血管の中にちょっとだけ空気を送りこんでもいい。それならさらに少ない魔力でカタがつくのだが。


 もっとも、これは別に転移魔法に限った話ではなく、他の魔法でも同様らしい。まあ、そりゃ直接体内に干渉できるなら、脳みそをほんのちょっとだけ焼くなり凍らせるなりすればいいだけの話だからな。


 そんな制約がなぜあるのかははっきりとはわからんが、生きものには固有の生命エネルギーがあって、それが魔力の干渉を防いでいるというのが定説らしい。他の連中はともかく、俺の魔力をもってしても超えられないのは少ししゃくではあるが。


 とはいえ、その制約があるおかげでこの世界のバランスもある程度保たれているわけだがな。もし制約がなければ、この世界は魔法士たちの独壇場になっていただろう。あるいは逆に、魔力の持ち主は徹底的に狩り尽くされていただろうか。


 ところで空気といえば、残念ながら気体はうまく転移させることができないようだ。これはひょっとすると俺の修業がたりないだけかもしれないがな。


 これが可能なら、敵のまわりの空気を転移して文字通り息の根を止めることができそうなのにな。周囲から流れこんでくる空気を転移し続ければ呼吸もできまい。いや、空気を転移することで真空状態になるのなら、気圧差で内側から破裂するのか、それとも身体が凍りつくのか、血液が沸騰するのか。いずれにしても、無事ではいられまい。


 もちろん、容器に入れた気体、あるいはそれに準じる状態なら問題なく転移できる。というか、そうでなければ人間が転移した時に体内の空気がからっぽになってジ・エンドだろうしな。


 まあ、俺としてはこれらの制約をかいくぐることを考えるべきだな。わざわざそんなことをしなくとも、上から岩を落とすなり敵を上空100mまで放り上げるなりすれば大抵の奴は倒せるわけだが。


 だが、そうはいっても単純な物理攻撃では倒せない敵もいるかもしれないからな。戦法は考えておくにこしたことはないだろう。奥の手を使わずにすむのならそれが一番なのだが。


 ふむ、今後は魔法士との連携も研究してみようか。『クロノゲート親衛隊』の中から連携相手を選抜すればいいだろう。


 そうだ、ジャネットとの連携を考えてみてもいいかもしれん。あいつを高速でぶっ飛ばせば、剣の威力も増すんじゃないか?


「おーい、リョーター、入るよー」


 うわさをすれば、ジャネットがノックもせずに書斎に入ってきた。


「おい、俺はまだ入っていいとは言っていないぞ」


「いいじゃないのさ。どうせいいって言うんだし。余計な手間がはぶけていいじゃないか」


 何だその屁理屈は。


「それよりさ、またあたしの必殺技につき合っておくれよ。どうせヒマなんだろ?」


「ヒマとは何だ。俺は頭脳労働で忙しいんだ」


「ええ、いいだろ少しくらい。ずっと座ってちゃ身体がなまっちまうよ?」


 そう言いながら、ジャネットが椅子の後ろから抱きついてくる。


「わかったわかった、相手してやる。先に表に出ていろ」


「やったぁ! さっすがリョータ、話がわかる!」


 バンザイして喜ぶと、ジャネットはそのまま外へと出ていった。


 やれやれ、それじゃ相手をしてやるか。


 書物をしまうと、俺は剣を手に取り庭へと出ていくのであった。




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