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178 対戦相手



 例の試合の日になった。



 王城に招かれた俺たちは、あてがわれた待機室でしばし待つ。


 俺はサラに聞いてみた。


「今日は王様やらにはあいさつしなくてもいいんだな?」


「ああ、マクストン国王はあくまで試合をご覧になられるだけとのことだ。もしかしたらリチャードが個人的にこちらへ来るかもしれんが、それはいつも通りに応対してくれていい」


「わかった」


 いつも通りにと言われても、サラ以外の王族となどまともに話したことはないのだがな。


「武器はあちらで用意するのか?」


「ああ、真剣はさすがに危ないからな。といっても、刃をつぶしているだけだから打ちどころが悪ければケガどころではすまんが」


「まあ、ある程度の腕があればそんなヘマはしないだろう」


「そうだな。相手はマクストンの騎士団長、この国が誇るSクラス剣士だ。相手に不足はないだろう?」


「ああ、十分すぎるくらいだ」


 実際、俺は剣士としてはSクラスギリギリの強さだからな。剣だけの戦いならさすがに分が悪いか。勝つつもりなら、どこかで転移魔法を使う必要があるだろうな。


「前回のマクストンの魔界侵攻の時もそいつが指揮をとったのか」


「そう聞いている。マクストン軍唯一のSクラスだからな、当然参加するだろうさ」


 一息ついて、サラが続ける。


「マクストンは軍事力では我がミルネやライゼンに劣る。魔族によって奪われた領地も多い。前回の遠征には並々ならぬ意欲と決意をもって挑んだのであろうな」


「そんな国が、よく魔界に侵攻しようなどとしたものだな」


「この機を逃せば再び領地を取り戻す機会はもう巡ってこないかもしれないと思ったのだろう。もたもたしていれば、我々が旧マクストン領を魔族から解放するかもしれんしな。マクストンも、さすがに我が国と事を構えるわけにはいかない」


「なるほどな、人間同士の競争でもあるわけか」


「そうだな。その意味では、我がミルネもライゼンあたりとは競争関係にあると言えるだろう。すでにライゼンも魔界へと向けて軍を動かしたと聞いている」


「一度人間側に流れがかたむくと、今度は一気に魔界の奪い合いか。魔族どもにしてみればたまったものではないな」


「だが、競争になれば魔族どもを駆逐する速度も上がる。人類にとっては願ったりの展開ではある」


「その競争の最前線に立つことになるのが、今度選ばれる新総督か」


「そういうことだ。私が帰国したらその話も大詰めになる。新総督にはせいぜいがんばってもらうことにするさ」


「大変だな、新総督になる奴は。そんな過酷な役回り、俺ならごめんこうむりたいところだ」


「そんなことを言ってはいるが、お前は頼まれたら引き受ける男だろう?」


「まあな、お前が俺を選ぶというのなら断る理由などない。さっきはああ言ったが、最前線に立てばさらなる出世も望めそうだしな。俺は出世などどうでもいいんだが、カナの将来を考えれば、保護者として可能な限り出世しておいた方がいい」


「相変わらずだな、お前は……」


 あきれたようにサラが笑う。む、何がおかしい。


「まあ、それはともかく、お前にはこれからも世話になる。よろしく頼むぞ」


「ああ、こちらこそよろしく頼む」


 そんなやりとりをしていると、扉の向こうから俺たちを呼ぶ声がした。どうやらそろそろ試合のようだ。


「それでは行くとするか」


「面倒ごとをまかせてしまってすまんが、よろしく頼むぞ、リョータ」


「何、気にするな、まかせておけ。お前に恥をかかせるような戦いはしない」


 力強くサラにうなずくと、俺はカナの頭をなでた。


「よく見ておくんだぞ、カナ。俺の強さ、しっかり見せてやる」


「リョータ、がんばって」


「おう、まかせろ」


 うむ、カナの応援は百人力だな。何だかまったく負ける気がしないぞ。よーし、カナ、また俺のいいところを見せてやるからな。





 部屋を出た俺たちは、廊下を少し歩いたところで案内にしたがい二手に分かれる。


 二人の声援を受け、俺は試合会場へと向かった。




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