表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
174/227

174 マクストンの王都へ



 王都を出発してから4日目、俺たちは予定通りマクストンの王都へと到着した。


 何というか、ミルネの王都とはずいぶんと印象が違うな。ミルネを中世ヨーロッパ風の街並みにたとえるとすれば、こちらは中世ヨーロッパ風のアミューズメント施設といったところか。もっとも、本当の中世ヨーロッパの街並みはこんな立派なものではないだろうがな。


 何というか、おしゃれで生活感の薄い街並みだ。メルヘンチックと言えばわかりやすいかもしれない。


 カナもいたくお気に召したようだ。


「おうち、かわいい」


「ほう、気に入ったのか?」


「カナも、すみたい」


「そうかそうか。それじゃあいずれ、この町ごとお前にプレゼントしてやろうか」


 それを聞いて、サラが苦笑する。


「おいおいリョータ、まさかとは思うが魔王の次は世界に喧嘩を売る気か? 我が国も敵に回すと言うのなら、さすがに見過ごすわけにはいかんぞ」


「何、別にミルネを敵に回す必要はないさ。魔王が倒れれば、次は国同士の争いだろう? そのころにはお前が宰相、俺が軍務卿だ。俺たちで世界を統一するなり何なりすればいい」


「宰相と軍務卿とは、またずいぶんと大きく出たな。だが、お前はそういう面倒ごとはまっぴらだったのではないか?」


「そうだな、やはり気楽に盗賊にでもなるか。サラ、お前もいっしょにどうだ? 王族はしがらみも多いだろう、盗賊は自由でいいぞ」


「お前もジャネットのようなことを言うのだな。そうだな、参考程度に考えておくとしよう」


 お互いそんな冗談を交わしていると、王都の繁華街に入った。


 大通りの両側には、衣料品店や装飾品店など、おしゃれな店が軒を連ねている。雑多な店が入り混じるミルネを新宿とすれば、ここは青山や表参道に近いイメージだな。もっとも、どれも実際に行ったことはないのだが。


 サラが窓の外を見ながら言う。


「宝石などの装飾品だとラビーリャが有名だが、マクストンも負けてはいない。ラビーリャが精緻で華美なのに対し、マクストンの装飾品はシンプルながら幻想的なデザインだな」


「ほう」


「衣類や建築となるとマクストンの独壇場だ。これは国力の差がはっきり出るのだろう。ほら、街の人間も華やかな衣装に身を包んでいるだろう?」


「そうだな」


「プレゼントを買ってやるにはうってつけの国だ。ジャネットはもちろんだが、レーナにも何か買っていってやるといい。きっと喜ぶぞ」


「ああ、もちろんそのつもりだ。帰ったらデートの約束もあるしな。その時にでも……」


「デ、デート!?」


 突然サラが大声を上げる。おお、びっくりした。お前がそんな声を出すとは珍しいな。


 自分でもびっくりしたのか、恥ずかしさをごまかすようにせき払いする。


「ごほん! いや何だ、別にお前が誰とデートしようとおかしくないな。この前はジャネットとも約束していたしな。そうか、レーナにはサラがよろしく言っていたと伝えておいてくれ」


「ああ、わかった。またそのうちパーティーにつき合ってやってくれ」


「うむ、もちろんだ」


 うなずくと、サラは俺のひざの上のカナにほほえんだ。


「カナ、お前は何を買ってもらうつもりなんだ?」


「カナ、くんせい食べる」


「ああ、そうだったな」


 苦笑すると、サラは窓の外の服屋を指さした。


「そろそろ新しい服も買ってもらったらどうだ? あの店など、かわいらしいドレスも多そうだぞ」


「ドレス」


 その言葉にカナが反応する。そういえば、カナはお姫様ルックにも目がなかったな。


 後ろへと遠ざかっていくその店を見つめながら、カナが俺のそでを引く。


「リョータ、ドレス、ドレス」


「わかったわかった、ちゃんと買ってやる」


「まったく、お前はカナにねだられると断ろうともしないな」


「む。言っておくが、俺はお前やジャネットにもねだられれば何でも買ってやるぞ。今度のデートの時には存分にねだるがいい」


「こ、今度のデート!? う、うむ、機会があればそうさせてもらおう」


 顔を赤くしてサラがそっぽを向く。本当にいちいちかわいい奴だな。


「だが、まずはレーナとのデートに専念してやってくれ。前も言ったかもしれんが、何というか、あいつはどうも私に遠慮しているふしがあるからな」


「そんなことはないと思うが、レーナは奥手だからな。ジャネットなどはあきれるほど俺にねだってくるというのに、あいつはこちらからすすめても断りかねん」


「そうだな、そこはお前がどれだけうまく女性をリードできるか、腕の見せどころというわけだ」


 こいつ、他人のこととなるととたんに冷静に分析してくるな。


「それより、俺たちはこれからどこに向かうんだ?」


「ああ、外交使節のための屋敷に向かっている。我々はそこに滞在する予定だ」


「そうか」


 メルヘンな街並みをながめながら、俺たちは馬車に揺られてその屋敷へと向かった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ←もし『転移魔法』がおもしろかったなら、ここをクリックしてくれると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ