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17 盗賊団の用心棒





 さて、準備も終えたところで行動開始だ。オレはさっそくボスの部屋へと転移する。



 転移した先では、ちょうど男がズボンをはいているところだった。


 ベッドの上では、若い女がシーツにくるまっている。ちょうどお楽しみが終わったところなのだろう。真っ最中でなくてよかった。


「な、何だテメェ!」


 おいおい、見張りと同じセリフか。やっとズボンをはき終えた男が、剣を取ろうと背中を見せる。敵の眼前で、何とも危機意識のない奴だな。


 せっかくなので、俺は遠慮なく後ろから斬りつけさせてもらう。足首の腱を切り、両手のひらを串刺しにする。


 もちろん、叫び声を上げる前に口の中に剣の先を突っこむ。


「声を出したら、殺すぞ?」


 見張りに言ったのと同じセリフを、こいつにも言ってやる。こういうセリフにオリジナリティは必要ない。女が叫ぶといけないので、そちらも睨みつけておく。


 ボスが目で命乞いをする。剣を引き抜くと、俺はボスのものであろう上着を切り裂き、ボスの口の中へと詰めこむ。帯状に切った布でくつわを噛ませ、一応両手両足も縛っておく。


 問題は女の扱いだが、下手にうろちょろされても面倒だ。悪いな、と一言つぶやいて当て身を食らわせる。女はあっけなく気絶した。


「とりあえずお前は生かしておいてやる。妙な気を起こすなよ?」


 剣先を突きつけると、壊れたおもちゃのようにこくこくとうなずく。それに満足すると、俺はボスにも当て身を食らわせておねんねしてもらう。


 とりあえず今はこいつら邪魔だな。転移魔法を発動させて、まず女を俺が泊まっている王都の宿へと飛ばす。まあ無事にベッドの上に飛んだだろう。


 次いでボスを洞窟の入り口に飛ばす。この部屋にいられても面倒だからな。俺もいっしょに飛んで、念のためにその辺の岩に縛りつけておく。


 よし、まず一つ目のステップは完了だ。それでは次の仕事に移ろうか。俺は用心棒がいるという部屋へジャンプする。




 転移した先では、髭面の男が複数人を相手に剣を振るっていた。奴が例の用心棒なのだろう。数は全部で六人か。


 突如扉近くに現れた俺に、部屋の連中が驚きの表情を浮かべる。まあ、当然だろう。


 血の気の多そうな奴が右側から俺に斬りかかってくる。俺は一顧だにせず右腕を振るう。そいつの首が、ぽんと高く飛んだ。


「テ、テメエ!」


「待て。お前たちでは話にならん」


 今にも俺に飛びかかろうとしながら、その実怯えて体が動かない盗賊たちを、用心棒が低い声で制する。そして無言で前に進み出てきた。


「お前にうらみはないが、ここで死んでもらおう」


「問答無用と言うわけか。いいだろう、このクズどもに手を貸している時点で貴様も同罪だ。死んで罪を償うがいい」


 そう言って俺も剣を構える。


 この男、Sクラスの冒険者を倒しただけあって、強い。剣の腕なら俺より数段上、あのジャネットより確実に強いだろう。剣の腕ならな。


 これほどの腕の持ち主がなぜこんなところでゴロツキどもの用心棒などやっているのだろう。大方重犯罪でも起こして軍から追い出されるなりギルドから登録抹消されるなりしたといったところか。


 しばし睨み合い、互いに剣気をほとばしらせる。俺が最初の一撃に全てをかけていることを察したのであろう、用心棒もそれを受けて立つ構えになる。やはり武人タイプ、己の腕に自信があることも相まって実に一本気な戦い方だ。


「うおおおおぉぉぉっ!」


 かけ声と共に、俺は全力で敵に迫る。半分は演技だが、半分は本気だ。もし予測不能・回避不能の攻撃でも繰り出されたら、いくら俺でも一巻の終わりだからな。


 そんな俺の必殺の一撃を、用心棒は正面から受け止める。これを軽くさばいて即座に反撃に移るつもりなのだろう。そうなれば、俺に勝機はない。


 まあ、反撃の機会は永遠に訪れないがな。



 正面から袈裟がけに繰り出される俺の剣と、それを受け止める用心棒の剣が高い音を立てて激突する――ことはなかった。


 男の手にあったはずの剣はその足元に転がり、俺の剣は肩からばっさりと男の身体を切り裂いている。男はいったい何が起こったのかすら知ることなく絶命した。


「――秘剣・幻落斬げんらくざん


 ギャラリーどもに奥義の名を聞かせることも忘れない。もっとも、こいつらも間もなく用心棒の後を追うのだがな。一刀の下に用心棒を斬り伏せた俺を前に、盗賊どもが驚愕を露わにする。


 もちろん、俺は何か特別な剣さばきをしたわけではない。種明かししてしまえば、俺は単に敵の武器を足元に転移した、それだけだ。


 だがそれを剣と剣がぶつかり合うギリギリのタイミングで発動させたことにより、あたかも剣が突然消失したかのように見えたわけだ。


 いや、実際突然消失してはいるのだがな。無防備にばっさり斬られる光景が衝撃的すぎて何が起こったのかわからなくなるという、手品の意識誘導的なアレである。加えて、転移魔法をタイムラグなしで発動できる術者は俺以外にいないからな。


 さらに言えば、移動している物体の転移は静止している物体の転移よりはるかに難易度が高いらしい。まあ、俺は特に違いを感じないのだが。


 そんなわけだから、こいつらもよもや転移魔法が使われたとは夢にも思うまい。




 用心棒をやられ、バカみたいに口を開いている盗賊たちを俺はちゃっちゃと始末する。さて、これで仕事はほぼ終わりだ。後は残りのクズどもに罰を加えに行くとするか。




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