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157 我が家へ

前回お願いした話ですが、好きな女性キャラについてコメントをいただきありがとうございました。


姫騎士が人気なのは意外でしたが、言われてみればなるほど確かにとも思いました。キャラクターの魅力を再確認させていただきありがとうございます。


引き続きコメントを受けつけていますので、皆さんのお好きなキャラを教えてもらえると嬉しいです。


 イアタークを攻略した翌日、俺とジャネットは先に王都へと帰ることになった。

 

 そろそろ日も昇りきろうかという頃になり、馬に乗って市壁の外へ出ると、見送りに来たサラが声をかけてくる。


「もう一日くらい休んでいってもいいのだぞ」


「まあ、そんなにのんびりもしていられないからな」


「何せカナのところに帰らないといけないからね、リョータは」


「そう言えばそうだったな」


 顔を見合わせて二人が笑う。けっ、勝手に言ってろ。


「サラはまだここにいるのか?」


「ああ。魔族の援軍のこともあるし、この町のこともあるしな。しばらくは帰れそうにない」


「大変だな、お前も」


「こればかりはしかたない」


 苦笑するサラに、俺も苦笑いする。


 この町も、これから人間が住めるようにいろいろとやることがあるのだろう。獣人の扱いをどうするかも考えなければならないだろうしな。サラたちにしてみれば、これからが本番なのかもしれない。


 そう言えば、俺もまだ獣人たちのチェックをしていないのだったな。猫耳メイドを探そうと思っていたのだが、またの機会か。早く帰らないといかんしな。


「私もこちらが落ち着いたら王都に戻る。その時にはまたあらためて礼をさせてもらおう」


「ああ、楽しみにしているぞ」


 うなずくと、俺はイアタークの市壁を見上げる。


「これからはこの町が魔界との最前線になるのだろうな」


「そうだな、城門も修復しなければならないし、いずれはここの防衛のために相当の兵を置くことになるだろう」


「ここの総督になる奴は大変だろうな」


「そうだな。まあ、うまくやってくれるだろうさ」


「ん? まるで次の総督がもう決まっているかのような言い方だな」


「ごほん! 何のことだ? 総督はこれから決めることになる。私は何も知らんぞ」


 慌ててサラが言う。俺はてっきりお前が総督に内定したものかと思ったのだがな。


「まあ、そんなところだ。お前たち、気をつけて帰るのだぞ」


「ああ」


「何なら残りの魔族どもを掃除しながら帰るよ」


 サラに手を振ると、俺たちはゆっくりとイアタークの町を後にした。





 しばらく馬でぶらぶらした後、俺は転移魔法でちゃっちゃと王都の近くまで戻った。


「ホント便利だねえ、転移魔法ってのは」


「まあな」


「いつもこれを使えばいいのにさあ」


「そんなにぽんぽん使えるものじゃない」


「ふうん、難儀なもんなんだねえ」


 そんなことを言い合いながら、俺たちは王都へと戻る。


 昼を過ぎ、夕暮れが近づいてきた頃に市壁の門をくぐり、とりあえず馬ごと家に帰ることにした俺たちはまっすぐに自宅へと向かう。


「あの町、これからどうなるのかねえ」


「まあ、対魔族の拠点になるんだ。ピネリみたいに軍人が駐留するんじゃないか?」


「ええ~!? イヤだよそんなの。むさ苦しいじゃないのさ」


「だが、そういう連中が集まると酒場も盛り上がるぞ。おそらくかなりの数の軍人が集まることになるんだ。大きな飲み屋街ができるかもしれんし、いい酒も集まるかもしれん」


「そ、そうなのかい!? そいつは楽しみだね」


 とたんに嬉しそうな顔をすると、早くできないものかねえ、などとジャネットがひとりごとをつぶやきはじめる。まったく、単純な奴だ。


「ああ、でも王都からは遠いねえ。ねえリョータ、いっそあの町に引っ越そうか」


「どうしてそうなる。だいたい、王都にだってうまい酒や飲み屋はあるだろう」


「いや、まあ、そうだけどさあ……」


 確かにあの店の酒はうまいしねえ、などと首をうんうんひねっていたが、突然名案がひらめいたとばかりに大声を上げる。


「そうだ! あんたの魔法で飛べばいいんだよ! びゅんってさ! それくらいお安いご用だろ?」


「そんなわけあるか。結構疲れるとさっき言ったばかりだろう。だいたい俺はタクシーじゃない」


「タクシー? 何だかよくわからないけど、そうかい、魔法はダメかい。名案だと思ったんだけどねえ……」


 思ったよりもがっくりと落ちこむジャネットに、俺もちょっとだけかわいそうになって少し譲歩する。


「ま、まあ、たまになら連れていってやらんこともない。たまにならな」


「ホント? さっすがリョータ、話がわかる!」


「言っておくが、まだあの町がそうなるかはわからないからな。ならなかったからとしても文句は言うなよ?」


「はいはい、大丈夫。そこはきっとどうにかなるよ」


 もう俺の話もろくに聞こえていないのか、ジャネットはどんな酒が飲めるのか、みたいなことばかりずっと口走っている。まったく、他に何か楽しみはないのか。


 しかし、今回奪い取った領域は今後どうやって統治していくのだろうな。村々を回って見た感じでは人間や獣人だけでなく家畜クラスの魔族も労働に駆り出されていたようだし、家畜魔族を始末した今となっては労働力が不足しているだろう。


 それはイアタークにしても同様、あるいはより深刻だ。何せあれだけ多くの家畜魔族がいたのだからな。まあ、今はほとんど人がいないからどうにかなるだろうが、このままだと町の外の広大な農地が放棄されることにもなりかねない。


 きっと今サラはそのあたりのことで頭をひねっているのだろうな。戦だけでなく内政まで気にしなければならないとは、姫騎士というのも楽ではない。俺は爵位持ちとは名ばかりのお気楽貴族で本当によかった。



 そんなことを思いながら、俺は久しぶりに我が家へと帰宅した。




18日にオーバーラップWEB小説大賞の二次選考結果が発表されましたが、本作も通過することができました。


最終選考の結果発表は来月ですが、連載は粛々と続けたいと思います。

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