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156 制圧

 敵の頭を潰してからは早かった。


 ボスの死にうろたえ逃げ惑う魔族どもを次々と始末すると、俺たちは中心部にある旧伯爵城へと突入する。


 外の様子に気づいているのだろう。城の魔族は防衛などしようともせず我先にと逃げ出していくところだった。もちろんそんなことは許さず、次から次と出くわす魔族を片づける。まあ、あまり追いつめすぎて決死の抵抗などされるとうっとうしいから、少しは逃げる隙を残しておいてやるのだがな。


 しばらくして、城の制圧が完了する。俺たちが城に騎士団の団旗を掲げると、外に待機していた後方部隊の大部分が市中へと入ってきた。


 後方部隊と合流すると、市中に残る魔族を始末するため掃討戦に移行する。その役目はオスカーとシモンにまかせ、俺たちは城の中を見て回る。


 城内を清掃し、適当な部屋を見つけてサラの執務室とする。俺とジャネットもそこにご一緒させてもらった。


「掃討戦はすぐに終わるだろう。後方部隊と合流した時点でほぼ片づいていたからな」


「そうか。何はともあれ、無事に終わりそうでよかった」


「何を言う。苦戦するなどこれっぽっちも思っていなかったのだろう?」


「まあな」


 席に着いてくつろいでいると、リセがお茶を注いでくれた。無口で無表情だが、こういうところは気がきくな。


 くいっと茶をあおると、ジャネットがまいったといった顔で言った。


「はあ~、やっぱりサラは強いねえ。あたしも必殺技を作らないと、あんたにはかないそうにないよ」


 まったくだ。こいつ、また強くなったんじゃないか? あの技、この前俺とやった時より明らかに強くなってたしな。俺の奥義宝剣群乱と同じくらい、いや、ひょっとするとそれより強くなっていそうな勢いだ。


 というか、今のサラならさっきの俺の岩もぶっ壊せるんじゃないか? いや、それはさすがに無理だろう。無理……だよな?


 ……とりあえず、もう二度とサラとは本気の稽古をしたくないな。


「そういうお前こそ、いつの間にあんな力を身につけたのだ? あの魔族の斧を正面から受けとめるなど、人間にできることではないぞ」


「へへっ、まあね」


 そうだった。こいつも知らん間にどんだけ筋トレしたんだ? あんな馬鹿力を持っているとなると、これからはうかつに怒らせることができんぞ。


 内心目の前の二人に恐れをなしながら、俺は平静をよそおって茶をすする。


「お互い強くなったのだ、そのうち稽古でもしようか」


「そのうちと言わずさ、この後やろうよ。そうだ、リョータも一緒にどうだい?」


「ぶうっ!?」


 唐突に稽古に誘われ、俺は思わず茶を噴き出してしまった。やだやだ、いやだい! 誰がお前らなんかと稽古などするものか、この化け物女ども!


 もちろんそんなことは口にせず、俺はクールに口を開く。


「お、俺はさっきの戦いで疲れてしまったのだ。やりたいのならお前たち二人でやってくれ」


「何まゆ毛ヒクつかせてんだい? あーあ、噴き出しちゃって、こんなところカナが見たらどうするんだい」


「ぐっ、そ、そのくらいわかっている」


 くそっ、こんなところでカナの名前を出してくるとは、脳みそからっぽのくせに言ってくれるじゃないか。


「まあ、リョータの言うことも一理ある。今日はゆっくりと休もうではないか」


「それもそうだね。オスカーのダンナが戻ってきたら、やるのかい、あれ?」


「もちろんだ。今部下たちに祝勝会の準備をさせている」


 それを聞いて、ジャネットが嬉しそうに叫ぶ。さっきまで魔族と殺し合いをしていたというのに、よくそんなに飲む気になれるものだ。


 すっかり舞い上がっているジャネットを横目に、俺はサラに聞いてみた。


「この町の人間や獣人はどうなっていたんだ?」


「それもオスカーが戻り次第報告してもらう。先ほど少し聞いた話では、どちらもそれなりの数がいるようだ。もちろん無事だぞ」


「さすがに手際がいいな、王国騎士団長殿は」


「そうだな、私も見習いたいものだ」


 うなずくサラに、俺はもう一つ聞いてみた。


「魔族の援軍の方は大丈夫なのか?」


「ああ、町も制圧したからな。問題ない。城門が壊れたままだが、あそこさえ守ればいいからそれほど苦労もしないだろう」


「なるほど、他はまるまる残っているからな」


 投石器で攻撃などしようものならあちこちの壁が崩れてしまっていたかもしれんが、城門以外は無傷だから防衛も難しくないのかもしれん。


「それに、この町が落ちた時点で連中も無理に奪還しようとはするまい。もちろん、こちらもしばらくの間は警戒することになるだろうが」


「そうか。では今回はこれでほぼ終わりということか」


「そういうことだ。ご苦労だった。お前もそろそろカナのところへ帰りたいだろう?」


「べ、別にそんなことはない」


 ぷいと顔をそらす俺に、サラがいたずらっぽく笑う。俺はカナがさびしがってないか、それが気がかりなだけだ。


「とにもかくにも、二人とも今回はご苦労だった。酒だけはある程度用意してあるから、今日は存分に飲んでくれ」


「ああ、お言葉に甘えさせてもらおう」


「そうこなくっちゃ! 今日は飲むよ!」


 しばし談笑しながら、俺たちはオスカーたちの帰還と祝勝会の準備を待った。



ふと思ったのですが、読者の皆さんは作中の女性キャラで好きなキャラなどいたりするでしょうか。


作者的には、なろうの読者層を考えると多分レーナが一番人気なのかな、などと思っていますが、よければ感想欄で好きな女性キャラを教えてくれればと思います。もちろん男性キャラでもかまいません。


クリスマスも近いので、サンタコスのイラストなどもお待ちしております(笑)。

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