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154 市壁の向こうへ


 城門を突破した俺たちは、二隊に分かれて街の中を駆け巡る。


 オスカー率いる金獅子騎士団は街を回って人間や獣人を解放し、サラの隊は敵の頭を取るべく街の中心部へと突入する。俺たちはサラとともに、敵の親玉がいるであろうかつての伯爵城へと突き進んでいた。


 途中、あちこちで出くわす魔族どもを片づけながら、俺はサラに話しかける。


「意外と街並みが整っているな。もっと荒れているかと思っていたが」


「連中も廃墟に住みたくはないのだろうさ。まじめな話、防衛と統治の拠点として我々の予想以上に重視されていたのだろう」


「ならば援軍も相当な規模になるか」


「だろうな。リョータが城門を破壊してくれなければ、最悪挟撃されていたかもしれん」


「役に立てたようで何よりだ」


「あたしだって役に立つよ。早く親玉のところに行こうじゃないか」


「そうだな、期待しているぞ、ジャネット」


「まかせな、お姫様」


 ニヤリと笑うと、ジャネットは大ぶりな剣を軽く払って脇から襲いかかってきた禿頭の魔族を斬り伏せる。


 そんなやりとりをしながら、俺たちは堂々と大通りを突っ切って城を目指した。


 


 しばらく走っていると、中心部に近づいてきたのかやがて大きな広場へと出た。


 そこには、魔族どもが俺たちを迎撃すべく集結していた。ワーウルフに禿頭のレッサーデーモン、肌が青いほぼ見た目が人間の魔族が武器を構えて殺意のこもったまなざしを向けてくる。Cクラス以上の実力がなければ歯が立たないレベルの連中だ。


 敵から矢の雨が降り注ぐ中、俺たちはそれを剣で薙ぎ払いながら敵へと迫る。さすがは騎士団の精鋭、リセをはじめとしたサラの部下たちも矢をものともしない。


「おらああぁぁぁっ!」


 竜殺しの剣を振りかざしながら、ジャネットがいの一番に敵の真っただ中へと突っこんでいく。これまでのうっぷんを晴らすかのような猪突猛進ぶりだ。あんなのに襲われては敵もたまったものではないだろう。


 遅れじとサラが、そしてリセたちが敵陣へ殺到する。若干乗り遅れつつも、俺もえいやっと魔族どもを切り刻んでいった。


 魔族どもも精鋭とはいえ、しょせんは一都市の防衛部隊だ。俺たちの敵ではない。連中の数がみるみる減っていく。


 その数が半数を割ろうかという頃になって、魔族の側の動きがにわかに慌ただしくなった。何事かとそちらに目をやると、連中の間を割って一際大きな体つきの魔族がこちらへとやってくる。


 レスリング選手を思わせる巨体のその魔族は、白い長髪を振り乱しながら怒声を上げた。


「人間ごときが! このわしの領地に潜りこみおって!」


 たっぷりのひげに二本の角と、ちょうどおとぎ話の鬼に似たその魔族は、俺たちを見下しながらさらに続けた。


「我こそは魔界第二中央要塞司令ガルボア! 魔界最強の将、魔界四魔将に最も近い男だ! 人間風情など、このわしがひねりつぶしてくれるわ!」


 ほう、わざわざ相手の親玉がやってきたか。城にこもっていれば少しは寿命がのびたものを。おかげでこちらは手間がはぶけて助かる。


 というか、「四魔将に最も近い」って、四魔将より下っぱじゃないか。そんな雑魚、この俺が手を下すまでもないんじゃないか?


 ともあれ、今までとは明らかに格が違う魔族のお出ましに、周囲には緊張が張り詰める。


「さあ、誰から死にたい?」


 両手に巨大な斧を構え下卑た笑いを浮かべる魔族に、さすがのサラ隊メンバーも思わずあとずさる。やはり俺が出るしかないかとあきらめながら足を踏み出しかけたその時、俺の前にずいと出る二つの人影が目に入った。


「さあて、ようやくあたしの出番がやってきたね」


「隊をあずかる者として、ここは退くわけにはいかんな」


 そんなことを言いながら歩を進めるのは、我が軍最強の二人の女剣士だった。ああ、こいつらが行くなら俺の出番はないだろうな。二人とも以前とは比べものにならんくらいに強くなっている。


 それでも一応俺も前に出ようとすると、二人が振り向いた。


「リョータ、ここは私たちにまかせてもらおう。お前は先の魔法で疲れているだろう?」


「そうだよリョータ、たまには後ろであたしらの活躍を見物してなって」


「そうか。ではお言葉に甘えさせてもらおう」


 そう言って俺はおとなしく下がることにする。正直、某お笑い芸人のようにどうぞどうぞの流れにならなくてホッとした。実際さっきの魔法で結構疲れてしまったしな。


「お前とこうして肩を並べていると、あの邪教狩りを思い出すな」


「ああ、確かにあの時もこんな感じだったねえ。お互いあの時より進歩したんじゃないのかい?」


「ふっ、違いない。それでは行くとするか」


「あいさ」


 そう軽口をたたき合いながら、二人は魔族の方へと歩いていく。まったく、頼もしい女たちだ。


 さて、それでは俺はこの二人の戦いをじっくりと観戦させてもらうとするか。そこの魔族、こいつらが真価を見せる前にくたばったりするんじゃないぞ。




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