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151 攻城戦開始


 いよいよ攻略戦が始まった。


 サラの遊撃隊とオスカーの金獅子騎士団、腕ききの冒険者からなる攻城部隊が布陣し、破城槌を持った部隊とそれを守る騎士たち、魔法士部隊が前進していく。


 城門に近づくと、市壁の上から矢が降り注いでくる。だが、風魔法士による風の障壁によって、矢の雨は見事に吹き飛ばされていく。ほう、これなら矢が当たる心配はないな。


「なるほど、確かにあれなら矢が当たらんな。大したものだ」


「そうだろう、我が騎士団に召し抱えられるほどの術者だからな」


 サラが誇らしげに言う。まあ、その気持ちはわからんでもない。


 市壁の上からは、矢だけではなく魔法も放たれてくる。その魔法も、障壁魔法士が張る魔法障壁の前に霧散する。魔法とは本当に大したものだ。


 敵の攻撃を退けて、破城槌が城門に激突する。騎士と魔法に守られながら、二隊が交互に槌を打ちつけていく。


 敵の攻撃がまったく届かないからか、戦争だというのにどこかのんきな空気がただよう。どちらかと言えば運動会を見物している気分だ。


 城門から離れたところでその様子を見つめながら、俺はサラに話しかけた。


「順調だな。敵の攻撃が届かないのなら、そのうち門も開くだろう」


「残念だが、そう簡単にはいかないのだ」


「と言うと?」


「単純に、魔法士の魔力がもたんということだ。ある程度攻撃したら、しばらく休憩してまた攻める。これの繰り返しだ」


「ああ、なるほど」


 魔力が切れたことなどないから感覚がマヒしていたが、そう言えばこいつらは魔力に限りがあるのだったな。




 しばらくして、城門から攻城部隊が引き上げてきた。そろそろ魔法士が疲れてきたらしい。


 彼らが休憩している横で、俺はサラに聞いた。


「攻城戦というのはこういうものなのか? 破城槌以外には何かあるのか?」


「そうだな、はしごなども考えられるが、あの市壁は上るには少々高いな。地道に破城槌で攻めるしかあるまい」


 うーん、やっぱりそうなるのか。映画とかだと、大きなやぐらや投石器などで派手に戦うものなのだが。まあ、下準備やら何やらが大変ではあるのだろうが。


 あるいは、魔法が便利すぎるから攻城戦の戦術がなかなか進歩しないのかもしれんな。やぐらやら投石器やらを作って運ぶより、魔法士を集めて連れていく方が手っ取り早いし楽だしな。


 ひょっとすると、攻城戦のノウハウはあったのだがそれが失われてしまったのかもしれない。これまで人間側が魔界に攻め入ることなどなかったのだからな。さすがに人間同士で争う余裕もそれほどなかっただろうし、城攻めの機会自体ほとんどなかったのであればノウハウが失われるのもしかたないことかもしれん。


 敵の方からうって出る気配はない。まあ、このまま待っていれば援軍も駆けつけるのだろうからな。わざわざ出る必要などないか。


「う~ん、何だかもやもやするねえ。何ならあたしがあの棒っこでぶっ叩いてきてやろうかい?」


 早くもしびれを切らしたのか、ジャネットが頭をかきむしりながらそんなことを言う。気持ちはわからんでもない。


 と、そこに立派な鎧を身に着けた騎士がやってきた。


「いやはや殿下、これはなかなか大変そうですな。おお、これはリョータ殿、ジャネット殿」


「オスカーか」


「どうも、オスカーのダンナ」


 やってきた騎士――王国騎士団長オスカーに、俺とジャネットが会釈する。


「殿下のご報告にあった通り、頑丈な城門ですな。これは覚悟しなくてはいけないかもしれません」


「そうだな、そうならないことを祈りたいものだが。厳しいかもな」


 オスカーの言葉に、サラもやや渋い顔でうなずく。やはり大変なようだ。


 これは俺の出番もそろそろかもしれんな。だが、すぐには手を貸さん。少し苦労してもらってからの方が、ありがたみもあるというものだろう。


「ダンナ、ダンナならあんな扉、ドカンと破れるんじゃないのかい? 早く開けておくれよ、このままじゃあたしが暴れられないよ」


「いやいや、それは無理というものだ。私もじれったいが、しばらく待っていてもらえないかな」


「ちぇっ、しかたないねえ」


「おいジャネット、あまり人を困らせるんじゃない」


「何だい、リョータに言われたくはないよ。あんたのことだ、どうせホントはすぐにあんな扉ぶち抜けるのに、みんながピンチになるまで待つつもりなんだろ?」


「そ、そんなことはない」


 こいつ、嫌なところをついてくるな。おつむは弱いくせに、こういうところは鋭いからタチが悪い。


 まあいい。もうしばらく攻城戦につき合えば、サラたちの方から俺にお願いしてくるだろう。それまでは、もう少しの間この運動会めいた戦いを見物させてもらうとしようか。



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