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150 城攻めの方法


 魔物どもの大軍を一蹴した俺たちは、部隊を再編すると再びイアタークへと進軍する。


 市壁から1kmほど離れたところで馬を降りると、サラの遊撃隊とオスカーの金獅子隊を中心とする都市攻略隊が集結した。その数およそ100。Cクラス以上の者からなる精鋭部隊だ。


 シモンが指揮する後方部隊に馬をあずけ、いよいよイアタークの攻略に臨むわけだが……。


「サラ、俺たちはこれから攻城戦に入るんだよな」


「ああ、その通りだ」


「城を攻めるからには、攻城兵器は用意してあるんだよな?」


「もちろんだ。ほら、あれを見ろ」


 そう言って、サラがあちらの方を指さす。その先では、何人かの男が太い丸太のようなものを抱えていた。まさか……あれか?


 サラが満足げに言う。


「昨日森でよい木が見つかったのだ。即席ではあるが、いい破城槌になるだろう」


 いや……それじゃあ無理だろう。俺が映画で見た破城槌はもっとこう、小屋みたいなのに囲まれて矢に射られないように守られていたぞ。あれじゃあ射られ放題じゃないか。


「サラ、それであの城門を壊す気か?」


「そうだ。他にどうするというんだ?」


「いや、あれで突撃するのは自殺行為だろう。城壁から狙い撃ちにされるぞ」


「くくく、そうだな。あのままでは格好の的になるだろう」


「笑いごとじゃないだろう。きちんと屋根なり壁なりをつけてあいつらを守ってやらなければ危ないぞ」


「屋根と壁……?」


 不思議そうな顔をすると、サラは俺に聞いてきた。


「それは、小屋のようなもので身を隠せということか?」


「そうだ」


「ぶっ!」


 俺がうなずいたとたん、サラは盛大に噴き出した。そのまま大笑いを始める。


「あははははは! 小屋で身を守るか! それはいい! どうせなら家族にやらせよう。小屋の中で家族団らん、そのまま親子なかよく城門へ突撃! ははは、傑作だ!」


 実におかしいといった様子でサラは楽しそうに笑い続ける。こ、こいつ、俺が親切で言ってやっているものを……。


 そんな俺の様子にはお構いなしに、サラは名案でも思いついたと言わんばかりの顔で声をかけてくる。


「そうだリョータ、なんならお前たちがやってみるか? ジャネットとカナの三人でいつものようになかよく……」


「ふざけるな!」


 俺の一喝に、それまで上機嫌だったサラがぴたりと笑いを止めた。


「え……? 今のは、冗談ではなかったのか……?」


「こんなときに冗談などいうものか! 本気に決まっている!」


 俺の怒声に、サラの顔色がみるみる青くなっていった。俺の目が本気なのに気づいたのか、あわてて謝罪する。


「す、すまん! 私はてっきりお前が冗談で私の気をまぎらわせようとしてくれていると思ったのだ! お前を茶化すつもりなど毛頭ない! どうかこの通り、許してくれ!」


 見ればサラの肩がわずかに震えている。先ほどまでとはうってかわり、気の毒なほどに頼りなさげなサラの目に、俺も落ち着きを取り戻して声をかける。


「いや、すまん。俺も興奮していたようだ、今のは忘れてくれ」


「ほ、本当にお前を笑いものにするつもりなどなかったのだ、頼む、信じてくれ」


「わかっている、お前はそんな奴ではない」


 その言葉に、おびえた顔をしていたサラが安堵のため息をつく。横ではらはらしながらこちらを見つめていたジャネットも、安心したのか胸をなで下ろしていた。


 それにしても、冗談とはどういうことだ? 俺は大真面目に指摘したのだが。


 やや緊張ぎみに、サラが口を開く。


「私の言い訳など聞きたくないとは思うが、お前なら攻城戦のイロハは知っていると思っていたのだ。だからわざとあんな冗談を……」


「すまん、俺はその攻城戦のイロハとやらを知らないのだ。よければ教えてくれないか」


「そ、そうだったのか? 勝手に早とちりしてすまなかった。もちろん教えるとも」


 どうやらこちらにはこちらのやり方があるようだ。例によって、サラは俺ならその程度は当然知っていると勘違いしてしまったらしい。


 なるほど、そういうことだったのか。せっかく俺を評価してくれていたというのに、怒鳴りつけたりなどして悪いことをしたな。


 少し反省する俺に、サラが説明を始めた。


「基本的には、破城槌の部隊とそれを守る部隊で攻撃するのだが、城壁からの攻撃には魔法で対処する」


「魔法?」


「そうだ。我が騎士団も魔法士を抱えている。攻城戦では、主に風魔法士と障壁魔法士を数名集めて彼らの魔法で飛び道具を防ぐ」


 そうだ、ここはファンタジー世界だったな。魔法があることを失念していた。魔法があれば当然戦術も変わってくるか。


「城門も魔法で攻撃したいところだが、敵も魔法で攻撃してくるかもしれんし、城門自体が対魔法用に加工されているはずだ。そうなると、お互い魔法戦を繰り広げつつ地道に破城槌で城門を攻めることになる」


「魔法で守れる人数には限りがあるから、少数精鋭で攻めることになるわけか」


「その通りだ。さすがリョータ、理解が早いな」


 サラが驚きの声を上げる。いや、だから俺を持ち上げるのはほどほどにしてくれ。お前に限っては、さすがに度が過ぎる。


「まずはあの破城槌を持った二隊と遊撃隊のメンバー、そしてオスカー隊の魔法士たちで攻撃をしかける。それで城門を破壊できれば問題ないのだが……」


「うまくいかなければ俺に言え。何とかしてやるさ」


「頼もしいな。期待しているぞ」


 そう言いながら俺の顔を見上げるサラの目は、本当に頼りにしているといったまなざしだ。



 安心しろ。あの程度の城門、俺が粉々にしてやる。お前たちは大船に乗ったつもりで俺にまかせるがいい。




おかげさまで150話目を迎えることができました。この戦いが終わるとまた新展開に入りますので、どうぞよろしくお願いします。

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