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147 遠征軍集結


 4つめの村を解放した後、各隊の合流地点に到着した俺たちはそこに陣を張った。その日はそのままそこで野営する。


 翌日にはオスカーとシモンの隊も到着し、拠点防衛要員をのぞく遠征軍の全部隊が終結した。こうして集まってみるとやはり壮観だ。


 その翌日、ついに遠征軍は城塞都市イアタークへと進撃を開始した。魔界領へ侵攻してから一週間。ようやくこの遠征も終わりが見えてきたな。


 木々が生い茂る森林地帯のせまい道を、長い列になりながら行軍する。この状態で側面から攻められたら厳しいな。まあ、そこは俺たちが目を光らせているのだが。


「この森を抜ければイアタークだったな」


「ああ。連中も準備万端で待ち構えているだろうな」


「そりゃ、あれだけ派手に拠点を潰しまくっていけばな」


 そう言いながら俺とサラが笑う。最後に解放した村など、もうまるまる放棄されていたからな。連中が村を焼き払ったりしていなくてよかった。


 俺たちの後ろにいるジャネットが、少しそわそわしながら言う。


「さすがに落ち着かないねえ、これだけの人数がいると」


「うん? 意外だな、お前がそんなことを言うとは。まさかとは思うが決戦を前に怖気づいたか?」


「まさか。魔族なんて100匹だろうが200匹だろうがぶった斬ってやるさ。ただ、こんな大人数で動いたことはないからねえ」


「そうか、ジャネットはこういう戦いは初めてか。もっとも、これほどの規模の戦いは私も初めてなのだがな」


 サラが苦笑する。まあそうだろうな。今までは魔族に押されっぱなしだったのだ、これだけの人数でうって出ることなどなかっただろう。


 俺はサラに聞いてみた。


「この森を抜ければイアタークまでは平地だったな」


「ああ。とりあえず森の外で待ち伏せてはいないようだ。イアタークに戦力を集中させているのだろう」


「兵力分散の愚は犯さない、か」


「単純にイアタークから森まで行軍するのが大変なだけかもしれんがな。魔族もいろいろだ、まともに意思疎通ができる者ばかりとは限らんし、図体が違えばそれだけで各隊の行軍速度も違ってくるだろう」


「なるほど、それは運用も大変そうだな」


 というか、そういう欠点があるから人間界への侵攻も停滞気味だったのかもしれんな。こちらにしてみれば、そのおかげで首の皮一枚つながったということかもしれん。


「連中はどういう形で待ち受けていると思う?」


「そうだな、まずは町の前の平地に家畜兵どもが布陣しているだろう。町の中の魔族がのこのこ出てきてくれれば楽なのだが、さすがに連中も馬鹿ではないはずだ。平地での一戦で我々の戦力を計って方針を決めるのではないかな」


「お前ならそうするか」


「ああ、そうするな。おそらくすでに魔界の中央に増援を要請しているのだろうしな。我々はそれが来る前にイアタークを攻略しなければならない」


「時間との戦いでもあるわけか」


「その通りだ。こちらとしては、わざと負けたふりをして市壁内の敵をおびき出す手も考えられるが……」


「ええ!? やだよあたしゃ、そんなせこいのは!」


 サラの案に、ジャネットが不満をあらわにする。


「だいたい連中に背中を向けるってのが気に入らないよ! あたしの前に出てきた奴は皆殺しだよ、皆殺し!」


「まあ落ち着け。たとえばの話だ」


 サラが苦笑する。というか、ジャネットはあいかわらず発言が物騒だな。


「わざと負けてみせるというのもなかなか難しいからな。一歩間違えばそれに乗じて攻撃され、ふりではなく潰走するはめにもなりかねん。作戦としてはリスクが高い」


「そうだろそうだろ、やっぱり正面から全部ぶちのめすべきだよ」


 ジャネットが得意げにうんうんとうなずく。お前、絶対サラの言ってることわかってないだろ。


 サラはといえば、ジャネットが納得したことに満足したのかそのまま話を続けている。


「今回は騎士団も過半が参加しているのだ、まずは正面から敵を撃破することになるだろう。町の外を制圧したら、精鋭をもって都市内部を攻略する。お前たちには働いてもらうぞ」


「ああ、ようやく俺の出番が来そうだな」


「まかしときな! 魔族なんざ、このジャネット様が片っ端からぶっ殺してやるよ!」


 だから、お前の発言物騒なんだって。


「おいおい、獣人や話のわかる者まで斬るんじゃないぞ?」


「わかってるってお姫様。これが終わったら、こっちの方もたんまりいただくよ?」


「もちろんだ。今から楽しみにしているがいい」


 右手で金を催促するジャネットに、サラも不敵な笑みを返す。親指と人さし指で円を作るのはこちらも向こうと同じなんだな。


 そんなことを話していると、せまかった森の道がだんだん広くなってきた。と、前方からサラお付きの美人騎士、リセが馬を近づけてくる。


「そろそろ森を抜けます、殿下」


「そうか、ご苦労。さてお前たち、いよいよだぞ」


「ああ」


「へへっ、楽しみだねえ」


 木々もまばらになり始め、日の光が差しこみ始める。


 この森を抜ければイアタークまであと少しか。どれ、そろそろ俺も本腰を入れて取り組むことにしようか。




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