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146 解放戦、魔界にて


 魔界へと進軍して三日目。俺たちは次の目的地へ向けて行軍していた。


 目標である四つの村のうち、すでに二つは解放に成功した。サラ率いる精鋭部隊の前には魔族どもは敵ではなく、俺たちはほとんど出る幕がなかった。


 解放した村には騎士とピネリから合流した兵士を数名残し、さらに先へと進む。最終的にオスカーたちと合流する頃には、王都を出発した時と同じくらいの人数になっているだろうとサラは言っていた。


「さて、次の村ではお前たちにも働いてもらうことになるはずだぞ」


 そう言ってサラが笑う。


「次はあの村か。俺たちが偵察した時には結構な大きさの村に見えたな」


「ああ、魔族も多そうな様子だったからな。奴隷というか、半家畜的な魔族も多そうだ」


「ゴブリンやコボルトみたいな連中か」


「そうだ。あの種は獰猛だからな、遠慮なくやってくれていい」


「もとよりそのつもりだ」


 ジャネットも嬉しそうな顔をしている。


「ようやくあたしの出番だね。まとめてたたっ斬ってやるよ」


「俺の出番も残しておいてくれよ」


「悪いけど、保証はできないね」


 ニヤリと笑うと、ジャネットは少し前へと馬を進めた。まあ、ここは別に譲っても構わんがな。





 しばらく進むと、次の目的地が見えてきた。


 広がる畑の向こうに、今までより少し大きな村がある。村を囲う柵のまわりには、ところどころに馬小屋のような建物が見えるな。


 と、それらの小屋の扉が次々に開いた。かと思うと、その小屋から小型の魔物がわらわらとわいてくる。やはりゴブリンどもを飼っていたか。


「さて、それでは始めるとするか」


 不敵に笑うと、サラが遊撃隊に命を下す。


「全軍突撃! 敵を蹴散らせ!」


 そう言うや、馬を駆ってサラがゴブリンの群れへと突進していく。それに遅れじと遊撃隊と傭兵たちも続いた。おっと、俺も乗り遅れないようにしないとな。


 今回も馬からは降りずか。まあ、雑魚を蹴散らすにはその方が効率がいいしな。雑魚相手じゃないと騎馬戦にならないというのは、いまだにどうにも釈然としないものがあるのだが。


 そうこう言っている間に、前の方ではサラとジャネットが肩を並べるような格好でゴブリンどもの群れに突っこんでいく。あの二人の手綱さばきにはさすがの俺も舌を巻く。


 敵と接触したかと思うと、ゴブリンどもが次々と吹っ飛ばされていく。これも見慣れた光景になりつつあるな。こいつらがこんな調子で敵を蹴散らすものだから、俺の出る幕がほとんどない。


 サラたちに続けと、遊撃隊の面々が群れに突進していく。魔族どもはなすすべもなく中央を突破され、動揺と怯えが広がっていく。


 敵陣、と言えるほど秩序だったわけでもない集団の中央を抜けると、サラは右へと大きく曲り、U字ターンをして割れた群れの片方へと再び突撃していく。


 最初の一撃で戦意が粉々に砕かれたのか、騎兵隊の突撃の前にゴブリンどもはもはやまともに抵抗しようともせず散り散りになっていく。これはもう勝負あったな。


 もう片方の群れに突撃する頃には、当のゴブリンは半分以上が逃げ出していた。敵の指揮官は早々に潰されたのだろう。森へと逃げたゴブリンどもはいずれ駆除しなければならないだろうが、まずはこの村の解放が先だ。


 と言っても、趨勢はもはや決しているといっていいだろうがな。馬を降りて村へと入っていくが、これといった抵抗もない。おそらく勝ち目なしと判断して早々に撤退したのだろう。


 足止めなのだろうか、家の陰から襲いかかってきたリザードマンどもを難なく斬り伏せると、俺たちはあらかじめ打ち合わせていた通りいくつかのグループに分かれて人間や獣人がいないか探索を始めた。




 ほどなくして、彼らが押しこめられていた建物を見つけ出す。いつものように彼らを解放したあとは、俺たちもこの村に泊まるべく準備を始める。


 村の中心部にある館で少しくつろぎながら、俺はサラにぼやいてみせた。


「結局今回も俺の出番はなかったな」


「それならそれで結構なことだ。お前を余計な危険にさらさずにすむのだからな」


 俺のぼやきにサラが笑いながら答える。まあ、サラがそう言うのなら別にそれでいいのだが。


 と、ジャネットが妙にうきうきしながらサラに近づいてきた。


「ねえねえ、あんたは何匹やれたんだい?」


「私か? ゴブリンなら20くらいは倒したと思うが」


「はっは! じゃあ今日はあたしの勝ちだね! なんせあたしゃ今日は28匹やったんだから!」


 そう言いながらジャネットが実に嬉しそうに笑う。そんな雑魚の数でいいのかと思いつつも、ジャネットの負けず嫌いについ笑みが漏れる。


 サラもそれは大したものだ、と笑いながらグラスの水をあおる。まったく、結局こいつらだけで群れの2,3割を片づけているのだから大したものだ。


「明日もう一か所を解放すれば、その後はいよいよ例の町だな」


「そうだ。そこでは間違いなくお前の力が必要になるだろう。期待しているぞ」


「もちろんだ。俺もいつまでもタダ飯食らいでいるつもりはないからな」


 そう言って互いに笑う。


 次はあの城塞都市か。ようやく俺の力を見せつけることができるな。心中で一人ほくそ笑みながら、俺も水を一杯飲み干した。

 



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