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107 乙女な女剣士




 叙任式の日取りが決まった。何か準備するものはあるだろうか。


 そうだ、そういえば約束をしていたのを思い出した。



 ある日の朝、俺は居間にいるカナに声をかけた。


「カナ、ドレスを買いに行こうか」


「ドレス?」


「そうだ。前にほしがっていただろう。叙任式用に買ってやる」


「わかった」


 俺の言葉に、カナは顔色一つ変えず嬉しそうに返事した。


 と、近くで聞いていたジャネットが声をかけてくる。


「あ、あのさリョータ」


「どうしたジャネット、何かあったのか?」


「いやさ、その買い物にはいつ行くんだい?」


「そうだな、レーナの都合が合えば明日かあさってにでも行くつもりだが」


 そう答えると、ジャネットはもじもじしながら言った。


「その買い物、あたしもついていっていいかい?」


「ん? ああ、別に構わんが、お前も何か買いたいものがあるのか?」


 やや不思議に思って聞くと、意外な答えが返ってきた。


「いや、そのさ、あたしも、ド、ドレスがほしいかなって思って」


「ドレス? お前が?」


「なんだい、その反応は」


 うっかり素の反応を返してしまった俺に、ジャネットがふくれっ面をする。


 それから一転して、自信なさげな顔になった。


「や、やっぱりおかしいかい? あたしがドレスなんてさ……」


「いや、そんなことはない。お前ならよく似合うと思うぞ」


「ほ、本当かい……?」


 少し恥ずかしそうにジャネットが言う。こいつのこういう仕草は珍しいな。カメラがあれば撮っておきたいくらいだ。


「それにしても、どうしてまたドレスなんかがほしくなったんだ? ああいうヒラヒラしたのは動きにくくて嫌いなんじゃなかったのか?」


「それは、その……やっぱり女らしいところだって見てもらいたいじゃないのさ」


 ……聞き間違いか? 今、女らしいとかなんとか聞こえた気がするが。あのジャネットがそんな言葉を口にするとは、いったいどういう風の吹き回しだ?


「……あんた今、あたしが女らしいとかおかしいって思ってただろ」


「い、いや、そんなことはないぞ。ジャネットは十分に魅力的な女性だ」


 嘘は言っていない。素材としては確かに魅力的だ。女らしくすればさぞ美しいだろう。ただ、中身がそういうことを言ったのが意外なだけだ。


 とはいえ動揺を隠しきれなかった以上追及はまぬがれないかと思っていたが、意外にもジャネットは顔を赤らめてこう言った。


「そ、そうかい? 嘘でも嬉しいよ……」


「いや、嘘ではない」


 というか、どうしたんだこいつは? 今日はずいぶんとしおらしいな。まあ、たまにはそんな気分の日もあるのだろう。


「そ、それじゃよろしく頼むよ! じゃああたし、稽古に行ってくるよ!」


 顔を赤くしてそう言うと、ジャネットは竜殺しの剣を握って部屋を出て行った。


 俺のひざの上に移動してきたカナが不思議そうに首をかしげる。


「ジャネットも、ドレス着る?」


「ああ、そうみたいだな」


「ジャネットも、お姫様?」


「そうだな。女の子はみんなお姫様になりたいものだと言うしな」


「お姫様、いっぱい」


 脚をぶらぶらさせながら、カナが言う。考えてみれば、カナはもうすぐ男爵の被保護者となるのだからある意味お姫様のようなものなのか。ジャネットにしたところで、正式に俺のハーレムに加われば姫と言えないこともないだろう。いや、そんなことはないか。


「さて、カナはそろそろ学校にいかないとな」


「うん」


 ひざから降りたカナが着替えをして学校へと向かうのを見届けると、俺も外出の支度をしてギルドへと向かう。





 ギルドでレーナに買い物の手伝いを頼むと、彼女は即快諾してくれた。まあ、レーナは俺と少しでもいっしょにいたいと思っているのだし、それも当然か。


 あさってに俺の家に来るよう約束を取りつけると、レーナのお茶会が始まる前に俺はギルドを後にした。あさって存分に相手をしてやるから、今日は勘弁してくれ。


 そうだな、レーナにも何かプレゼントしてやろう。と言っても、ジャネットやサラみたいに剣をプレゼントするわけにもいかないしな。今度の買い物の時にでも聞いてみるとするか。



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