表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/227

105 姫騎士へのサプライズ




「なるほどな。しかしレーナもさぞ驚いたことだろう。包みの中が竜の首とはな」


「あたしもちょっとおどかしてみようと思ったんだけど、考えてみたらそりゃ驚くさね」


「何にしても、竜を倒すとは大したものさ。私も機会があればとは思っていたが、まさかお前に先を越されてしまうとはな」


「あんたはSクラスで実績積んでるからね、あたしはこうでもしないと追いつけないのさ」


 俺たちから竜退治の話を聞いて、サラが楽しそうに笑う。確かにサラの腕であれば、まともな剣さえ持っていればレッサードラゴン程度は難なく倒せるだろうな。


 一通りの話を聞き終えると、サラはジャネットの剣に目をやった。


「それが竜殺しの剣か。よければ少し見せてくれないか?」


「ああ、構わないよ」


 そう言うと、ジャネットは鞘ごと剣をサラに手渡した。


「ありがとう」


 礼を言うと、サラは鞘から剣を抜き放つ。それから、刀身をまじまじと見つめた。


「ほう……これは素晴らしい剣だな。これをリョータがつくったのか?」


「ああ」


「まったく、お前の多才さにはいつも驚かされるよ」


「お褒めの言葉、光栄の至り」


 俺の返事に笑うと、サラはジャネットに聞いた。


「少し素振りをしてみてもいいか?」


「どうぞ」


 うなずくと、サラは剣を軽く二回振る。今ので感触を確かめたのか、今度は目にも止まらぬ速さで縦横無尽に剣を振り始めた。


 これは驚いたな。俺やジャネットも強くなったと思っていたが、それはサラも同様だったらしい。間近でその剣さばきを見ると、彼女の力というものがはっきりとわかる。


 ひとしきり剣を振るうと、サラは満足したかのような顔で剣を鞘におさめた。


「どうだい、いい剣だろ?」


「ああ、使い心地も素晴らしいな」


「あげないよ?」


「わかっているさ」


 それから、サラは剣を見つめながらつぶやいた。


「うらやましいな、ジャネット。私もこんな剣が一つほしいものだ」


 やや名残惜しそうに、剣をジャネットへと返す。どうやら俺からもらった剣がうらやましいようだ。


 これは、わざわざ準備しておいた甲斐があったな。


 俺は立ち上がると、サラに声をかけた。


「サラ、ちょっといいか」


「うん? どうした、急に」


 いぶかしむような目で見るサラの眼前に、俺は一振りの剣を突き出した。


「実はお前にも剣をつくってみたんだが、いらないか?」


「な……?」


 俺の申し出に、サラの動きが止まる。


 そう、俺は今日、サラに渡す剣を持参していたのだ。以前ジャネットが女心がどうだのと言っていたからな。サラにもプレゼントすることにしたのだ。


 この剣は、例のガメルのコレクションの中から選んだものだ。サラには聖剣が似合うと思ったので探してみたら、「神の加護LV7」というのが見つかった。俺の剣が「神の加護LV8」だからな。それに準じる力を持っているようだ。


「わ、私のためにつくってくれたのか……?」


「ああ。サラには聖剣をつくってみた。少し振ってみてくれないか」


「あ、ああ」


 そう言って剣を受け取ると、鞘から抜いて先ほどと同じように剣を振るう。


「どうだ?」


「ああ、素晴らしい剣だ。私の手にもよくなじむ」


「それはよかった。よければ使ってやってくれ」


 俺が言うと、サラはややためらいがちに言った。


「だが、これほどのものをもらってしまってもいいのか? 私はお前に何もしてやっていないというのに」


「何を言っている。いつもお前には世話になっているさ。これは日頃の恩返しだとでも思ってくれ」


「そ、そうか……」


 少し顔を赤くすると、何かを吹っ切ったかのように言った。


「では、これはありがたく頂戴するとしよう。ありがとう、リョータ」


「いや、このくらいどうということはない。喜んでもらえたようで何よりだ」


「ああ、もちろんだ。大切に使わせてもらうぞ」


 そう言ってサラは笑うのだった。






「リョータ、あんたもやるじゃない」


 城からの帰り道、俺の肩にもたれかかりながらジャネットがそんなことを言った。


「何のことだ」


「剣のことだよ。サラったら、完全に乙女の目をしてたよ。あれはもう決め手だろうね」


「まあ、前にお前に言われてたことだしな」


「それをきちんと実行するんだから、やっぱりリョータはいい男だよ。サラも今夜は眠れないだろうね」


「さあ、どうだかな」


 サラのあの喜びようからすれば、そうなるのは間違いないだろうがな。


 一仕事終えた満足感と共に、俺は家へと戻るのだった。




現在開放中の感想欄ですが、皆さんのご意見ご感想を聞けるメリットが大きいので当分の間は今の形で開放しておこうと思います。引き続きどうぞご利用ください。


なお、誤字脱字、言葉の誤用、内容についての疑問などのご報告・ご感想につきましては、必要に応じて修正していますのでよろしくお願いします。いつも助かっています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ←もし『転移魔法』がおもしろかったなら、ここをクリックしてくれると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ