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初恋。  作者: 冬鳥
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たんなる道具


北校舎二階にある二年C組の教室は空気の循環が悪いのか絶えず息苦しさが付きまとってくる場所だった。呼吸をするのでさえも意識が必要となるように空気中の酸素が少なく感じられた。

太陽の光が教室に差し込むと皆が不快感を表すように目を細め、風が吹けば同じようにまた皆が目を細めた。


ここでは椅子が床に擦れる音や教科書をめくる音や黒板を踊るチョークの音までもがどこか空々しく感じられた。一人の人間をある者達は徹底的に苦しめ、ある者達は見て見ぬふりを続ける。この空間はあらゆるものがすさみ歪んでさえみえた。



そんな教室の後方に位置する席で二年生のリーダーである肥満体の佐野を中心とした男六人が顔を付き合わすようにして集まっていた。




「宮崎」


佐野は横でマンガを読み耽る宮崎を呼んだ。その隣りには山下もいる。山下はガムを噛みながら額にできたニキビをポリポリと掻いていた。



「なぁ宮崎。奈緒子をやっちまうのはおまえがまえに言っていたプールの西側の部分がいいな。あそこならおまえの言うとおり見張りを二人たてれば完全に外界からシャットアウトできる。なんでもできる」



佐野に聞かれた宮崎はその場所の細かい部分までを頭のなかに描いた。



「プール建物の壁からフェンスまでの隙間のとこっすよね、あそこはいま雑草がすごいし数少ない学校の死角だよ…でも佐野君。今日奈緒子やるの?」




佐野は「はぁ〜ぁ」 と 小さくため息混じりに声をだした。



「決めたと言ったろ。この六人でやる。おまえだってあの奈緒子で最後までしてみたいだろ?え?キスだけじゃ物足りないだろ?え?。なら楽しもうぜ」




「それで佐野君。どこまでやっちまうんだ?」


宮崎が返答するまえに山下がすかさず佐野に聞いてきた。



山下はちらっと杉田奈緒子のほうを見た。

奈緒子はここから離れた場所に一人で席にいた。


いつものように一人だった。



「だからまえ言っただろ。全部だよ全部。でもいいな。これだけは守れよ。最初にするのはこのおれだからな」



佐野が唾を飛ばしながら山下に話すのを宮崎は口をすぼめて見届けていた。



「あの…でも佐野君。まじでやるんすか…やばいっていうか…かなり…たぶん杉田はそのあと…自殺するんじゃないかな。全部って俺達みんなのを順番に奈緒子のなかにぶち込むんでいくってことっすよね?なら、それぞれ避妊具くらいはつけたほうが…」



宮崎の言葉に誰かが吹き出しながら笑った。やはりそれも山下だった。



「おい宮崎。言いながらお前勃起してんぞ。それにコンドームなんてねえし奈緒子が妊娠なんてしねえよ。あいつは女じゃねえたんなる道具だ。第一、たとえ妊娠したしても誰の子かわからねえだろ。俺達が入れてる間、お前はあいつの口にでもその粗末なもん突っ込んでろよ。なぁ佐野君」



ムッとする宮崎を横目に笑う山下が最後にこう言った。



佐野君。奈緒子も今日で終わりだな。



山下は離れた席にいる奈緒子を見つめ奈緒子の小振りながらも柔らかい胸の感触やピンク色の乳房の美しさやキスをしたときの奈緒子の唇のなめらかさを思い出していた。



そんな山下の横顔を睥睨したままの佐野は脂肪に包まれた太い腕で机を強く叩く。



「お前ら!とにかく今日やると決めたらやるんだ!。山下。いまから奈緒子に言ってこい。部活が終わったらプール西側に来いってな。プール西側だからな」



宮崎が手にしていたままのマンガ本を思い出したかのように机に閉まってから佐野を見上げ続いて山下を見上げた。




「おれに任せろ佐野君。よし。言ってくる」



山下が宮崎を見返すように目を合わせてから口元を歪ませた。


「はぁ…」



宮崎がそんな山下から目を逸らしため息をついた。


山下はまた鼻で笑った。


ここにいる他の男達すべてが苦々しい顔をしながらリーダーである佐野の顔を伺っているのが山下にはみえた。



本気に奈緒子をやるのか。

これは行き過ぎではないのか。


佐野と自分以外の残りのメンバーは予定する奈緒子との行為に明らかに引いているようにみえた。



「ちっ!」


佐野はイライラとしているのかまた机をドン!と大きな音を出して叩いた。





「よし。おれが奈緒子を必ず一人で来るようにしてやるよ」




山下がそう言い残して離れていった。






佐野は窓越しに外を見ながらふと考えたのちにやがてニタニタと笑いだした。



「宮崎ちょっと来い」



宮崎は佐野の吐き出す口臭に鼻をつまみたくなるのを必死に堪えながらも頷いた。



「宮崎。あの人と指示といえばわかるか」


宮崎と窓際に来た佐野は唐突に小声で聞いた。


「あの人…?」



「とぼけるな。さっきあの人に聞いたよ。おまえも指示受けてんだろ?」



「え、佐野君も…。て、ことはあの人がマジで奈緒子を襲えと言ってきたんですか…?」



「奈緒子か?ああ。あの人の指示だ。お前はわかってるんだろ。いままでのすべてがあの人の指示だ。奈緒子は本来は虐められるような女じゃないだろ」




「はい…でも…俺も佐野君も奈緒子とキスしてる。この後大丈夫なのかな…」



「仕方ないだろ。だがな宮崎。俺達には到底キスなどできないようないい女とキスしたのも事実だ。このあとあの人からリンチくらうなら仕方ないだろ。もう俺達に逆らう力などないのだ」



「うん…あの人は凄すぎる」



宮崎はうなだれた。




「まあいまから先のことを考えても意味がない。宮崎、あの人の指示だ。ここからの俺達は演技だからな」



「演技?」



「ああ、あの人がとりあえず狙うのはあいつだ。お前ヘマするなよ」



佐野は奈緒子に話しかけている山下の背中に向けて顎わ突き出していた。





佐野は連絡通路にてあの人に教えられたのだ。


―なぁ佐野。宮崎って奴もおれの友人だぞ。奈緒ちゃんを救うと同時に山下って奴を懲らしめたい―



佐野は理解した。ここにいる6人のなかであの人がとりあえず狙うのは山下だけなのだ。



奈緒子へのイジメを終わらせるための生贄は山下となる。


あの人は裏切りを決して許さない。山下は抜け駆けをしてキス以上のことを奈緒子にした。



許されるけとではない。



そしてあの人は虐めを終結させて奈緒子を振り向かせる。


恐ろしい行為だと佐野は思った。


佐野ら多数の男に奈緒子を穢させてまでも叶えるという異常といえる手段だ。





山下はといえば奈緒子の席へと向かいながら考えていた。


佐野が最初に奈緒子とするなんて嫌だ。と。



奈緒子の口が胸が股が佐野によって汚されてからなど美味さも半減だろう。

六人でするまえに

自分だけが先に奈緒子とできないものだろうか。


一度最後までしてしまえば奈緒子などもうどうでもいい。と思う自分がいるはずだ。


あいつはもちろんバージンだろう。最初にあいつのなかにぶち込むのは佐野じゃない。このおれだ。



山下は廊下に面した席に座っている奈緒子のところに行く。その光景を教室にいる女がヒソヒソと何かを囁きあい、他の男は見て見ぬふりをした。


「おーい、一人で寂しそうだなぁ」


山下が奈緒子の耳元に口を近付けた。


奈緒子は無言のまますぐに机に顔を伏せた。


その弱々しい仕種を見て山下はピンク色に光る舌を出して唇を濡らした。



可愛いな…たまんね…

やはり誰にも…取られたくない。

奈緒子は俺のものだ。



「奈緒子。まあそんな嫌がるなって。おれとおまえのなかじゃないか。おまえのそのおっぱいにたくさんしゃぶりついたのはまだこのおれくらいしかいないんだろ?」


奈緒子はピクりと身体を動かした。


山下はそれを見て顔を伏せる奈緒子の上で、舌をダランと垂らして離れた男達の顔を見た。


五人もこちらを注目している。



山下は屈んで奈緒子の耳元に唇が付くか付かないくらいのギリギリまで寄る。


「おいおい〜。その態度はよくないな。よく聞けよ、大橋彰を半殺しにするぞ。ほら顔あげろ」


奈緒子は言われた通りにゆっくりと顔を上げる。

いまにも泣き出しそうな表情をしていた。


山下はふてくさる表情で起き上がった奈緒子の髪に触れた。

奈緒子の黒く長い髪を指で遊ぶ。


「奈緒子。そんな態度してたら下手すりゃ…大橋は死んじゃうよ。そうなりゃ庄内川にドボンかなぁ。死体は名古屋港で発見ってとこか」


奈緒子はその言葉にびくびくと唇を震わせ始める。


「やめてください…」



奈緒子は恐ろしげに山下の顔を見る。


「や…やめてください、お願いします…」



「ばーか」



「お願いします…」



「おいバカ女。どうしてもか?」



「はい…」


「じゃあいままで通り命令されたことなんでもするんだな。え?」


「……」




奈緒子は唇を震わせていた。




「どうする?バカ女が」




「嫌…」




「なんだと?」




「大橋君になにかしたら私は…私は…死ぬ…」




奈緒子が山下の顔を見た。涙を溜めた瞳にはいままでにはない力が籠められていた。


「なんだその目は!」



「彰君にもしなにかしたら私は…」



力が篭る眼差しだった。山下はたじろいでいた。



「いまこの場でおまえの髪を引っ張り上に向かせ激しくキスしてやろうか!え!」



動揺で呼吸が荒くなってるのは山下のほうだった。




「今日、部活が終わったら体育館の裏に来い。絶対に一人だ。わかったか?間違っても大橋に助けを求めるとか思うなよ。お前が一人で来たら大橋は今まで通り見逃してやる」




「……」




奈緒子は無言のまま寂しい顔をする。いつもの顔に戻っていた。



「無視するな返事しろ!」




山下は痺れをきらしたかのように奈緒子の髪を掴んで引っ張りあげた





「おい!どうすんだ!え?」




「はい…行きます。だから…だから…お願いします、大橋君には…」





「バーカ。絶対来いよ」




いつのまにか

山下は自分の股間を触っていた。




「ふん。バカが。我慢できねえよな奈緒子。今日もとことんおまえの胸や唇をしゃぶらせろよ」




今日は解禁だ。



それ以上もとことんしてやる。



山下は奈緒子から離れると佐野らにはオッケーサインだけ送りトイレへと向かっていった。

山下の後ろ姿を見送った佐野はまた宮崎を窓際に連れていった。


そして山下が完全に視界から消えてから話しはじめた。




「あいつ…どこに誘ったかな…」



佐野が聞いて

宮崎が答える。


「佐野君。山下はおそらく体育館裏だよ。あいつはあそこでよく煙草吸ってるからね、プール西にはその後行かせる」




便器に向かう

山下は微かな動揺を感じていた。

先程の杉田奈緒子の変わり様には一種の彼女なりの強さが感じられた。それは杉田奈緒子が山下に初めて見せた抵抗だった。





佐野と宮崎と山下を除く残る三人は今日の放課後に起きるであろう一方的な暴力と佐野に逆らえない弱い自分に対して、それぞれに顔を見合い半泣きの顔をしていた。



「こうなったら従うしかないだろ…やられる杉田を見届けるしかない」







「くそ!くそ!くそ」


山下は便器に向かって必死にペニスを扱いていた。


右手におさまる皮を被ったそれは 大きくなる気配が感じられない。



自分を見上げた杉田奈緒子の瞳。


やめてください!お願いします!




彼女が戦う瞳をした。



いま山下は奈緒子の瞳から伝わる強い力に恐怖さえ感じていた。




「くそ!奈緒子は俺の女だ!誰にも渡さねえ!佐野にもだ!あいつの口も胸も股もおれの物だ。あいつが!おれの物が汚されちまう!」





山下がどれだけ自らの手を動かしても握るペニスは斬首される反逆者のように首を垂れたままだった。


わかった。


山下は垂れ下がる物を引っ張りながら思った。



いっそ…


体育館裏でやってすぐにそのあと自殺するくらいに


徹底的に奈緒子を痛めつればいい。



そのあとプール西には行けないくらいに

とことん。とことん奈緒子にやってやればいい。



山下の口元が歪みだすと同時に自ら握るペニスは固く勃起をはじめていた。

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