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初恋。  作者: 冬鳥
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君を守るということ 2

「謝ってすむならそれでいいんじゃないのか」



「え…でもオレ…」



「悔しかったか。でもな、相手は八人いたんだろ?いくらお前でもその数は厳しいよ。しかも相手は年上の中学生で守らないといけない仲間もいたんだろ?。難しく考えるな。謝ってすむなら頭下げればいいんだ。お前のこれからの先は長い。迫り来る窮地は星の数くらいにあるもんだ。臨機応変に…その場その時に応じて適切な手段を講じるって意味だ。いまは学べ。対応策を思案し決断するってことをな。お前が向かっていかなかったことは負けとかじゃない。勝ち負けとは自分の心で判断することだ。今回のことによってお前は一つ学んだんだ」



「先輩…」



渡辺の噛み砕く言葉によって壮太の張りつめていた肩肘は緩んでいく。


渡辺は背後で管理人がドアの鍵を閉める動作を見送りながら両腕を上空に突き出して大きく伸びた。


そして管理人がすべての用事を済ませこちらに身体を向けると渡辺が愛想よく挨拶をする。

壮太と彰も従い頭を下げた。


「もう泣くな。相手が意気込んできたら透かしたりいなすのも空手では大切だろ。空手において大切なことは日々暮らしのなかでも大切なことになる。だから難しく考えるな。いいか壮太。彰も覚えておけよ」



「プライドによって冷静を見失うな。だ。空手はプライドをコントロールするのも学んでいく。的確に状況を判断するのは武道家の真髄だ」


渡辺はさあ解決と言わんばかりに、下に置いたカバンを手にした。


「あの…先輩!」



目元を強く拭った壮太が聞いた。



「俺達は強くなってますか!」


壮太が声を張り上げると、渡辺はクスクスと笑いだした。



「知らないのか?お前らはこの道場の期待の星なんだよ。空手続けろ。まあ正直なところ稽古に来るたびに強くなってるよ。心配すんな壮太。さっきの話しだがお前は守る人がいなかったら向かっていったろう。そして四人くらいはうずくませていたはずだ。俺はお前の真意はわかってるつもりだよ」


渡辺は再び大きな鞄を下に置くと、すぐ近くにある自動販売機へと歩いていく。


「よし。なんか飲むか?俺が奢るなんて珍しいことなんだぞ」


二人は涙をもう一度拭いてから駆け足で販売機に走っていった。


「おいおいちょっと待てよ。大橋はコーヒーなのか!」


「はい!美味しいです!」


マセガキだなと笑う渡辺に彰はみるみる顔を赤らめた。


「で、遠藤は?酒か?残念だな。ここにはないぞ」



俺はミルクティーっす。




「アハハ。見掛けとのギャップがいいなぁ。壺をおさえてるな。しかしお前達はほんと仲良しなんだな。ほれ」


渡辺は販売機から取り出した缶ジュースを二人の手元に投げてから、再びコインを入れスポーツドリンクを取り出した。



「自転車だろ?気をつけて帰るんだぞ。なんなら送っていこうか?俺の車なら自転車二台くらい簡単に乗せれる」



渡辺は白のハイエースを指差していた。




「い、いえ!俺達自転車で帰れます!」





「そうか。気をつけてな」




それからの二人は、稽古が終わってから渡辺と飲むジュースが楽しみになっていく。

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