表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白浜あい*短編集  作者: 白浜あい
2/5

箱庭



柔らかい布団の上で耳を澄ませれば、地を打つ雨の音が聞こえた。ああ、今日は雨なのだなと認識しながらも怠くなった体は起こせない。雨音が響く度に、腰が痛む気がした。


「ねぇアルバート朝だよ」


少年がふんわりと笑う。昨日、この少年に何度昇らされたかは分からない。あどけない顔をしている癖に、俺よりも年下なのに、彼は所謂おませさんであった。優しくいえば、だが。


「腰、痛い……」


「アルバートが可愛いのがいけないんだよ」


身長193、年齢32。少年からみれば随分といかついおっさんだろうに、何を言っているんだか。まったく、この子供は。


「クリストファー、おいで」


扉の前から動かない少年を呼び寄せて俺は、寝返りをうつ。雨の音が旋律を奏でる様に屋根や地を叩いている。少年はおずおずと、まるでおいたをして叱られた犬猫の様に近づいてきた。


「ほら、いいこだ」


手を伸ばせば、少年はビクンと体を震わせた。その姿に躊躇しながらも少年の頭を撫でる。

少年は、愛と言うものを知らないらしい。世界のことも親も。昨日偶然に訪れたこの場所だったが、この場所の異常さは一目瞭然たった。

所狭しに並べられたぬいくるみ、幼児向けの絵本や裾が汚れ放置された衣類。

年齢を知らない、愛を知らない、親を知らない、セックスだけ知っている少年。


「クリストファー、いつもこんなか?」


「なにが?」


「セックス」


俺が昨日経験した事は、普段少年が受けている事だ。それが何を意味するか少年は知らない、俺は知りたくないけれどわかってしまう。


「これがセックスって言うんだね、いつもこんな……でもここ最近ずっと来ない、食糧も届かなくかったし」


そう瞼を伏せて、少年は甘えるように俺に抱きつく。雨はまだ旋律を奏でてる。


「俺と、来るか?」


「連れてって、どこにでもついてくから」


捨てないで、とすがりつくかの様に少年はぎゅっと抱きつく。俺はそんな少年を殊更抱きしめて、そしてそっと額に口づけた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ