廃棄物系少女
シルハ=ブラックソディ 17歳 ♀ 7/7生
別名:究極の剣使い«シャイニングカードプレイヤー»
…昔のことは覚えていない。
ただ、私のことを死の淵から助けてくれた”この街でただ一人の”優しい人によると、私は3歳くらいのころ、親に捨てられたらしい。
私が生まれ育ったのがここ、「キノ」と呼ばれる街。俗に言うジャンク街、正式名は無い。
捨てられていた私を救った恩人、―名前は無かったが―は、「難病」にかかっていた。私のような捨てられた人たちとか、人生を捨てた人たちが集うこの場所に病気を直す術はない。他の街に行けば、それこそ隣の街にでも行けば「病気を直してくれる家」というのがあるらしいが、こんな街に住む人を信用する人は外には、いや、この街にもいない。この街に住む人は、誰もが独りで生きている。他人を信用することも、自分が信用されることもない。そんな街の人に、「恩人」は殺された。病気を直すことができないこの街で病人が生きるということは、他人に「直らない」病気が移ることになるからである。病気にかかった住人は、間も無く他の住人に殺される。この街の所謂セオリーのようなものである。
とうとう行き場のなくなった私は、必死で生きていた。もちろん当時幼かった私にお金を稼ぐ方法なんてものはない。一日三食の食事を提供する家なんてものも、私のような子供を手助けする家―他の地域では「スラム」と呼ばれるらしい、なんかもない。私は毎日ゴミ捨て場の裏に隠れ他の人に見つからないように、ぼろぼろの目立たない被りもの付きの布を被って人がいないことを確認しては捨てられたゴミを食べてなんとか生き延びた。たまにこの街を訪れるモノ好きに見つかり、死を覚悟した時もあった。…その人は来るたびに私にほんの気持ちほどの汁を分けてくれた。
そんな生活にも慣れてきたようなある日、ふと目が覚めた深夜に数百メートルほど先からたくさんの人の歓声が聞こえた。興味を持った私は危険を承知し音のする方へ進んだ。そういえばいつもあの汁をくれる人はこの道の方向に歩いて行っていたな、そう思いながら。
劣弱した筋肉でやっとの思いをして辿りついたここには「CASINO」ただそれだけの文字と、透明な板―後から聞いた話ではガラスと言うらしい、が張られたその奥だけが煌々と輝いていた。