第5話
あらすじ 1~4
わたしの名前は新田秋子。
お父さんの仕事の都合で、この「魔宮町」に来ました。
転校初日で、いざ! と思ったら、チビで変態の無法文太くんに縛られるわ、
変な先生達にびっくりさせられるわ--で、最悪なスタートになっちゃいました。
それだけじゃなく、理科室に目をつけられたって、クラスメイトのみんなに
変な目で見られるし…。
負けるもんか! がんばるもんね! って思っていたら…
白衣を着た長身の男性が教室に来て、
「ここにいたか。貴重な実験材料にして、この世の支配者よ」
ですって。
え、わたしの事なの!? 理科室って、この人の事なの!?
目的は…わたしをさらう事!?
でも、先生が、変な目で見られていた--と思っていたクラスメイト達が、
わたしを守ろうとしてくれた!
でも、でも、理科室は、変な力とミサイルを使って…みんな倒されてしまった!
チビで変態の無法くんも立ち向かったけど、ミサイルが!
わたし、どうなっちゃうの!!??
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「秋子や」
え、おばあちゃん?
いつのまにか、おばあちゃんがいる。
白髪で、顔にはしわがいっぱい。その顔がニッコリ。
いつも笑顔の優しくて大好きだったおばあちゃん。
おばあちゃんの笑顔を見ていると思い出す。
わたしは小さいころからドジで、失敗ばかりしていた。
周りに迷惑ばっかりかけていたから、自然と自分に篭るようになっちゃってた。
小学校の演劇コンクールでお話の役だった時、私が1ページ読み飛ばしてしまい、
劇を台無しにしてしまった。
クラスのみんなに村八分にされて、わたしは独りになってしまった。
学校の帰り道、クラスの男子に言われたっけ。
「この、疫病神!」
劇の主役で、しかも、ひそかに想っていた男の子だった。
もう、落ち込んで。落ち込んで落ち込んで。
「わたしは不幸の星の元に生まれたんだわ」
そう思ったら、もう涙がとまらなくなっちゃって。
泣きながら家につくと、おばあちゃんの笑顔。
「秋子や、お前には、いっつもおばあちゃんがついてるからね。安心おし」
この笑顔に、おばあちゃんに、わたしは救われた。
柔道もはじめたのも、クラスや、みんなの世界に飛び出していけたのも、みんな
おばあちゃんのおかげだった。
だから、去年、亡くなった時はショックだった。
もう、一週間くらい泣いたっけ。
その、おばあちゃんがいる。
そういえば、昨日、夢で会ったっけ。この町にくる電車の中で見た夢で。
「秋子や、お前には、いっつもおばあちゃんがついているからね」
「おばあちゃん!」
ん、天井。白いモルタルの天井。
「気がつきましたか?」
ん、誰? ん、わたし、寝てる。ん、足が動かない! 足首を縛られてる!
ん、胸が苦しい! ああっ、わたし、縛られてる! ロープで!!
「すこし、手間取りましたが、あなたにはそれだけの価値があります」
ん? 白衣に、腰までのびた艶やかな黒髪、黒ぶち眼鏡。
「理科室!」
「いかにも」
あ、そうか! すべて、すべて解った。
朝、わたしを縛った変態は…無法くんじゃなくって…
「あ、あんただったのね! 変態はっ!!」
「わたしの趣味はいたってノーマルのつもりですが」
わたし、白い実験台--ガス栓や水道がついてる--六人掛けの長机に寝てる。
「な、なによ! わ、わたしを解剖でもするつもりなのお!?」
黒ぶち眼鏡がわたしを見た。
「それはそれで、興味がありますが」
「な、なによっ!?」
理科室が、いきなり「礼」をした。
「わが”さまよえる理科室”へようこそ。歓迎しますぞ。支配者様」
は!?
「なに言ってんのよ! あんた、なんなの!? 支配者ってなによっ!」
そうだ、そういえば!
「人殺し! ペヤング先生を殺したわね! そうだ、クラスのみんなはっ!?」
チビズケ変態って言っちゃたけど…ゴメンっ!
「無法くんは!?」
は、そういえば、ミサイルで…
「あ、あんた! もしかして、無法くんまで殺したの? ペヤング先生みたいに!!」
は、理科室が呆然としている。なによっ!
「は、ペヤング先生、ですか? これは傑作ですね」
むっか~~~!! うあ~~、なんで、動けないのよ!!
「御安心ください。角…ペヤング先生は…いえ、この学校の先生が、あれくらいで
死ぬものですか。滅びはしましたが、死んではいないでしょう」
は?
「クラスの皆さんも、気を失っていましたが…無事ですよ」
あ、ああ。よかった。あ、でも…
「無法くんは…そこにいますよ」
「え?」
理科室が指さした先には…わたしの足元にある水道の蛇口がある。
銀色のステンレスに…鉄の鎖…ペンダント? 赤い…血みたいに赤いルビー
が金色の飾りにはめ込まれたペンダントがある。
「ど、どこにいるってのよ!」
「そのペンダントですよ」
は!?
「な、なんでよ!」
「彼も非常に興味深い。今まで訪れた世界にも、彼のような存在はなかったのです」
「だ、だからなんで、無法くんがペンダントなのよ!」
理科室がわたしを見た。え? なんだか…すこし悲しげな。
「ペヤング先生は死んではいないでしょう。ですが、無法くんは死んでいます」
ん、え? ええっ!?
「いや、かわらず、死んでいるまま…と、いうべきでしょうか」
む、無法くんが…死んでいる…まま?
「無法くんは、小学2年生の時に、あの暴走戦車通り魔事件--と言ってもご存じあ
りませんか--命を失ったのです。
彼の祖父は心霊研究で名を馳せた無法教授でしてね。
事件への、怒りと、悲しみと、復讐をこめて、あのペンダントに魂を移したのです。
それだけではありません。
ペンダントを核に霊物質を集めて、現世に実体化できるようにしたのです。
人間は、様々な能力をもっています。
足の速い人、力のつよい人、頭のいい人。それらの能力を秘めた魂…霊物質の
集合体…それが無法文太なのです。
なんという素晴らしい存在でしょうか! なんという超常的な存在でしょうか!
彼は霊体サイボーグともいえる存在なのです!
古代からの霊魂や怨霊うずまく、この魔宮町においては、彼はヌシとでも言える
存在なのですよ!」
え、な、なに? なんですって?
「な、なに? そ、そんな」
霊体サイボーグ? ペンダントに無法くんの魂?
「じゃ、なんで? なんで、今はペンダントなの? 無法くんの姿じゃないの?」
そ、そんな。無法くんを…わたし、散々…
「普段の彼を見ていると、小学2年生当時の姿がもっとも安定しているようでした」
チビだの、かわいいだの、変態だのって…
「彼はチビと言われると、どうも後先考えずに行動するようでしてね」
チビって、チビって言った! わたし!
「身長を変えるほど、霊物質をつかえば、基本能力に衰えがでるでしょうに」
そ、それで、そんな状態で…無法くんは!!
「そんな状態でミサイルを受ければ、ああもなりますね。」
わたしを、わたしを守ってくれたんだ!!
「あああああああ!! 無法くんっ! ごめんなさいい!!」
目頭があつい。涙がこみあげてくる!
なさけない! 自分がなさけない!! ごめんなさい!!
「まあ、彼がこうなったのは、あなたの能力の影響でしょうけれども。支配者のごと
き能力のね」
!!
「なによ! なんなのよ! わたしの能力って!?」
「あなたは不幸の星の元に生まれたのです」