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追放されたならウチくる?  作者: 明日ぱらがす
2/2

2話

「すまないね、ユリウス。今回の探索も実入りがなくて。」

「いや、いいんだよ、オグリオン。今回は前回よりも稼ぎもあったし。」

 大通りをユリウスとオグリオンと呼ばれた長い黒髪の男が並んで歩いている。

「そういってくれるのはありがたいけども・・・次回はもう少し重いものを持っていくか・・・」

「軽すぎたのかどうかもまだ・・・」

「どうしたんだ、ユリウス?」

 不自然なところで会話を切って、薄暗い路地の方を見つめている。

「いや、声が聞こえる。」

「声なんて何も・・・おい、ユリウス!」

 路地へ一人駆け出してしまうユリウス。少し迷った後、オグリオンも追いかけることに決めた。

 ごちゃごちゃした路地を進むと、その奥でうずくまった男とそれを足蹴にする二人の男がいた。

「おい!お前よぉ!いつになったらまともに仕事が出来んだよ!あぁ!?」

 怒号とうめき声が聞こえてくる。

「なあ、ユリウス。変に因縁つけられちゃたまらないよ。さ、帰ろう。」

 ユリウスは忠告が耳に入っていないかのように男の方に歩いていく。

「あ?何見てんだ、お前。」

 男とユリウスの目が合う。

「やめてやれ。そいつが死んじまう。」

「お前、知ってるぞ。拾い屋だろ。こいつも拾って世話してやれよ!」

 うずくまっている男の首を掴んで持ち上げる。薄暗い路地でもわかる大きく立った耳。その男はコボルトだった。

 力なく舌を口から垂らしたまま動かない。

 男たちの笑いが路地裏にひびく。

「そいつが死んじまう。離してやってくれ。」

 ユリウスの静かな声も、路地裏ではうるさいくらいに響いた。

「チッ、面白くねえな。」

 大股で間合いを詰めてくる。

「俺はな、その日暮らしの癖にそうやって偉ぶってる冒険者が大っ嫌いなんだよ!」

 ユリウスの胸倉を掴もうと手を伸ばした瞬間・・・のばされた手を掴み、引き込むと、首に肘をくらわせる。

 男はあっという間にユリウスの足元に伸びてしまった。

「ひっ、おっ、覚えてろよ!ユリウス!」

 もう一人の男は絵にかいたような捨て台詞を吐き、相棒とコボルトを置いたまま逃げていく。

「・・・正当防衛、かな?」

 事が済んでから木箱の裏に隠れていたオグリオンが顔を出す。

「悪いな、巻き込んで。」

「いや、いいよ。僕を拾ってくれた恩だ。喧嘩の証言くらいならするよ。」

「そうか。じゃあ迷惑ついでに・・・」

 コボルトの方に歩いていく。

「お、おい?まさか?」

「こいつを連れて帰るの、手伝ってくれ。」


「なあ、ユリウス。まさかとは思うけど、最強の助っ人ってそいつの事じゃないよな?」

「ああ。言ったろ?オグリオン。今回こそは大丈夫。絶対にジュエルアップルをいただくぞ!」

 あの路地裏の件から二日後、迷宮の前でユリウス一行が話している。

 今回潜る迷宮はオーヴン坑道。天然の迷宮と坑道が繋がりできた巨大な迷宮で、内部は広大な野原や森が広がっている。

 ユリウスと、リューナ、オグリオン。そして、茶色のコボルト。コボルトはオグリオンの匂いを物色しているようだ。

 彼等の目的はジュエルアップルという光り輝く木の実だ。目が飛び出るほど高値で取引されている。

「このコボルトがそんな戦闘力を有しているとは思えないけどね。」

「コボルトじゃない、モモって名前があるんだ。」

 コボルト、もといモモもふんふんと鼻を鳴らしながらうなずく。

「大体、こいつもこいつで重傷者だろう。いきなり迷宮探索なんて・・・」

「まあまあ。今回はジュエルアップルを手に入れたらすぐに退散する予定だから。それに、君とビスタが回復魔法をかけてくれたんだから大丈夫さ。ね?モモ。」

「あ、あの~?」

 リューナがおずおずと手を挙げる。

「ジュエルアップルの話は聞いたことはあるんですけど、どうしてそんなに高価なんですか?実っている大樹はこの迷宮のどこからでも視認できますし。」

「あぁ、そっか。リューナはまだ知らないのか。まあ、向かいながら説明をしよう。」

 坑道の中へ足を踏み入れると、迷宮の中には青空が広がっていた。暖かなそよ風が気持ちいい。

 広大な自然の中央に鎮座する巨大樹を指差してユリウスが説明する。

「その大樹に少し厄介な生物が住み着いているんだよ。フォレストリスト。正式名称をレッサーサイクロプスといい、2メートルくらいの単眼の魔物だ。群れで住み着いていて、ジュエルアップルに連れられてやってくる他の生物を狩って生きている。ジュエルアップルも彼らに世話されることで大樹に成長したんだ。」

「共生関係・・・ってわけですね。」

「そゆこと。だからこその超高価値ってわけだね。最初は僕の血継魔法を使って採取しようとしたんだけど、中々難しくて。」

 オグリオンが苦い顔で続ける。

「ど、どんな魔法なんですか?」

 リューナは少しの親近感を胸に質問する。

「僕が持っている物体を、僕の視界にある同質量の物体と入れ替えられる。同じ質量であれば銅の塊と金の塊でも入れ替えられる。」

「すごいじゃないですか!じゃあ、普通のリンゴとジュエルアップルを入れ替えれば・・・」

「できないんだ。」

「えっ?」

「できない。この魔法の条件、同質量の判定が狭いんだ。」

 加入当時からユリウスの提案でリンゴや鉄球をもってたびたびこの迷宮に来ていた。が、入れ替えが成功したことは今までの一度もない。ジュエルアップルの正確な重さが誰もわからないこともあいまって、ジュエルアップルの採取は頓挫していたところだった。

 魔物と戦うユリウスとモモを見ながらオグリオンは説明をする。

「とにかく、金が要るんだよ。だから、そろそろ成功させないと。僕の力で進める範囲では、魔物の部位を売っても大した金にはならない。」

「お金・・・ですか。」

「まあ、ユリウスのパーティメンバーなんだ。お互い訳アリだろう?深堀りは厳禁ってやつさ。あいつが拾ってきたコボルトもそう・・・」

 意地の悪い微笑みを見せた瞬間、オグリオンのローブが大きくなる。

「ユリウス!!」

 大きいテントのように広がったローブを取り払って、ユリウスのもとに駆け寄る。

「ああ、すまないすまない。こいつの血継魔法のせいさ。」

 見ると、モモが、大きくなっている。比喩ではなく、最初の2倍ほどだろうか。見上げるほど大きい。

「ビスタ曰く、コボルトの毛には魔力が宿りやすいとかで、体毛が付着した物体まで巨大化させちまうらしい。」

 巨大化した自分の鎧を拾いながらユリウスが言う。

 確かに迷宮探索前に触られたローブにはモモの茶色い体毛がびっしりと付着していた。

「やれやれ・・・戻るんだろうね?このローブ、お気に入りなんだ。」

「ああ。モモが元のサイズに戻ればちゃんと元通りだ。」

 モモが縮むと同時に巨大化した衣服が戻っていく。

「さ、お目当ての物を取りに行くぞ!」

 ユリウス一行は迷宮の奥地に向かっていった。


 森に入り、ユリウス一行は大樹の近くまで探索を進める。大樹に近付くにつれて他の魔物は増えて行く。しかし、一定の範囲の中に入ると他の生物の気配がぱたりとやんだ。

 ここからでもジュエルアップルの炎のような輝きが見える。

「はあ、この静けさはやはり慣れないな。」

 オグリオンが呟く。小さい声なのに、周りが無音のためいやにはっきり聞こえる。

「みんな気をつけろ、フォレストリストはもう俺たちを認識している。」

 気が付くと、モモはずっと低い声で唸っている。

「さあ、ここまで近づけば十分だろう。どうだ?オグリオン。」

 オグリオンは懐からおもりを取り出し、魔力を込める。

 おもりを何回か取り換えるが・・・

「いや、だめだ。やはり今回も入れ替えられないみたいだ。」

 自嘲気味に笑い、ユリウスたちを振り返る。

「オグリオンさん・・・」

「いや、ここまでは想定内だ。ここからが秘策なのさ。」

 そう言ってユリウスは櫛を取り出す。そして櫛をモモにかけ、毛をごっそりと採取すると、おもりにまぶしつけた。

「おい、ユリウス、まさか・・・」

「ああ。モモ、やってくれ。」

 ユリウスの声に頷いて、体が大きくなっていく。それに合わせて、おもりも大きく、重くなる。

「オグリオン!やれ!」

 両手に魔力を込める。

 しかし、入れ替えは起きない。重くなるおもりを抱えるオグリオンの額に脂汗が浮かぶ。

 モモはどんどん大きくなっていく。身長が6メートルを超えた時、それは起きた。一瞬、赤い光で視界が埋まる。

 ジュエルアップルが手元にあった。

 呆然とするユリウス一行たち。

「やった・・・やったぞ、ユリウス!!」

 それから一瞬遅れて、樹上が騒がしくなる。そのざわめきは段々波及し、こちらに近付いてきていた。

「まずい、フォレストリスㇳだ!モモ、逃げるぞ!!」

 モモに抱え込まれ、迷宮の出口を目指す。

 石や木の枝が後ろから飛んでくる。オグリオンはジュエルアップルを必死に抱きかかえて目を閉じていた。

 追いかけてくる気配は、森を抜けると同時に無くなった。

 息切れしながらモモは元のサイズに縮んでいく。

 オグリオンも座り込んで胸に抱えたジュエルアップルを見て、安堵の表情を浮かべる。

「言ったろ、オグリオン。大丈夫、絶対って。」

 ユリウスは笑顔でそう言う。

「・・・きみと会ったら命がいくつあっても足りないよ。というか・・・」

 ジュエルアップルを白い布に包みながら話を続ける。

「こんなに重かったのか。どおりで普通のリンゴなんかでは入れ替えが起きないわけだ。」

「ああ。あのペースで重量を増やしていったら入れ替え成功は何年後になっていたか。それもこれも・・・」

 モモの方を向き直る。

「新メンバーのモモのおかげだな!」

 モモは軽く首をかしげる。

 その純粋な目にオグリオンは思わず目を逸らした。

「う・・・まあ、今回ばかりは・・・そういうことになるのかな。」

 一人楽しそうに笑うユリウス。オグリオンの顔にも笑みが浮かんでいた。

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