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あなたの魂浄霊します 横浜関内特級ファイルI  作者: もちこ
【プレゼントに御用心 生霊の企み】
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ファイル2 櫻井しおり:後編

ネガティブな影響を及ぼすのは亡くなった者たちばかりではない。

時に、生きている方からの強烈なネガティブのエネルギーが紐付けられている時がある。

古くは、生霊、念、呪詛、邪眼などとも言われた。

現代では「サイキックアタック」と呼ぶ方が通りやすいだろう。

それを放っている本人が無自覚なケースも多い。

「たまピカセラピー」ではそれらを総称して「生者からのネガティブのエネルギーのつながり」と呼ぶ。

そのつながりを断ち切り、そこに溜まっているネガティブのエネルギーを全て抹消する。


これらも、正式な修練を積んだ、専門家が、正式な場でのみ執り行う儀のため、一般の方は絶対に真似をしないでください。模倣防止のため、所作などは全て割愛させて頂きます。



しおりちゃんは、少し上ずった声で、「お願いします。」と、横になった。


ほとんどの場合、生き霊がつく原因は本人にはない。

他者からの、嫉妬、我欲(色欲)、敵意、マウント、などの感情を向けられることが原因となることがあるが、実は放っている本人も無自覚なケースが多い。


「これから、ネガティブなエネルギーのつながりの断ち切りを行います。」


俺は朗々と宣言し、集中する。

眼を閉じしっかり祈念すると、しおりちゃんの身体に、「見えない仕掛け」があるのがわかる。両手を縄で拘束され、左足をなにかでぐるぐる巻きにされている。お腹の真ん中にも管のようなものを通されている。一つ一つの仕掛けを断ち切り、全てのネガティブなつながりを断った。

 無事に終わった事を伝えるとしおりちゃんは、手首をぶらぶらさせ、左足も同様に動かした。身体が軽くなったことを確認すると、簡易ベッドから半身を起こした。


「すごいですね。なんか、すごいです。すみません、他に言葉が見つからなくて。」

前髪をかき分け、辺りを見回す。


「なんか、明るいです。さっきと全然違う。」

自然と顔がほころぶ。喉が乾いたようなので、一旦休憩に入った。


 少し休むと、魂をピカピカにする「たまピカ」の儀を行った。

好子さんによると、しおりちゃんの魂は、真っ白で所々金に輝く歴史の長い魂だという。過去世は、シャーマン、審神者、巫女など御神事を司る事が多かったそうだ。しおりちゃんの先祖もまたそのような人が多く、昔は神事や祭事を行う家系だったようだ。


「今回、光の世界へ上がった魂の数。その数52万3241体。かなり多いですね。過去世やご先祖様、御守護の神様のお力が影響したのでしょう。これにてセラピーを終了いたします。」


好子さんはそう締めくくると、しおりちゃんに、肘掛け椅子の方に移動してもらった。

少しふらついたようだが、椅子に座るとすぐ、ほーっと息を吐いた。


「気分はどう?」

好子さんがお茶を入れながら、聞くと、


「大丈夫です。もうすごくスッキリして身体が軽いです。さっき移動してくる時、重力が減ったのかと思うくらい軽かったです。それに明るいです!景色が本当に全然違うんです。」

興奮しているようだが、瞳はらんらんと明るい。


「よかった。今日は一気に色んなことがあったから、びっくりしたよね。」


「本当にそうです。もう、なんでしたっけ?あの男の人。ほんと迷惑!」


「ほんとよね。執念深い男ってほんとに困るわ」


「成仏する前に一言文句言ってやりたかったです。」

しおりちゃんは、ゲラゲラ笑いながら、因縁霊の話をするが、他にも気になっていることがあった。


「お父さんがもう成仏してるってわかって、ホッとしたんです。仕事でどうしても乗り越えないといけない壁があって。ずっと心の中で引っかかっていたお父さんのこと、ケジメをつけようと思ってたんです。

もしかしたら、成仏しないで、今もいるのかなって思ってたんですけど、もうあっちに逝ってくれてたみたいで。よかったです。」


しおりちゃんは、カップを両手で優しくつかみ、前後に揺らす。

ゆらゆら揺れる水面が光った。


「あ、でも生き霊びっくりしました。あれ誰だったんですか?」

俺の方に向き直った。


「生き霊の特定はしないんです。特定してしまうと、今度はしおりちゃんが、その人に念を向けてしまうかもしれない。念は、無意識のうちに放ってしまう事があるから、あえて特定はしないんです。」


「そっか。まぁ確かにそうですね。知ると気になってしまうから。でも、思い当たる事があるんです。」


しおりちゃんは、実は、と話し出した。

「ヒーリングのグループワークで一緒になった、高橋さんから他の講座を受講しないか?って誘われたんです。高橋さんの紹介で龍のエネルギーを使う(ドラゴンヒーリング)っていうのに行ったんです。その講座自体は楽しかったんですけど、そこで仲良くなった人から、ヒーリングの仕事ができるから、一緒にやろうよって誘われたんです。」

しおりちゃんは、堰を切ったように話し出した。


「最初は面白そうだなーと思って、その人と一緒にワークしたり、ヒーリングしてたんですけど、その人がだんだん、変わってきたんです。命令口調になって、私に勾玉とか石とかか売ろうとしてきたんです。嫌だなーと思ってたら、突然龍の絵をプレゼントされたんです。」


しおりちゃんは、ごくっとカップのお茶を飲むとまた話し出した。


「確かにすごく素敵な龍の絵なんです。でも、なんか違和感があるんです。それで、その後その人と色々あって、もう会ってないんです。結局その講座にも行かなくなりました」

話してスッキリしたのか、ほーっと息を吐いた。


「それ、よくないね。なんでもらっちゃったの?」

俺が聞くと、「なんか断れなかったんです。」と首を(かし)げた。


「今でもその絵は家にあるの?」

好子さんも、怪訝な顔をして聞く。


「はい。でも今日帰ったら捨てます。もしかして、原因ってコレなんですかね?」

 しおりちゃんは、他にも気になる事があるのか、何かを思い出そうと、机の上をトントン人差し指で叩きだした。


「特定はしないから、わからないけど、プレゼントされて嫌な気分になる時点でそれはもう、もらっちゃダメだよ。」

俺がそう言うと、やっぱりそうですよね。と、うなづいた。


「こういうの捨てる時って何か作法とかいるんですか?」


「特にこうしろとかは無いかなぁ。もうネガティブな繋がりは全部切ったから捨て方は気にしなくて良いよ。」


「そうですか。」

しおりちゃんがまだ何か考えているようだったので、察したのか、好子さんが割って入る。


「しおりちゃん、家に帰ってもまだ何か変な事があったら、いつでも相談して。もし、家の中に仕掛けがされていたり、地縛霊がいる時は直接お家まで行ってみないとわからないから。」


「あ、そうなんですね。そっか、わかりました。帰ってから様子見てみます。」

白いスカートの上に両手を置くと、しおりちゃんは、フーッとまた長い息をはいた。


「うん、それとね。ちょっと大事な話。しおりちゃん、エネルギーに敏感だから受けやすいと思うのね。良いこともそうだけど、悪いことも体にすぐ反応が出てしまう。」


好子さんは、丸いすをしおりちゃんに近づけ向き直った。


「今、魂がピカピカになったから、良いものも寄ってくるんだけど、悪いものも寄ってこようとするの。暗いところで明るい光があったら、虫が飛んでくるでしょ?あんな感じ。だからしっかり、エネルギーのバリアを張って悪いものが入らないようにする事が大事なの。」


「え!それどうするんですか?」


「今からそれを教えるから、しっかり覚えてね。」

好子さんはそう言うと、腕を大きく回した。


「自分の体の周りに卵型のオーラを作ることをイメージして。腕を大きく回しながらこう言うの。

「シールドアップ!」」

パン!

柏手を最後に一度打つ。


「簡単でしょ。これでいいのよ。」


「こんなんで良いんですね!」


「しおりちゃんは、朝10回、夜寝る前に10回、御守護の神様に挨拶してから必ずやること。」


「わかりました。」

しおりちゃんは、何度か練習して御守護の神様との繋がりかたも覚えてくれた。


「魂がピカピカになって、やっと本来の生き方ができるようになったの。次元が上昇したからこれからは、波動の低い人や物事はよってこなくなる。周波数って言うとわかりやすいかな?因縁霊の周波数はすごく低いの。だから因縁霊がたくさんいると、周波数の低い物事、人を呼び寄せてしまうのね。妖がついたのは、その低い周波数に引き寄せられてしまったようなの。お墓参りに行った時ついてきたのね。」


好子さんはそう言うと、しおりちゃんの手を握った。


「御守護の神様に繋がって、とても高い周波数が降り注いているから、これからは周波数の高いことが起こるわ。素敵な人に出会えたり、新しい仕事や、思っても見なかった奇跡が起こるの。楽しみにしてて。」

好子さんは、「もう大丈夫だから。」と言うと微笑んだ。

しおりちゃんは、涙声で「はい。」と呟いた。瞳はキラキラと輝いていた。


 しおりちゃんを駅まで送り、俺はまたオフィスへ戻る。街路樹の桜の花がほころんでいる。ようやく暖かくなってきたと、少し伸びをした。

 最近は龍がブームなのか、やたらと色んなところで「龍」を見る。龍使いやら、龍神なんとかやら色々だ。一体いつから、人間にとって都合の良いものになったんだ。全てのヒーラーが偽物だと言うことはないが、しおりちゃんみたいに、信心深い女の子を騙すような奴がいることも事実だ。


 確かに守ろうとしてくれる龍もいるんだろう。昨日テレビで九頭龍神社が映ったとき、アラーム通知でしおりちゃんのピンチを教えてくれた。一昨年参拝したから、もしかしたらその時のご縁で知らせてくれたのかもしれない。

 龍に限ったことでは無いが、見えない世界には、守護をしてくれる存在もいれば、足を引っ張ろうとするもの、(たぶら)かすものもいる。大抵そうした奴らは、神様のふりをしてやってくる。


 やれやれと、頭を掻きながら歩いていると、スマホに通知があった。

「今日はありがとうございました!また相談するかもしれませんが、その時は宜しくお願いします。」

しおりちゃんからだった。


たぶん、いつか「こっち側」になるんだろうな、この子。

俺はなんとなく、またしおりちゃんが来ることを予感した。

今回登場する、「シールドアップ」はとても有効です。

人混みが苦手な方、霊的な事象に敏感な方は、外出前などぜひ、行ってください。

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