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あなたの魂浄霊します 横浜関内特級ファイルI  作者: もちこ
【霊能者がやってきた 時を超えた再会】
16/25

ファイル5 檜山咲:前編

 「すみません、ありがとうございます。」

店を出てすぐのところに女の子はいた。ショートカットの耳から、大きな貝のような飾りをぶら下げている。鍵には小さな鈴と、アニメのキャラクターのキーホルダーがついている。渡して、すぐ店に戻ろうとしたが、女の子はしげしげと俺の顔を見ると呟いた。


「あのー、水はもうちょっと、こまめに飲んだ方がええみたいです。」


「え?」


「え?あ、すみません、じゃあ、ありがとうございました!」

勢いよくおじぎをすると、走り去っていった。


 なんだったんだ、今のは。

店に戻り、俺は少しぬるくなった丼ぶりから、ラーメンをすすった。


次の日の朝7時。

好子さんから成り変わりの特訓が始まった。まず安全なところから始めようと、オフィス近くの横濱厳島神社にやってきた。早朝の境内は誰もいない。銭洗をしに境内の池まで参拝客が来る事があるが、今日は巳の日ではないので、俺と好子さんだけだ。ザッザッと、玉砂利の音が心地よく響く。


 御本殿の前まで来ると、お賽銭をして、普段通りに二礼二拍手をする。その後は御祭神に挨拶をして、集中する。この前俺は、映像が見えた。今日は言葉、映像、両方がキャッチできるように集中する。しばらくは何も感じなかったが、なんとなく、白っぽい着物を着た女性がニコニコ笑っているのが頭の中でみえてきた。

 ご守護の神様を通してコンタクトをとると、「よく来た。ご苦労さま」と、日頃の労いのような言葉を聞いた。横を見ると、好子さんも同じく感じたようで、「祝福をいただきましたね。良かったです。」と、手を合わせて一礼した。


「山本さんは、あと身体の手入れもした方がいいね。」

ドトールコーヒーに入り、モーニングセットのコーヒーを飲みながら、好子さんは呟いた。

「なに?滝行とか?」

 違う違うと、好子さんは首をふる。

「もっと日常でできること。※グラウディングもそうだし、あとお水をもう少しこまめに飲んだ方がいいね。山本さん結構がぶ飲みしちゃうでしょ?朝起きてから11時までに1リットル。すするようにこまめにね。」


「いま、なんて言った?」


「え?こまめに。って」


 突然動かなくなった俺をみて、好子さんは、どうしたの?と、聞いた。

 俺は、昨日ラーメン屋で起こった出来事を話した。好子さんは興味深げに聞くと、何かに集中するように沈黙した。


「きっと、その子は山本さんの御守護の神様のメッセージを受信したんだろうね。凄くチカラのある子だったんだと思う。」


「そんな事ってあるの?」


「滅多にないよ。でも何かご縁があるかもね。その子と山本さん。」

好子さんは、カップのスプーンをくるくると回した。


「私ね、最初山本さんが、一緒に活動する事になったって聞いた時、(やっぱりな)って思ったの。

山本さんの過去世が、修験道の山伏とか、僧侶ばっかりだったじゃない?だから、こっち側になるんじゃないか?って」


「うん。そういえば、そうだったね」

俺は手元の紙ナプキンで指についたパンのくずを拭った。


「過去世がどこまで現世に影響するかわからないけど、過去、繋がりのあった人が、現世でまた出会ってもおかしくないからね。」

 好子さんは俺の後ろの壁をぼーっと見ていたが、一口水を飲むと、「たぶん、またその子に会うんじゃないかな?」と、呟いだ。


 店を出て、オフィスに戻り、ふたたび練習をする。御守護の神様に繋がり、簡単な質問をするのだが、

いつもより鮮明な映像と言葉が送られるように集中する。かなりエネルギーを消耗する。途中、休憩を入れながら、何度も繰り返した。


 2時を過ぎた頃、好子さんのスマホに着信があった。

「あら!すみません、すぐに戻ります!はい、3時までには!はい。失礼します。」

電話を切ると、好子さんは、いつものムーミンのバッグから、手帳を取り出し、あー!と小さく叫んだ。


「どうしたの?」

「すっかり忘れてた。今日マンションの排水溝の掃除の日だった。業者の人待っててくれるみたい。山本さんごめんね。私帰らなきゃ。」

 そう言うと好子さんは、パタパタと帰る準備をしてオフィスを出て行こうとしたが、またしまった!と振り返った。

「山本さん、さっき頼んだUber悪いけど1人で食べてて!」

実はさっき、ほか弁の出前をしたところだった。

俺が「うん。」と、言うよりも早く、エレベーターに駆け込んで行った。


 出前が来るまで、1人でご守護の神様に繋がり、練習することになった。

なにを聞こうか?そうだ、彼女にまた会えるのか聞いてみよう。


「あのラーメン屋で出会った子とまた会えますか?」

意識を集中する。


 アッハッハと、低い声で楽しそうな笑い声が脳内に聞こえてきた。だがYESともNoとも反応が無い。これは、どういう事だ?考えているとオフィスの呼び鈴がなった。


「ウーバーです。お待たせしました。」

 思ったよりも早い。はーいと、モニターで返事をし弁当を受け取りに出た。


「お待たせしました。」

珍しく女の子の配達員だ。耳にやたらと大きな貝がぶら下がっている。

ん?


「あ!」


俺の声に驚いたのか、女の子は少し後ずさった。


間違いない。昨日の子だ。

俺がまじまじと見るものだから、彼女も思い出したようだ。


「あ、昨日の方ですよね?」

「うん」


しばらく沈黙が流れた。

※グラウディング

地面に裸足で立ったり歩いたりすることを通して、心や身体を癒していく手法


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