忌み子
この村の名前はエレカ。
ルドナス大陸の南側に位置し、ガラナ平原を超えた先にある小さな村だ。
ここには村民全員から嫌われている一家があった。
「あんたらいつになったら出ていくんだい!?」
「この村から早く立ち去れ!」
「お前らがいると迷惑なんだよ!」
こんな言葉が日光が出ている間ずっと飛んでくる。
よくもまあ飽きないものだ。
そして何故こんな事を言ってくるのかというと、僕が原因である。
僕が、生まれたせいである。
僕ら一家は墓守の一族なのだが、母さんは村の中でも美人だと評判の人だった。
もちろんそんな人が産んだ赤ん坊の容姿はとても美形で可愛らしかったが、その赤ん坊の耳は……
ツンと尖っていた。
忌み子である。
そしてこの赤ん坊が僕である。
村の人達は次々に
「殺せぇ! 殺せぇぇ!」
と叫んで俺を殺そうとしたという。
母さんはその時の村人達に忌み子を産んだ女とされ、燃やされた。
父さんは村人と戦い、なんとか僕を生かしてくれた。
村人達も父さんを倒すのは無理だと思い、戦うのをやめた。
そうして僕は生き延びた。
だが、そこからも地獄であった。
ことあるごとに僕を殺そうとしてくる村人達を退かなければならなかった。
そんな生活が続いて15年経った。
「父さん」
「ん? どうした?」
「今日も行ってくる」
「……そうか、気を付けろよ」
「うん」
僕には一つの日課がある。
この村の近くにはルナシャというダンジョンがあるのだが、このダンジョンにはよく冒険者が来る。
そしてよくそのダンジョンで死ぬ。
僕はそんな冒険者達の墓を作っている。
墓石は、僕が生まれた時から所有しているスキルである、【墓作り】というスキルを使って作り出す。
この世界では、人は生まれた時に一つスキルを与えられるのだが、僕のは正直言ってなんとも言えないスキルだった。
ただ僕は墓守の一族だったので、意外と相性はよかった。
しかし僕らに墓を作る事を頼む人はいない。
そこからこの日課が生まれた。
墓守の威厳をなくさない為にも死んでしまった冒険者達に対して墓を作るのだ。
そんな訳で今日も名も知らぬ冒険者達の為の墓石を作る。
「【墓作り】!」
ドサッと音を立てて床に出現する。
この魔法は何故かダンジョン内では使えないので、家で作るしかないのだ。
「よーし、じゃあ少し眠った後に行くか」
今はもう少しで夕暮れになる時間帯だ。
なので少し寝て、夜に眠くならない様にする。
寝て、夜が来た。
「……行くか」
作っておいた墓石に紺色の布を巻く。
墓石を背負って向かうのだが、角が背中に当たると痛いからだ。
布の端を脇の下に通して背負う。
そして部屋の隅にあるシャベルを持つ。
母の使っていたシャベルだ。
それを片手に家を出て、ルナシャへと向かった。
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