表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/121

064 双子の占い

「えっ? なんて言った? さっさ……と……すん?」

 名出さんが首をかしげている。


「すぐに済むからと言いたいのだろう」

 どこぞの方言か分からないが、言いたいことは伝わった。


 女の子たちの息の揃った行動。双子だからか、シンクロ率がやたらと高い。

 それはいいとして、ひとつ気になったことがある。


 あの清秋の慌てようだ。

 双子は俺たちに借りを返したいようだが、何かマズいことでもあるのか。


 清秋は、俺に見られていることに気づいたのか、「しかたありませんね」と一歩引く姿勢をみせた。

 やれやれといった表情で、双子を見る。


「なに、客じゃなーき、ちょい見りゃいい」

「そや」


「「――いくで!」」


 双子は互いの肩に手を置き、ゆっくりと額を合わせた。

 名出さんは「えっ、何をしてるの?」と戸惑っている。


 俺も何がはじまるのか、まったく分からない。

 そのまま、ゆっくりと十を数えるくらいの時間が流れた。


 双子はゆっくりと額を離し、名出さんに向き直った。


「なかなか酒が好きでんが、あまりにも飲みすぎてん」

「んだ。で、死んじまったか」


「えっ? ええっ!?」

 不吉な言葉だ。


「どういうことだ?」

 俺が双子に問うと、「そりゃ、おめ……」と語り出した口を清秋が押さえた。


「これは、ちょっとした占いです。いま、この子たちはあなたの人生、最大の転換を占いました」

「それがお酒ってこと?」


「親しい人でお酒が好きな方はいらっしゃいますか?」

「えっと……お父さんがそうだけど」


「でしたら、その方に飲み過ぎに注意するよう、お伝えください。あなたの人生の転換は、それによって起こされます」

「はい? えっと……ええっと……はい」


 名出さんは混乱しているが、『夢』の知識と照らし合わせると、言いたいことが分かった。

 名出さんのお父さんは、『リミス』の社名をバーの女の子の源氏名から採った。


 好みの女の子がいたので、通い詰めたと聞いている。酒好きは本当だろう。

 付き合いで飲むこともあれば、家でも飲んでいるのかもしれない。


 業績が傾いたときに、酒に逃げた可能性もある。

 人は長年の習慣を中々変えられないものだ。何十年も続けた飲酒生活。


 体調が思わしくないときでも、健康診断の数値が悪くなっても、酒を断てなかったに違いない。

 あと何十年か先、リミスの社長は酒が原因で死ぬ。そして名出さんは、会社を継ぐことになる。


 名出さんの占いに出た人生の転換は、意図せずして就任した社長という肩書きのことだろう。

 従業員と家族の運命を背負うことになったのだ。


 そこで名出さんは、苦労して会社を2030年まで持たせる。

 その頃にはもういまの面影な残っていないほど老けてしまう。


「つぎは、おんがいじゃ」

 双子が俺を見た。そして、名出さんのときと同じように額を合わせる。


 俺はそれを黙って見つめた。

 おそらくこの双子は、菱前老人が言っていた九星会の預言の巫女ではなかろうか。


 年齢が違っているので、後継者かもしれない。

 双子は額を突き合わせたまま、微動だにしない。


 二十を数えた頃、ようやくこちらを向いた。


「ふたじゅうはしになってしもて、よう見えんねぇ」

「こんなことは、はじめてだぞ」


「ん?」

 なんだそれは。


蒼空(そら)様、蒼海(うみ)様、それは一体……?」

 清秋の顔が困惑に歪んでいる。


「ひとつは順調とうらぎ。もうひとつは、そんしたにひそめて、ようわからん」

「まるで、ふたりの人生があるようじゃ」


「つまり、見通せなかったと?」

 双子は頷き、清秋は顔を驚愕に染める。


「場を整えて、時を選んだら、どうですか?」

 双子は首を傾げた。よく分からないらしい。


「……それはまた、不思議なことですね。先が見通せなかったこともそうですが、二重写しですか……」

 清秋は、俺の方を興味深げに眺めはじめた。


 できるだけ目立ちたくないのだが、清秋は何をそんな顔を俺に向ける。

 俺のどこに興味を持ったのか。


「……いろいろ気にかかることはありますが、占いの結果を伝えます。あなたの人生で順調であるとき……あなたの中のゴールが見えたときに、裏切りに遭います」


「うっ!!」

 不覚にも声を出してしまった。


 それは『夢』の中での話と同じ。

 北米支社の支社長が見えた矢先、俺は会社に裏切られた。


 冤罪を着せられ、収監されることになった。

 それを知っているだけに、いまのがただの占いとは思えない。


「ただし、そうならない可能性もあります。まるで二人分の人生があるようだと言っていますので、まったく別の人生を歩む可能性もあるでしょう。そのどちらも占ってしまったがゆえに、ハッキリと分からなくなったのだと推測します」


「…………」

 清秋の説明は、核心をついているようで、ズレている気もする。


 ただ、一つ言えることは、この目の前の双子の力は本物だということだ。


 昔の俺ならば、「オカルトなど、あるわけもない」と一顧だにしなかっただろうが、繰り返しの人生を送っている身からすれば、オカルト要素は否定しきれない。


 菱前老人の時代にもいたという預言の巫女。

 このような能力を持っているなら、権力者は頼りにするはずだ。


 能力が遺伝するのか、技術として継承しているのか分からないが、こんな特異な人間が各代に存在しているのならば、九星会が力を持つのも分かる。

 どうやら俺は、思った以上に大きい相手を探ろうとしているらしい。


「占いは以上です。時間が押していますので、我々は行きます。それでは」

 清秋は腕時計を確認したあと、双子を連れて行ってしまった。


 この高級ホテルには、双子の能力を必要とする客が宿泊しているのだろう。

 口ぶりからすると、俺や名出さんにしたような、簡易的な占いではないと思う。


 何か重要な占いを欲していて、わざわざ双子をここに呼び寄せた。

 九星会はこういうことを繰り返して、政界や財界へ根を伸ばしていたのだ。


『夢』の中の俺は何も知らず、のほほんと生きていたと思う。

 世の中は、俺が思っている以上に、複雑怪奇らしい。



『一炊の夢』にレビューをいただきました。

ありがとうございますっ!!


いつも感想をいただくのも当然嬉しいですが、こうしてレビューを書いてもらえるのも大変嬉しいです。

web小説は、リアルタイムで読者の反応、しかも各話ごとに読者などんな風に感じたのかが、ダイレクトに分かります。

これは作者にとって、「この先をどうしよう」と考えるときの指標になります。


説明が多いとき、逆に会話が多いとき、はたまた登場人物が多すぎたり、だれが何を喋っているのか分からなかったりといったとき、感想から把握して修正していくことができますし、伏線や謎に気づかれたら、もう少し物語を練った方がいいかと思います。

逆に、「分からない」「面白い」となれば、このままでいいんだと思えます。


そしてレビューですが、レビューは感想ではなく「解説」になります。

同じ読者に向けて「こんな物語ですよ。ぜひ読んでみてください」とアピールしてくれる大切な要素でもあります。

ということで、レビューが多くなると「ああ、たくさん推薦してくれえいる」と思えて嬉しくなるわけです。


今回、「一炊の夢」で初レビューをいただきました。

今後も、みなさんに推薦していただける物語を提供していきたいと思います。

もし楽しんでいただけたら、応援よろしくお願いします。

作者と読者が協力すれば、物語をより楽しくできると確信しています!

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 一部で完結してたら、この展開がわからずじまいだったんだよね。怖すぎる。 続行に感謝。
[一言] 事前に情報をある程度調べておいてそれっぽいことを言うタイプではなく明確に何かを見通してますねえ
[一言] 二重写しが「過去の記憶」なのか、今生の未来なのか、ってところなんでしょうかしら、と思います。 順調に行っているところでの裏切り、ってのがもう一回出てくる!って可能性もあるようで、どきどきして…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ