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嫁の名前がわかりました

起床してから思い出した。嫁の素性を聞こうとしてたんだった。お酒を飲まないようにと思ってたのにめっちゃ飲んじゃったし。


 嫁は朝に弱いらしく、まだ寝ている。よく考えたら同じベットで寝てるのって相当問題じゃないだろうか。年頃の男女が、数日夜を過ごしている。うむ、完全にアウトだ。




 よし、責任を取ろう。  




 何も悪くない嫁が傷物扱いされてはならない。彼に不自由な生活をさせてはならない。誠意ある対応をするべきだと判断した。






「す、すいません、旦那様!どうしても朝が苦手で……!」


 慌てて起きてきた嫁。今日の私はバッチリ!朝食も用意したし、洗濯も終わらせた。


「かまいません。私が望んだのは家事手伝いではなく嫁です。あなたをこき使いたいのではなく、大切にしたいのです」


「!???」


 何か変なことを言っただろうか。嫁のためにご飯を用意するのだが、彼は席につかない。真っ赤になって、オロオロしている。そうか、夫として妻をエスコートするべきであった。


「気の利かない夫ですまない。こちらに座ってくれ。君ほど上手くないが、朝食を用意した。食べてもらえるとありがたいのだが……苦手なものはないかい?」


 彼を抱き上げて席についてもらった。ええと……顔が……大丈夫??


「た、たべましゅ!なんでも!何が何でも!旦那様が出してくれたものなら、なんだって完食してみせます!!」


 そこまでゲテモノを出すつもりはないのだが……?私はよほど料理下手に見えるのだろうか……。これでも独り暮らし歴が長いので、安くてそこそこ美味しいご飯は作れるんだが。


「甘い物は?」

「大好きでしゅ!!」


 先程から顔が赤いが、熱でもあるのだろうか……熱はないようだ。あ、固まってる。つい互いのおでこを当てて測ってしまった。うわ、ほっぺたすごく熱い。


 はっ!ひらめいたぞ!謎は全て解けた!!


「暑いのかな?冷たい飲み物を持ってこよう」


 うむ、きっと暑かったのだろう。持ってきたアイスミントティーをすごい勢いで飲んでいた。よほど喉が渇いていたのだな。すぐに気が付かず、申し訳ないことをした。飲んだら顔色もいささか落ち着いたようだ。


「焼き立てが美味しいから、君が起きるのを待っていたのだがガレットは食べられるかな?」

「ガレット好きです!」


「よかった」


 チーズとキノコ、ベーコンを入れたガレットに、用意しておいたサラダを出す。


「温かいうちに食べてくれ。私の分も焼いたらすぐそちらに行く。簡単な料理で申し訳ないが、あまり料理は得意でなくてね」


「いえいえ!美味しいです!幸せです!」


 幸せ?美味しいものを食べると幸せだからかな?喜んでもらえたようで良かった。これなら色良い返事がもらえるやもしれない。自分の分を食べながら嫁を見ると、目があったというか、ガン見されていた。解せぬ。


 あ、足りなかったのか?成長期だものな。多めに作ったはずだが、彼の分はなくなっている。




「すまない、足りなかったか?」


「いえそんなことは」




「今から焼くと時間がかかる。私の分を食べるかい?」

「いただきます!」


 私が彼の口元へガレットを持っていくと、嬉しそうに食べてくれた。うむうむ。大きくおなり。


「すまないな、足りなかったかい?」


「いいえ、丁度いい量でした。でも、旦那様が食べさせてくれたので……」




 なんてことだ。




 私はいつの間にか、あの憧れの『あ〜ん』をナチュラルにやらかしていたらしい。今日に至るまでこういったことをしたことがなかったが、私は案外やればできるタイプだったのだろうか。


「そうか……。ところで、今更なのだが君の名前を教えてほしい。ハニーは関係だろう。ぜひ君の名前を呼びたいのだがどうだろうか」 


「お気持ちは大変嬉しいですが、俺が死ぬので呼ぶのは当面先でお願いします。ラザ……です」


「ラザか。素敵な名前だな」

「すいません失礼します!!」


 嫁……ラザはすごい勢いで走り去った。もしや、私がうっかり呼んだせい!?床には点々と血が……!


「ラザ……!」




 ラザは洗面所で倒れていた。慌てて駆け寄る。床は血溜まりになっていた。


「ううううううう……」


「大丈夫か!?すまない……私が不用意に君の名前を呼んだばかりに……!傷口はどこだ!?すぐに治療を!」


「いやその…………すいません……ただの鼻血」

「治癒魔法……いや、死ぬな!すぐ医者に連れて行く!!」

「待ってください!ただの鼻血」

「喋ると出血が酷くなるぞ!このまま知り合いの医者のところに行く!!」










 そして、私は昔から世話になっている騎士団の嘱託医の元へと駆けた。


「……鼻血ですな」


 ベテランの医師の診察だ。間違いはないだろうが……鼻血?


「なんだと?」


「鼻の粘膜が弱い方のようなので、あまり興奮させないようにしてください」


「私が名を呼ぶと死ぬと……はっ!呪いか!?神殿に」

「すいませんただの鼻血なんです!旦那様が好き過ぎて興奮して鼻血出しただけなんです!勘弁してください!!」


「そうだったのか……」


 ただの鼻血……。鼻血なんて顔面を強打した時ぐらいしか出したことがないな。鼻血ってあんなに出るのか。私が無知なせいか、嫁に恥をかかせてしまったようだ。ホッとした反面、申し訳ない。また顔が赤くなっている。白いからか目立つな。


「す、すいません。変なことを言ったせいで」


「いや、ラザが死ななくてよかった。君が無事で良かった」


 そっと手に口づけたら、嫁が噴水のように鼻血を噴出した。


「だから興奮させないようにって言っただろうが!」


 昔から世話になっている医師から飛び蹴りをくらう羽目になったのだが、どの辺りに興奮する要素があったのかがわからなかった。


 いい夫になるのはなかなか難しいらしい。



昨日間違えてこっちを先に投稿してしまいました……。

あれ?これ読んだじゃんと思った方は1ページ戻ってください。

うっかりストライクが未だに発動するようです( ;∀;)

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