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さらに嫁への謎が深まりました

 今日は嫁とお酒無しで語り明かそうと思うので、早く仕事を終わらせようと頑張って苦手な書類仕事を頑張っていたら、騎士団長に呼び出された。なんだろう。だが、嫁についてなにか聞けるかもしれない。


「近衛騎士隊長、ローラ=アニング!参上しました!」


「入れ」


 入室許可が出たので、団長室に入る。目線で座るように促されたので素直に応接セットのイスに座る。ここ最近プライベートはともかく仕事では失敗してない……はず……?

 ま、まさかやはりあの嫁が未成年で、私に未成年誘拐の嫌疑がかかっているとか!?最悪の想像に震えがきた。


「ローラ、探してきたぞ!選べ!!」


「………ふぇ?」


 ドサドサと団長が机に出してきたそれは、どう見ても見合いの釣書だった。わーい。たくさんあるぅ。いやいや、待て。ということは、あの嫁は団長様の差金ではない……?とりあえず未成年者誘拐容疑で呼ばれたわけではなく安堵した。

 気を取り直して釣書にざっと目を通す。肖像画なので多少盛っていることを差し引いても美少年揃いではあるが、あの嫁ほどではない。

 嫁は金の柔らかな髪と、エメラルドを思わせる鮮やかな翠瞳。薔薇色の頬に、艷やかな唇。私はあれほど美しい少年を見たことがない。いや、成人だと言っていたから美青年になるのかな?なんとなくだが誰かに似ている気もする。

 そんな風にぼんやりしていた私に、団長が話しかけた。


「ただなぁ、見た目はともかく家事能力のある男ってのはなかなか居なくてなぁ。とりあえずそこから気に入った男がいれば見合いの席を設けるから言ってくれ」


「え、あ、はい……わ、私にはもったいない人ばかりですね?」


 当たり障りのないように返事しつつ、釣書を眺める。何度眺めても、釣書の中に嫁らしきプロフィールはない。あの嫁、本当に何者なんだろう。手からして平民ではなく貴族……容姿からすると恐らく高位貴族なんだよねぇ……。

 というか、この釣書の候補さん達もやたらと高位貴族ばっかなんだけど!伯爵令嬢から没落して平民落ちから出世したとはいえ子爵にはもったいない。さらに美少年がいいとか身の程知らずにも言っちゃったせいか、全員ティーンエイジャーだし。

 いくら成人が16歳だからって、28の私とは釣り合わない。大体女性は18までに結婚するのが普通で、私はいわゆる嫁ぎ遅れなのだ。


「そんなことはないぞ?お前さんは両親を亡くし身一つでここまで来た女だ。しかも、国王陛下と王妃陛下からも信頼されたこの国初の女騎士だ。血筋としても、元々は伯爵令嬢だったろ。女だから爵位を継げず平民になったが、そこから自力で爵位を得るなんて、そうそうできねぇ。俺からしたら、軟弱な小僧共こそお前と釣り合わねぇさ!がっはっは!」


 豪快に笑う団長に和んだものの、脳内ではクエスチョンマークが乱舞していた。あの嫁は本当に何者なのだろうか。


「ええと、考えさせてください」


「おう!」


 とりあえず釣書だけ受け取り、退室させてもらうことにした。明日は非番だし、今日こそ嫁と話をするのだ。今夜は呑まない!と心に誓って職場である第一王女殿下の宮へ戻ろうとした。


「あ、ローラ卿!」


「……ええと、私に何か御用でしょうか??」


 美しい銀髪に碧眼の美少年が満面の笑みを浮かべて駆け寄ってきた。どっかで見たような容姿だ。どこだっけか。私、壊滅的に人の顔と名前覚えるのが苦手なんだよなぁ。嫁ぐらい顔面に破壊力があると即覚えるけど。


「えへへ、会いたくて来てしまいました!」


 わあ、可愛い。ではなく!んんん??いや、君と私、どう考えても初対面よね?そもそも、ローラ卿だなんて親しい呼び方を許しているのは数人しかいない。普通はファミリーネームで呼ぶべきだ。


「あ、はい。光栄です?」


 そこまで考えはしたのものの、相手はどう見ても高位貴族のご令息なので当り障りのない返事を……んん?高位貴族??


「あ!お前、抜けがけだぞ!」

「そうだよ!アニング卿がオーケーしてから会う手筈だろう!」

「はっ!釣書だけては僕の魅力が伝わらないだろう!こういうのは早い者勝ちなんだよ!」


 私、なんで美少年集団から取り合われているのだ……?これがモテ期と言うやつ?なんか違う気がするの。


「わたくしの宮で騒ぎを起こすとはいい度胸ですわね!全員家名を名乗りなさーーい!!」


 第一王女殿下の一喝で、蜘蛛の子を散らすよう美少年達が逃げ去った。なんという逃げ足の速さなのだろう。見習いたいぐらいだ。


「ひぇぇ……」


 いやもう、マジで何だったの??美少年に言い寄られるとか……はっ!罰ゲーム!?どっかに同僚が隠れてクスクスしてる!?


「ローラ?」


 周囲を探るが、隠れている人間はいないらしい。


「あ、お騒がせしてすいません。これってドッキリか何かですかね?新手のイタズラですかねぇ……」


 第一王女殿下が重たいため息を吐いた。


「にっっぶい……」


「……私は結構気配に敏い方ですが?」


 瞬時に周囲の敵意がある人間を察知できるからこそ、この地位をもらえたわけで。首を傾げると、またしても鈍いとため息を吐かれるのだった。

 どういうことなんだろう……?

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