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嫁の素性を探りたかったのです、が……

 職場に到着したら、何やらザワザワしていた。手早く制服に着替え、夜勤者から引き継ぎを受ける。


「そういうことか」


 私はお会いしたことがないが、第四王子殿下が行方不明なのだとか。この王子、相当な問題児であるらしい。とてつもなく美しいが性格が最悪で、他人に嫌がらせするために生きているのではないかとまで言われている。そんな王子がいないだなんて、誘拐か暗殺か失踪かわからないが……騒動の予感しかしない。


「ローラ!ああ、貴女は無事ね!?」


 第一王女殿下が抱きついてきた。ううむ、今日も小柄で愛らしい。我らの主は本当に美しいな。白磁の肌に金の髪が輝いていらっしゃる。幼少からお仕えしているためか、王女殿下は私にとても懐いてくれている。


「え?はい」


 何故私の安否確認??弟の失踪で王女殿下が不安を感じているということなのだろうか。


「あのバカがやらかしたかと……よかった……ローラ」


 やはり王子の失踪が原因であるようだ。


「王女殿下……可愛いマリー様。私は殿下を置いていなくなったりしませんよ」


「当たり前なのですわ!わたくしが嫁ぐ時は、ローラも連れていきたいなぁ……」


「殿下……」


 恐らくそれは難しいと、お互いにわかっている。私が近衛騎士隊長で、本来ならば王妃殿下付きのところを互いの希望もあって嫁ぐまでの期間限定でお仕えさせていただいているのだ。


「ダメなのはわたくしもわかっているわ。ローラを困らせたいわけではないの」


「わかっております。嬉しいです、殿下」


「ローラ、大好き!」


 そして通常通り業務についたわけだが、第四王子失踪事件のせいか騎士団長様にはお会いできず、帰路につくしかなかった。





「……どうしよう……」


 あの美少年がまだ家にいたらどうしよう。あれ、寝ぼけてみた夢だったりしないかな。とはいえ帰宅しないわけにはいかない。私は明日も仕事なのだ。せめて昨日泥酔していなければと思わないでもない。


 なんの対策も思いつかないままに家についてしまった。きっと美少年は帰ったに違いない。そう言い聞かせてドアを開けた。


「おかえりなさいませ、旦那様」

「なんでまだいるのかなあ!?」


「旦那様?」


 完璧な美貌の美少年がお出迎えしてくれましたよ、ちくしょうめえええ!!そして顔がいい!!


「いや、旦那様ではなく!どちら様でしょうか!」


「申し遅れました。僕のことはハニーとお呼びください」

「うわあ、明らかな偽名ありがとうございます!未成年はお断りです!」


「童顔ではありますが、ちゃんと成人ですよ?それよりご飯にしましょう。朝は寝坊しましたが、ちゃんと夕飯は作りました!」


 たしかにいい匂いが漂っている。そして、豪快に腹が鳴る。いや、騎士って肉体労働だからお腹すくの!私が食いしん坊だからじゃないの!!


「……食べながら事情を話してもらいますよ!」


「かしこまりました」



 そして、ご飯はおいしかった。


「旦那様、こちらもどうぞ」

「おいしい」

「旦那様、お酒はいかがですか?」

「ありがとう」

「旦那様、デザートですよ」

「わ〜い」

「旦那様、お風呂どうぞ」

「は〜い」

「旦那様、御髪を整えましょう」

「おねがいしまーす」

「旦那様、マッサージはいかがです?」

「きもちいい……」





「……あれ?」


 気がつけば、翌朝である。なんということだ。嫁が有能で可愛くて、見とれながらお世話されてたら、あっという間に寝かしつけられてしまった。あのマッサージやばいってか、寝落ちて運ばれた……だと?

 酒のせいも多分ある。しかし、なんという体たらく。完全に不審な美少年のペースである。


「ん……」


 美少年は……本当に成人なら美青年なのだろうか。朝は弱いらしく起きる気配がない。


「仕方ない、か」


 我ながらあまりにもチョロいと思わないでもないのだが……独り暮らしで寂しいかった我が家に誰かがいるっていいなと思ってしまった。どちらにせよ明日は休みだから、今夜ゆっくり話を聞こう。

 今夜は絶対に飲まない!!


 焼いたソーセージにスクランブルエッグ。フルーツとサラダ。パンは自分で焼くだろう。普段めったに料理しないが、彼がいるならパンと干し肉だけは味気ない。野菜は買い置きがなかったはずなので彼が買ったのだろう。

 今夜の夕飯用食材だったかもしれないし、そもそも食費は彼の自腹だったかも。食費にとお金をおいていくことにした。

『夕飯美味しかったです。お金は食費や雑費として使ってください』と書き置きもしたので大丈夫だろう。


 いつもより体が軽いのを感じつつ、また仕事へと向かったのだった。

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