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お見合いではなかったようです

 第一王女殿下に一通り説明した。殿下は頭を抱えている。いや、うん。第四王子殿下に嫁として家事をさせるとか……ありえないよねぇ。王子殿下もなんでまた我が家で家事してたんだろう。


「とりあえず、愚弟が多大な迷惑をかけたこと、全力で謝罪するわ」


「いえ、迷惑などではないですよ。むしろ私の方がお世話していただきました。その……王子殿下がいてくれる家はとても居心地の良いものでした」


 帰ると出迎えてくれる優しい嫁。温かい食事もありがたかった。


「そ、そうなの?愚弟に家事ができるとは……そういえばわたくしより刺繍が上手いのよね、コイツ」


「え」


「なんでも、いらつくときにやると良いストレス解消になるとかなんとか……わたくしの代わりにやらせたりもしていたわ」


「ああ、私とあまりレベルが変わらないと思っていた王女殿下がいつの間にか刺繍名人になっていたのにはそんな裏話が……」


 ちなみに私は一応繕いものもするのだが、あまり上手くない。刺繍はやる意味がよくわからなくてできない。可愛らしい淑女が刺した可愛らしい刺繍を見るのは好きだが見る専門だ。


「とにかく!もう二度と貴女の家に入り浸らないよう厳重注意と謹慎をお父様にお願いするわ!」


「……王女殿下」


 それは……嫌だなぁと思う。何と言えば彼女は納得してくれるだろうか。


「何?」


「私は、嘘偽りなく迷惑しておりません。王女殿下……いいえ、マリー様。ラザは帰宅して寝るだけの場所を『家』にしてくれました。心から感謝しているのです」


「んんんんんんん……黙っていてということ?」


 とても不満そうな私が命がけで守るべき女性。大切なマリー様は、私に甘い。


「そうですね。それから、どうしたら彼を私の嫁にできるか一緒に考えてほしいです」


「んんんんんんん……」


「マリー様の義妹にもなりたいです」

「わたくしに任せなさい!!」


 マリー様は俄然やる気だ。頼もしいことこの上ない。


「おお……ありがとうございます」


「それにしても……諦めさせるつもりの食事会だったのに、応援することになるなんてね」


 私の家に嫁が来たことまでは把握していたが、まさか弟君だとは思わず諦めさせるつもりだったとのこと。


 ん?んんんんんん??


「あの……その言い方ですと第四王子殿下が以前から私に懸想していたように聞こえますよ?」


「ええ、そう言ってるのよ?」


 んん?んんんんんんんんんんんんんん??え?この私の腕ですやすや寝ている美少年が私という名の筋肉ゴリラ女に懸想していた??無いな。ありえん。現時点でもすっげーミラクル。


「いや、それはないですね」


「あるのよ。大アリなのよ」


 大アリ……キングアントは結構厄介な魔物……じゃなかった、ありえないでしょ。


「いや、無いです」


「あるの!だって、ローラの声って綺麗なんだもの。わたくしが男だったら間違いなく外堀をガッチガチに固めて囲って結婚を申し込むわよ」


 いやいやそんなと否定しようとしたが、マリー様の瞳は真剣だった。


「声、ですか」


 普通だと思うんだけどな。第四王子殿下も声フェチってことなのかな??


「わたくしと愚弟、それから父様は特殊なスキルがあるのよ。嘘をつかれると、声にノイズが聞こえるの」


 そういや、国王陛下から『そなたの声はよいな』と言われたことがある。そういうことだったのかな?単純馬鹿だからなぁ、思ったことをそのまま言ってるだけなんだけども。


「それは大変そうですねぇ」


 きっと、お世辞なんかもノイズに聞こえるのだろう。聞き取りにくいだろうし、結構しんどいのではないだろうか。


「そうなの!大変なのよ!この嘘つきとか言えないし!わかるだけで根拠はないしねぇ。そういう意味でもわたくし達はローラを手放せないの。結果としては良かったのかもね」


「ええと……?」


「だって、ローラのカンってことにしてしまえば理由がつくじゃない。それか、ちょっぴり誘導するだけでローラはすぐ正解にたどりついて処理してくれるし」


「ああ、なるほど」


 それなりに実績がある私の直感。根拠はないので、終わってみると理由があとから来るのだ。そういえば身に覚えがないやつもたまーにあったかも。私は知らない間に使われていたわけだ。なるほど、私はそういう意味でも役に立てるのか。マリー様達の隠れ蓑になれるのは、いいことだ。


「ええと……嫌じゃないの?」


「何がですか?」


「その……ローラをいいように使っていたってことよ?」


「お仕えする方のお役に立てたことを嬉しく思うなら理解できますが、嫌がる意味がわかりません」


 そもそも、私は王女殿下の盾であり駒である。いいように使われることも想定範囲内だ。役に立つと言われて喜ぶどころか嫌がる意味がわからない。


「本当にローラはローラよねぇ」


 よくわからないがマリー様が嬉しそうなので私も笑った。私が王子妃だなんて想像もつかないが、やれるだけやってみたいと思った。とりあえず、護衛と王子妃の兼任は可能なのだろうか。

 ラザが起きたら聞いてみよう。

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