まさかの朝チュンでした。
軽い気持ちで書き始めました。短く終わると思いますので、お付き合いいただけたらと思います。
朝起きたら、隣で美少年が眠っていた。
私は独身である。女でありながら騎士として働き、現在は第一王女付きの近衛騎士隊長でもある。
なので、隣に美少年が寝ているのはおかしい。どこで拾ってきた!?一気に頭が覚醒して飛び起きる。とりあえず服は着ているので、かろうじて犯罪ではないかもしれない。
猛烈な速度で昨夜の記憶を辿る。冷や汗が止まらない。何をやらかしたんだ、昨夜の私は!?
昨夜は仕事で嫌なことがあったので同僚としこたま飲んでべろべろに酔っ払い、いつも通り帰宅した。
「たらいま〜。な〜んて言ってもられもいにゃ〜い。さーびし〜な〜」
「おかえりなさいませ、旦那様」
そうだ。そうしたらなんでかこの子がいた。
「だ〜れ?」
「旦那様の嫁でございます。ささ、上着とお鞄をお預かりしますね。お酒を飲んで来たのですね?では、こちらをお飲みください。二日酔いを和らげてくれますよ」
「およめさんか〜。うわ〜い、ホントだ。こんな可愛いお嫁さんほしかったんだ〜」
完全に酔っ払っていた私は、自室にいるはずのないどう考えても不審な美少年にされるがまま。上着と鞄をなんの疑問もなく預け、渡された飲み物を飲んでいた。
「そうですか。喜んでいただけて、僕も嬉しいです」
「これ、おいし〜。ありがと〜」
「どういたしまして。お風呂のご用意ができておりますよ」
「うへへ〜、いたれりつくせりだ〜」
そうして、風呂から上がると美少年に髪を乾かしてもらい、また水分をもらい、丁寧にお世話された私は眠りについたわけだ。
「とりあえず、今の所犯罪では、ない……か?」
しかし、なぜこの美少年は我が家に入れたのだろう。我が家の鍵を持っている者は……?
「あ、団長?」
そういや、紛失した時のためにって騎士団長にスペアキーを渡してたわ。そして、私は思いだし、冷や汗を流す羽目になった。
「……だん、ちょお?」
そう、あれは先月のことだった。国王陛下から、第一王女殿下暗殺未遂事件を未然に防いだ事で報奨をと言われていたのだが、特に欲しい物もないし職務なのでとお断りしたのだ。そのせいか、その晩に騎士団長が飲みに誘ってきたのだ。騎士団長は初老のナイスミドル。愛妻家で、心優しいオジサマである。家の保証人でもあり大家さんでもあるのでスペアキーを正確には騎士団長の奥様に預けている。
私を娘のように可愛がり、たまにおごってくれるいい上司様なのだが……その日は間が悪かった。
「そういえばお前、本当に欲しい物はないのか?」
「ないれすよぉ、ほしければじぶんでどぉにか……モノじゃなくてもいいならありましゅ〜」
「おお、何が欲しい?」
「よめ」
「…………よめ?嫁って……妻??お前、そういう……?」
「ちがいましゅ。おんなのこはすきですけど、そ〜ゆ〜すきじゃなくて〜、あこがれ?てきな〜。ほしいのは〜、うちでいえのことしてくれる〜、おとこのひとですよ〜。びしょうねんならなおよし!」
なおよしじゃねえええええ!!過去に戻れるなら、自分をぶん殴って今のなし!と叫びてえええええ!!
この日、同僚が婚約してめちゃくちゃマウンティングしてきやがったのだ。私だって結婚したいが、家事能力皆無な女のところに来てくれるお婿さんはいないだろう。だから、私が稼ぐから嫁が欲しかった。美少年は純粋に好みの問題だ。王族に仕えているからか、私は無駄にメンクイなのだ。
「なるほど……美少年の嫁か……確かに難しいが……」
「あは、そんなことより飲みましょ〜よ〜」
そして、そこで私の記憶は途絶え……その翌朝、二日酔いとやらかした件で頭を抱える羽目になったのである。
「あれだ、あれに違いない!」
なんとか酒の席の悪ふざけとしたかったのだが、タイミングが悪く全く騎士団長様にはその後会えず。何のリアクションもなかったために、あの話は消えたと思っていたのに、まさかの今である!!
「ん……」
眠る美少年は、素晴らしく美しい。柔らかそうな金髪に長いまつ毛。瞳の色は何色だろうか。白い肌は白磁のようだ。ツヤツヤしている。
先月あんなにも酒は控えると誓っていたのにこの体たらく。自分に絶望しかない。
「とりあえず……仕事に行こう……」
時間的に余裕はある。適当にパンを焼いてゆで卵を作り、普段はやらないが果物も剥いた。寝ている嫁の分も用意して、食べてくださいと書き置きを残して出勤した。
そう、現実逃避である。