閑話1 マリット先生の特別授業
「あら、何か用?」
「まさか、今更『質問があります!』とか、言わないわよね?」
「あるのかよ……。で、何が聞きたいの?」
「はい来た専門ですよ。私の属性学の授業は分かりにくくて申し訳ありませんね!」
「炎属性について?基本属性よ。風属性に優位で、水属性には弱い。」
「象徴は精霊イグニス。攻撃的なイメージが強いけど、実際に会ったことないから分からない。」
「炎の象徴だから鍛冶屋連中には神様扱いされてるっぽいわね。」
「炎魔法が得意だとお得よ~。料理の火加減とかバッチリ。その他にキャンプの時に火種に困らない!」
「ま、冗談はさて置き、精霊魔法の攻撃力はお墨付き。人間とか動物相手には大抵効果があるから、とりあえずぶっ放しておけばいい感じかな。調理の手間も省けるし。」
「風属性?これも基本属性よ。地属性に優位で、炎属性に弱い。」
「象徴は精霊シルフィード。優しい春風なのか激しい嵐なのか、よくわからないイメージね。気分屋なのかも?」
「実は精霊魔法の威力も結構高くて、風の刃で敵さんをズタズタにしちゃうものから、大きな竜巻で吹き飛ばしちゃうものまで、意外と攻撃的。」
「かと言って、優しいそよ風だったり、空の雲を流したり、優しそうな、呑気な一面もあるわね。やっぱり気分屋ね。」
「うーん、触らぬ神に祟りなし?なんかいきなりドラゴンのイメージが浮かんだ!」
「地属性も基本属性よ。水属性に優位で、風属性に弱い。」
「象徴は精霊テラ。もう、包容力のあるオジサマしか浮かばない!そんな人が執事とかだったら最高じゃない?」
「まあ、魔法自体は岩の塊をぶつけたり、押しつぶしたり、生き埋めにしたり、結構えぐい事になるんだけどね……。」
「普段は優しくても、怒らせたら怖い人っているわねぇ。……そんな感じ?」
「水属性も基本属性。炎属性に優位で、地属性に弱い。……って言うか、基本属性全部網羅しようとしてない?
「象徴は精霊ノア。とっても優しい、私みたいな聖霊よ。あ、でも流されやすいのが玉に瑕。」
「でもね、水って怖いのよ。圧縮して撃ちだせば、鎧ぐらい簡単に貫くし、そうじゃなくても溺れさせることもできる。」
「人の講義を真面目に聞かなかったり、さっき笑ったりした悪ガキの脳天ぶち抜くぐらい朝飯前なのよね。気を付けなさい。」
「光属性は基本属性の一つね。闇属性と対になってて、お互い弱点でもあるわ。」
「象徴は、われらが女神、フィリス様!と言いたいところだけど、実は精霊ルミナス。」
「光って良いイメージしかないかもしれないけど、実際は束ねて矢にして攻撃したりできちゃう。特に暗いところが好きな敵には効果絶大なのよね。」
「それ以外にも、直接敵に傷を負わせることにはならなくても、目眩ましに使えたり、単純に光源にできるからすごく便利よ。」
「最後の基本属性、闇。光属性と対になってる。」
「何よ、ここまで聞いておいて闇属性だけ聞かないつもり?最後まで言わせなさいよ。」
「象徴は、実はよくわかってないのよね。真相は闇の中。なんちゃって。……藪の中?くだらないことは知ってるのね。」
「まあ、暗闇って潜在的恐怖心?ってやつを呼び起こすみたいで、人間や動物相手には結構効果が高いんだけど、虫とかには効きにくかったり、使いにくいのよね。」
「は?複合属性?図書館で調べなさいよ!」
「と言いたいところだけど、特別に教えてあげよう。複合属性にもいろいろ種類があって、混合属性、融合属性、反発属性って概念があるんだけど、何が聞きたいの?」
「混合属性は、文字通り二つ以上の属性が混ざり合って、それぞれの効果が高まっている状態ね。」
「例えば炎と風を混合させるとどうなるか、って割と簡単に想像つくでしょ?」
「勿論三つ以上の属性を混合させることも出来るけど、そもそも混合できるレベルの精霊魔法を一つでも使えるってだけで一流扱いよ。四種混合なんて天才の領域ね。」
「さあ、目の前の天才を敬いなさい!」
「融合属性は、二つ以上の属性がくっついちゃった状態ね。混合属性と違う点は、元の属性と全く違った効果が発現することね。」
「例えば、炎と水が融合すれば、水の温度を極限まで奪って氷が生成される。これが混合だとすれば熱湯になる。地と風の融合だと雷、混合だとただの砂嵐。」
「お陰で一昔前までは氷の精霊や雷の精霊なんて概念もあったのよ。そりゃ勘違いもするわよね。」
「ふふふ、混乱してきたね。そして面白くなってきただろ?」
「さて、最後に反発属性。これはそのまんまの意味ね。本来混ざり合うことのない属性を無理やり組み合わせると、どうなると思う?」
「どっかーん!」
「威力は、そりゃもうとんでもないものよ。かるーく反発させただけで、このギルドの建物ぐらい木っ端微塵ね。」
「ま、その分難易度としてはものすごーく高くて、四属性複合と同等かそれ以上と言われているわ。天才の領域よ。天才の!」
「つまり、目の前の天才を敬いなさい!」