1-4-2 幕間
「ファンナは鉱山の調査依頼を受け、それをヴァンとラディアスの二人と協力して遂行した。」
「はい。」
老人の言葉にファンナが答える。
「ヴァンとラディアスは一般人からの護衛依頼を受け、それをファンナと協力して遂行した。」
「はい。」
今度はヴァンが返事をする。
「報酬は?」
「依頼人は経済的に苦しそうでしたから、彼の姉の手料理をご馳走になりました。」
ラディアスが回答する。心なしか目が笑っている。
「……問題ないな。」
「問題ないですね。」
老人、グランドマスターの言葉にザックスが同意する。
ザックスが手で額を押さえて震えている。それを見たヴァンは肩を震わせ、ファンナは首だけ横を向けて耐えている。ラディアスだけがポーカーフェイスを装っていた。
「プッ……!ハハハハハ!!」
最初に耐え切れなくなったのはグランドマスター自身だった。
そして、全員が耐えきれずに声を出して笑ってしまった。
「よくもまあ、そんな抜け道を見つけたものだな!」
言っておくが褒めてないぞ、とザックスが続ける。
「あー、ただその、少しだけ問題がありまして。」
「何だ?」
ヴァンの言葉に、まじめな声色でザックスが聞き返す。
「護衛対象を、多少の危険に晒してしまいました。」
「だが、それは訓練生だろう?」
「先ほどボスもおっしゃったじゃないですか。一般人と。」
「俺たち、ちょっと働きすぎだと思うんですよね。」
ヴァンに続いたラディアスの言葉の意味を、グランドマスターとザックスは瞬時に汲み取ったようだ。
こうして、規約上も契約上も全く問題の無かった依頼は、策略によって大きな問題へと変貌させられた。
たった一人の少年を更生するために。