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Philistia  作者: 桜田文也
第一章
13/39

1-6-2 幕間

「まあ、身内の恥を晒すような話よ。他言無用で願うわ。」

 ため息交じりに話し始めたマリットは、心底気怠そうだ。

「事の発端は、君たちが調査した鉱山さ。」


 マリットが語ったあらましはこうだ。

 鉱山の調査依頼後、報告にあった新種のモンスター発見の可能性を考え、爆破封印は調査の間延期されることとなった。数カ月間調査が行われたが、目ぼしい成果は上がらず、つい先日爆破封印は実行された。

 問題は爆破に使用された爆薬について。実際に使用された爆薬の量は、明らかに過剰だった。計画段階から実際に使用された量を使用する申請が上げられ承認されたが、発注された量は明らかにそれを下回っていたという。

 途中で計画の担当者が交代し、計画書と発注書の量が違うことが発覚。追加発注の後に計画書通りの量が使用された。

 この計画、発注を行ったのが学士ギルドということだ。

 おそらく前担当者は計画分と発注分の差額を懐に収めようとしていたのだろう。思いの外爆破の実行が長引き、その計画は頓挫。引き継いだ担当者は計画書と発注量の差に気づき、差分を追加発注したことで、結果的に計画書通りの量の爆薬を使用することになったようだ。

 そして、過剰な爆薬が使用された結果、入口の爆破封印どころか計算外の崩落を引き起こすこととなった。

 当然のことながら、前担当者は逃亡。学士ギルド側としては、最初の予算案が通っている状況のため、それ以上前担当者への追及は出来ず、大元の依頼主である鉱山ギルドとは、その賠償で折衝している状況のようだ。


「他言無用とは言え、聞いてはいけない内容も入っていたような……。」

 ファンナが苦笑する。実際のところ、鉱山ギルドと学士ギルドとの問題など、こちら側が感知するような事柄ではない。そしてマリットがその様なことを理解していないとも、ましてや彼女の口が軽いために余計なことまで話してしまうようなことはあり得ない。

「で、その前担当者とやらは?」

 ああ、余計なことを。とヴァンとファンナは思ったが、ラディアスもその意図に気づいての質問だろう。こちらから聞かなければ押し付けられたかもしれない。

「そんなの知るわけないわよ。ひっ捕まえたら縛り上げて動機を聞きたいところだけど、実際そんな時間も無いしね。事実上学士ギルド(こちらがわ)にも損害が出たわけじゃないし。」

 ――さて、ここからが勝負だ。

「えーっと、つまり見つけたら捕まえればいいの?」

 止める間もなくエリオが発言した瞬間、ヴァン、ラディアス、ファンナが一斉に彼の方を見た。一様に目つきは『余計なことを言ってくれたな』と言っている。

「あらー、見つけたら連れてきてくれるの?」

「はあ……。聞いてしまったからにはそうせざるを得ないでしょうね。」

 ため息交じりにヴァンが承諾する。これはこちら側のミスだ。経験の浅いエリオに発言させるべきではなかった。

「助かるわー。多くは出せないけど、ちょっとぐらいなら報酬も出すわよ。」

 完全に掌の上で踊らされてしまった。今の会話で学士ギルドからの正式依頼と言う形ではなく、()()()()()()の人探しになってしまった。これでは報酬の交渉も殆ど期待できないだろう。

 こうして、()()()()()人探しと言う依頼を、()()()()()()()()()()で引き受ける格好となってしまった。

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