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第四話 【冒険者登録】

 一夜明け――翌朝。


 宿屋からでるとそこは牧歌的な雰囲気ののどかな村の風景が広がる。

 昨晩のランプに灯された幻想的な雰囲気とはガラッと変わっていた。


 すがすがしい朝日を浴びながらそんな景色を眺めていると後ろから、

「おはようございます。ヒュージ先生っ!」

 元気のいいアンジュの声。


「先生はよしてくれ。それに昨日話したとおり、俺は冒険者じゃないし、人にものを教えたこともない。きっと俺では力不足だ。本当にそれでもいいのか?」

「私の先生はヒュージ先生って決めたのです。それでは早速先生の冒険者登録へ行きましょう!!」

 アンジュは俺の手を引っ張り冒険者ギルドへと先導する。


 ――はあ。上手いことしてやられたな。


 昨晩、アンジュに冒険者としてのイロハを指南することを迫られた俺は……俺自身が冒険者でないこと、誰かに教えるほどの実力も持っていないことを説明して別の人間に頼むように伝えるも、「ヒュージさんは強い。この目ではっきりとみた」と聞き入れてもらえず。

 おそらくはブラックウルフから助け出した印象が強く残ってしまっていたのだと思う。


 それでもはぐらかし続けていたら終いには、「ヒュージさんじゃなきゃやだ」と泣かれてしまう始末。


 涙はずるいだろ、涙は――などと甘い考えをした俺が馬鹿だった。


 俺が「わかった」と折れた直後には、ケロっと泣き止んでいた。

 最初は弱々しい女の子の印象だったがのだが……その実態は狡猾な子だったようだ。


 それにあの真っ直ぐな瞳。

 おそらくアンジュにも退くことのできない事情があるのだろう。

 であれば……せめてアンジュがある程度のことを一人でこなせるまでの間だけでも付き合ってやるとするか。



 そうして俺達は冒険者ギルドを訪れた。

 冒険者ギルドは他の建物よりも荘厳な趣き。金がかかっているのが一目瞭然。


「わー! 朝一番なのに人がこんなにたくさん! 昨日私が登録にきたときより、とってもおおい!」

 朝一番にも関わらず大勢の冒険者が詰めかけている。

 見たところ装備はみな初々しく、アンジュのような駆け出しの冒険者が多いようだ。


「朝はクエストボードの更新があるからな。割りの良いクエストを求めてたくさんの冒険者が集まるんだ」

「なるほどー! さすが先生!」

 アンジュは瞳を輝かせるように俺を見上げる。


「アンジュも少しずつ知識を増やしていくといい――それじゃあいってくる。少し待っていてくれ」

「はーい!」

 アンジュとは入り口で別れ、受付へと向かう。

 グランフォリア王国は冒険者育成に力を入れているだけあって、辺境の村でも冒険者絡みの設備は充実している。


 そして数台の受付台のうち、空いていた一つに腰掛けた。

 そこには金髪の若い猫耳女性。

 歳は一八くらいだろうか? アンジュより少し上に思える。

 胸元には『ミーア』と書かれた名札。


 ――猫耳(テト)族か。

 猫耳(テト)族は素早い身のこなしが特徴の種族。

 冒険者としても非常に優秀なのだが、絶対数が少ないため見かけることが少ない。


 そういえば昨夜の食事処にも猫耳(テト)族の給仕係がいたな。

 この辺りに猫耳(テト)族の集落でもあるのだろうか?


 そんなことを考えながら、

「すまないが冒険者登録をしたいのだが」

「かしこまりましたにゃ。それではこの板に手のひらを当ててくれにゃん」

 受付嬢は金色の薄い金属板を差し出す。


 そこに手を置くと、金属板がほのかに発光した。

 そして金属板に文字が刻まれていく。

 俺の名前、『ヒュージ・クライス』と『Eランク』という文字が見えた。


「ヒュージ・クライスさんですにゃ? これで冒険者として登録されましたにゃ。その金属板はギルドカードと言って、氏名のほか、冒険者ランクやこなしたクエストの内容、討伐した魔物(モンスター)なども記録されるにゃ。その記録で冒険者ランクの査定をするから絶対になくしちゃだめにゃ」


「ああ、気をつけよう」


「それじゃあまずは冒険者について説明するからよく聞いておくにゃ」

 ミーアは右手の人差し指を天に向ける。


 まあほとんど知っている内容ばかりなのだが――


「冒険者として何をするのかはヒュージさんの自由にゃ。迷宮(ダンジョン)に挑戦し、魔物(モンスター)の素材や魔石を収集してもいいし、冒険者ギルドからのクエストをひたすらこなしてもいいにゃ」


 そしてミーアは説明用の板を取り出した。

 そこには魔物(モンスター)や冒険者のような人の絵が描かれている。

迷宮(ダンジョン)は国の各所にあるにゃ。場所によって出現する魔物(モンスター)の強さも違うにゃ。その目安はEランクから SS Sランクまでの八段階でわけているゃ。そして冒険者のランクもEランクからS S Sランクまでの八段階でわかれていて、Eランク冒険者ならEランクの魔物(モンスター)を一人で討伐できる実力があると言うことだにゃ」


 そしてミーアはボードを取り替え、説明を続ける。


 ――――――――――――――

 SSSランク  ――――(未踏)

 SSランク   ――――(未踏)

 Sランク   超級冒険者

 Aランク   国選冒険者

 Bランク   上級冒険者

 Cランク   中級冒険者

 Dランク   初級冒険者

 Eランク   駆け出し冒険者

 ――――――――――――――


「みんな初めはEランクだにゃ。だけど『自分もいつかはS S Sランク冒険者に』なんて夢はみないほうがいいにゃ。今現在のグランフォリア王国にはSランク冒険者が二名いるにゃ。だけど S S、 S S Sは今まで誰も到達したことがないにゃ。Bランクまで上がれば冒険者としては上等にゃ。堅実にそこを目指すといいにゃ」

 ミーアはそう話しながら手をひらひらさせる。


 そして再び人差し指を天に向けて、

「それともう一つ。クエストではその内容によって冒険者ギルドが適正ランクを決めているにゃ。受託者の冒険者ランクが適正ランクを超えていないと受諾ができないから注意するにゃ」

 手を顔の前でクロスし、ばつ印。


「まあまずは『まどわしの森』で経験を積むことをおすすめするにゃー。ここまでで何か質問はあるかにゃ?」


「質問……ではないのだが、昨日『まどわしの森』でブラックウルフに遭遇した。冒険者ギルドにはそういった情報は入っていないか?」


「ブラックウルフ? 何を言っているにゃ? ブラックウルフはBランクの魔物(モンスター)だにゃ。『まどわしの森』になんているわけがないにゃ」


「ああ。だから聞いているのだが」

 俺はブラックウルフから得た黄色の魔石を受付台に取り出す。


 魔石は元となる魔物のランクによってその色が異なり、Eランクから順に、白・青・緑・黄・橙・赤・紫・黒で分かれている。

 詳しい原理はよくわからないが、内包されている魔力の大小で色が異なって見えるらしい。

 魔力は魔法の源であるとともに、魔物(モンスター)の原動力にもなっているのだとか。

 つまり、よりランクの高い魔物(モンスター)ほど、より大きな魔力を魔石に内包しているのだ。


 そして魔石の商流は冒険者ギルドによって厳重に管理しされている。


 Cランク以下の魔物(モンスター)から得られる魔石だけが燃料用に一般へと流れる。

 しかし、Bランク以上の魔石は燃料には用いられず、武器や防具への加工や魔導具への加工に用いられるため、一部の者としか取引がなされない。


 冒険者が冒険者ギルドに売らないという選択肢もあるが、Bランク以上の魔石ではメリットがほとんどない。


 冒険者ギルドを通さない直接取引がばれると、その冒険者は冒険者ギルドから破門されるほか、購入した者は冒険者ギルドとの取引が二度とできなくなるからだ。


 例外があるとすれば個人で利用する術がある者だけだろう。


 ――つまり、冒険者になったばかりの俺がBランク魔物(モンスター)であるブラックウルフの魔石を持っていることが事態が異例なのだ。


 そしてミーアは魔石を見るなり驚いた表情で、

「――ち、ちょっとこれ借りるにゃ。ここで待っているにゃ!」

 そう言うと魔石を手に取り、受付の裏手へと走っていった。


 裏手からは、

「ち、ちょっと鑑定機借りるにゃ!」

「にゃにゃにゃー!! あ、ありえないにゃー!!」

 などという騒がしい声が聞こえてくる。


 そしてしばらくして、

「た、たしかにこれはBランクの魔石だったにゃ。これが本当に『まどわしの森』に? ――ん? ということはヒュージさんがブラックウルフを倒したのかにゃ!?」


「ああ。その通りだ」

 そう言いながら、今度は牙の素材を取り出してみせた。

数多くある小説の中から、こちらの小説を選んでいただきありがとうございます。


また、話の続きが気になる! 面白かった! など、少しでも読者様の心を揺さぶることが出来ましたならば、ブックマークや、広告下の【☆☆☆☆☆】より評価していただけましたら、大変大きな励みとなります。


是非とも宜しくお願いいたします。

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