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第十八話 【あの方の行方】

「そういえばクライス殿たちは風吹草を探しに来ていたのであったな?」


「ああ、そうだ。さっき使ってしまったからまた探さないといけないが」


「――そうか。色々とすまなかったな……あとの処理は私一人で大丈夫だ。クライス殿たちはクエストを進めてくれ」

 グレイマン大隊長はそう話すと、俺たちに頭を下げた。

 機密の任務だからこれ以上関わるな……ということか。


 しかし、アンジュにはそんなことは関係なかった。

「その状態で迷宮(ダンジョン)を動くのは危険です! せめてしっかりと体力が回復するまでは……!」

 いくら身体の傷が回復薬で回復したといっても、失われた体力までは回復しない。


 グレイマン大隊長は気丈に振る舞っているようだが、よくみると体に力が入っていないことがわかる。


「いや……だが……」

 グレイマン大隊長も、アンジュの言葉が正しいとわかっているのであろう。

 反論の言葉に詰まっている。


「――そんなにも大切なことなのですか??」

 アンジュが珍しく怒気をこめた口調でそう話す。

 どうやらアンジュはグレイマン大隊長の身を案じているようだ。


「それは……」


「先生……っ!」

 アンジュは同意を求めるような視線で俺を見つめる。


「――ならば俺たちも勝手にさせてもらおう。アンジュ、【魔力探知(ディテクター)】の探知はどこまでいける?」


「ここからなら……うーん、そうですね……だいぶ上流まで来ていますし、限界までやれば、『ヘミング峡谷』の上流側の端まではいけると思いますが……?」

 アンジュは不思議そうな顔で俺をみつめる。


 ここから上流側の端までは五〇〇メートルといったところか。

 ならば――。


「風吹草を探してくれ。そしてついでに()()()()反応があったら教えてくれ」


「はい!」

 アンジュは笑顔で応えた。


 どうやら俺の意図を察したようだ。

 上流にあの方とやらがいるのであれば、アンジュの【魔力探知(ディテクター)】に反応があるはずだと。


 そしてアンジュは集中するように目を閉じ、魔力を探り始めた。


 感覚を限界まで研ぎ澄ませているのだろうか、アンジュの額からは汗が流れた。

 相当な範囲の魔力反応を感知しているとなると、アンジュの負担も相当なものなのだろう。


 そしてそのまま二分ほど経ったころ、

「…………うっ……」

 アンジュが頭を押さえながら、その場でよろめく。


「大丈夫か!?」


 しかし、アンジュは体制をすぐに立て直し、

「風吹草がいくつか……それと何やらおかしな反応がありました!」

 そう報告した。


「おかしな反応とは?」


「上流側のほぼ端に近い場所で、六つの反応が確認できました。ただ、その中の一つだけ弱っているようで……」


「な、なに!! それはどういうことだ!?」

 アンジュに掴み掛からんとするほどの勢いで、アンジュに詰め寄った。


 突然の大声に、身体をビクッと硬直させるアンジュ。

「グレイマン大隊長、落ち着いてくれ。――アンジュはもう少し詳しく聞かせてもらえるか?」


「あ、はい……。弱っている一つは動かずに止まったまま、他の五つはその周りで一定の動きを繰り返していました」

 動かずに止まったまま……ここは迷宮(ダンジョン)だ、魔物(モンスター)に襲われて身動きが取れないというのも考えられるが……それならば他の五つは何を?


 …………やはり、これだけでは詳しい状況はわからないか。

 だが、何かがあることに間違いはないだろう。


 俺はグレイマン大隊長を一瞥(いちべつ)する。


 すると、深刻な表情を浮かべながら、

「….……先ほどはすまなかった……機密事項で詳しいことを話すことは出来ないが、私が探している方がそこにおられる可能性がある。どうか私をそこまで案内してはくれないだろうか?」

 そう話し、グレイマン大隊長は再び俺たちに頭を下げた。


 そしてアンジュは笑顔でこう応える。

「はい、もちろんです!」


「…………かたじけないっ!!」


 ☆


 俺たちはアンジュの案内により、六つの反応があった地点の近傍まで足を進めた。

 そこは誰も足を運ばないような、迷宮(ダンジョン)の端の端。

 特別な理由がない限りは誰も訪れることはないだろう。


 そして、アンジュが指し示す先は……そびえ立つ岩壁であった。


「ミストリア殿……この先は進めぬようですが……」

 グレイマン大隊長は岩壁を見上げながらそう言った。


「はい……ですが確かに、この先から反応があります」


 アンジュの【魔力探知(ディテクター)】が確かなことは俺もよく知ったところだ。

 この先に何かがある……それは間違いないだろう。

 そう思い、アンジュが指し示す岩壁を触りながら調べていると……スッ――ある所で、俺の手が岩壁をすり抜けた。


「――これは!?」


 俺は岩壁が透過した場所に顔を突っ込む。

 するとそこには洞窟が広がっていた。


 いや、洞窟というよりも、何かの遺跡なのだろうか?

 そんな作りにも見える。


 石で組み上げられた壁にはランプによる明かりが灯されているが、先がどうなっているかまでは確認出来ない。


 ――どうしてこんなものが?

 グランフォリア王国の迷宮(ダンジョン)は、その隅々まで把握しているつもりであったのだが……。


 そして俺は岩壁でみたありのままを二人に報告した。

「――おそらく、この先にアンジュの探知した反応があるはすだ」



「そうか……二人ともここまでありがとう。あとは私が――」

 グレイマン大隊長が全てを言い終える前に、俺が割って入る。


「仮に、この先にグレイマン大隊長の探し人がいるとしたら……それはどんな状況であるのか、わかっているのだろう?」


「ああ、もちろんだ。それでも私は行かねばならない……そのためにここまで来たのだから」


 おそらく、奥にいるのはグレイマン大隊長の探し人で間違いないだろう。

 そしてその者は、ここに捕らえられている。

 そう考えるのが妥当だろう。


 そんな中に、騎士団が一人でノコノコと入って行けば恰好(かっこう)の的だ。

 死ぬとわかっていて行かせるわけには行かない――。

「ならば俺が見に行こう。俺ならば誰にも気付かれずに奥まで入り込める。それに余計な騒ぎを起こすと、『あの方』とやらに危害が生じるやもしれんからな」


「――確かにヒュージ殿の言うとおりだが……本当にそんなことが?」


「ああ、任せてくれ。それに俺は元王城の人間、秘密は守るさ」


「ああ。ここまで来て機密だのとは言わん……ヒュージ殿、頼んだぞ……」

 そう話すグレイマン大隊長は沈痛な面持ちであった。


「では行ってくる……【気配遮断(スニーク)】」


「先生、お気をつけて」


 俺はアンジュの言葉を背に受けながら、洞窟内部へと足を踏み入れた。

数多くある小説の中から、こちらの小説を選んでいただきありがとうございます。


また、話の続きが気になる! 面白かった! など、少しでも読者様の心を揺さぶることが出来ましたならば、ブックマークや、広告下の【☆☆☆☆☆】より評価していただけましたら、大変大きな励みとなります。


なにとぞ、なにとぞ宜しくお願いします!

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