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声で創造、演じ、恋をする  作者: 早乙女なな
3/13

3 事件と失望

「うそぉぉ?!」

私は素っ頓狂な声を上げてしまった。

だって、だって…。


大事件じゃないか!


貴重なまこっちゃんのライブチケットを落としてしまったなんて、そんな不運な事はない。同担として、どうにかしてあげたい!

「私も探すの手伝うよ!絶対ライブに行って欲しいし」


そ、そんなぁ。と女の子が言う。

「申し訳ないです。こんなに暗くなってしまって…」

「何言ってるの!」

私はたまたまポケットに入っていた髪ゴムを取り出して、髪を縛った。

「好きな人の姿を、目に焼き付けて欲しいの。私は行けないから、その分もっと楽しんで欲しい。仕方なかったで済ませて欲しくない!」

「お姉さん…」


女の子は涙目になりながら、はいと元気良く返事をした。

絶対に、この子の夢を奪ってはいけない。

私が、この子の夢を叶えてやるんだ。

「じゃあ、ここからショップまでの道を逆戻りしてみる?もしかしたら途中で落としただけかもしれないし」

「そうですね。お願いします!」

私と女の子は、もう1度来た道を引き返す事にした。

引き返している途中に落し物が見つかるという事は、よくある事だ。


私たちはゆっくり、ゆっくりと、暗い道のりを進んだ。

私は途中で、スマホのライトを光らせてあげた。

「あ、すみません!ありがとうございます」

女の子は常に腰が低く、最後には必ずありがとうございますと付け加えた。

「見つかりませんね…」

「絶対どこかにあるよ。見つけてライブに行こう」

私は、道の細かいところまで探した。

地面の浅い溝。

排水溝の中。

低木の中など。


それでも、チケットは見つからなかった。

そうこうしてるうちに、とうとうショップに着いてしまった。

「着いちゃいましたね」

女の子が、小さい声で呟く。

このままでは、結果があまりにも残酷すぎる。

「ここから近い交番にも行ってみよう。もしかしたら誰かがもう届けてくれたのかもしれない」

きっとそうだ。そうに違いない。

そうでないと、あまりに辛すぎる。

私はまた、地面をくまなく見ながら進む。

絶対どこかにある。絶対に。


「お姉さん、ありました!」

女の子が叫びながら、何かを手にして振っている。

「チケット、ありました!」

「うそぉ!」

確かによく見ると、女の子の手にはチケットのような用紙が握りしめられていた。

「良かったぁ!」

私は安堵のあまり膝から崩れ落ちそうになった。本当に良かった。


「お姉さんが一緒に探してくださったからです。本当にありがとうございます」

「いやいや、私もチケット見つけて欲しかったから」

2人で喜びを分かち合っていると、そこに自転車に乗った誰かが割って入ってきた。

「君たち、何してるんだ!」

その人は、警察官だった。

「何時だと思ってるんだ、未成年が出歩いて良い時間じゃない」

「え?」


時計をよく見ると、午後8時を指している。

チケットを探してから、1時間も経過していたのだ。

「多分、君が来見田さんだね、お母さんから電話があったんだ。娘が帰ってこないと」

え、嘘でしょ。

まぁ、高3が制服で出歩く時間ではないのかもしれないけれど…。

「これには事情があるんです、反抗で帰らない訳では…」


しかし、抗議をする前に警察官は仲間に連絡をしていた。

「行方不明中の女子高生、発見しました。自宅まで送ります」

「ちょ、最後まで聞いてくださいよ」

そんな事を言っても、警察官は聞いてもいないようだった。

理由があるって言ってるのに。


これって私の責任?

私が探してあげるって言ったのがいけなかったの?

私が連れ回したってことになるの?

私はただ、落し物を探してただけなのに。

まるで罪人のように警察官に連れて行かれる私たち2人。

意味がわからない。






「大変ご迷惑をおかけしました」

玄関で、お母さんが必死に頭を下げている。

後でちゃんと説明しなきゃな。

「お母様も、娘さんによく言ってあげてください」

さっきの私に対しての態度とは打って変わって、ニコニコと話している警察官。

何よ、自分より弱い人にしか強がれないんじゃない。


そうだ、あの子に伝えないと。

「ちょっと待って!」

私は帰ろうとする警察官と、女の子を止めた。

「ライブ、楽しんでね」

女の子は一瞬キョトンとしたが、すぐに閃いた顔をして

「うん!」

と、大きくうなずいた。

そして、2人は玄関を出ると、扉をぴしゃりと閉じた。


「莉菜、リビングに来なさい」

とんでもない圧力を掛けながら、お母さんが言った。

「いや、お母さん聞いて…」

私が反論しようとすると、お母さんは

「いいから来なさい!」

と響く怒号を上げた。怖い、怖い。

「わ、わかったよ…」


リビングへと向かう私。その前を、お母さんがゆっくりと歩く。

もう、早く歩いてよ。恐怖心を煽らないで。

ようやくリビングまでたどり着き、食卓用の椅子に座らされる。

「莉菜」


冷たく放たれたお母さんの声。

一体、何を言う気なの?




「あなたには失望しました」




失望、ね。

全く笑っちゃうな。

まだ私から話、何も聞いてないじゃないの。

勝手に失望されちゃ困るんだけど。

「お母さん、あなたをこんな事する子に育てた覚えないけど」




私だって、こんな怒られる事した覚えないけど。

「あのさ、お母…」




「大体、どんな思考になればこんな時間まで外をほっつき歩く事が出来るの?」




え?

今、私の話を遮った?

遮って話したよね。

今の言葉、そのまま返すよ。

どんな思考になれば娘の話が遮れるのさ。




「私本当に心配したのよ」




それが心配してた人の言動に見えないけど。

「ねぇ、あの…」




「大体、私が学生の頃はこの時間には…」




また始まった。

私が学生の頃は~。これ定番だよね。もはや十八番に近いよ。




「私、てっきりあなたが勉強にやる気を出してくれたのかと思ってたけど、違ったのね」




…は?

今、それ関係ある?




「1回褒められたらそれで良いの?本当にどこまでも舐めて…」




「私の話聞いてよっ!」

私は思いっきりテーブルを叩いて立ち上がった。

もう、聞いてられない。


「聞いてれば自分の話ばっかり。私の話は聞いてくれないんだね。

私は学校帰りに落し物をした子に会ったの。まこっちゃんのライブチケットを落としたって言うから、一緒に探したの」


一応事の経緯は話せた。

でも、お母さんは極端に頭が固い時がある。

今がその時じゃなきゃいいんだけど。




「でも、途中で切り上げる事も出来たでしょ」




あぁ、そう来たか。

分かってないなぁ、ホントに。

そういう事じゃないんだよ。

今日中に見つけなきゃいけなかったんだよ。

今日中じゃなきゃ…。

「今日じゃなきゃダメだったのっ」


まぁ、伝わらないとは思うけど。


「もういいや。わからないなら良い」

私は諦めて、自分の部屋に向かった。

本当に、訳分からない。

私は、チケットを探してあげてただけなのに。

夢も否定された。

やっと、認めて貰えたと思ったのに…。



私は、諦めたくない。けど。


今は、何をしたら良いか、わからない。

いやぁ、遅くなりました!

って、読んでる人いないんですけどね。

でも、夢叶えたいんです。

いつか、彼に読んでもらえる日が来れば…。


よければ評価、お願い致します。

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