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声で創造、演じ、恋をする  作者: 早乙女なな
13/13

10 雪ちゃんのこと④


次の週から、また雪ちゃんの面会が許可された。私が室内に入ると、雪ちゃんは

「お久しぶりでーす」

と言って手を振ってきた。


その瞬間に、また平常心が崩れそうになった。またこの笑顔に会えたんだという喜びが、涙の海へと誘っている。またそこで崩れればいいと言われているみたいだった。


私はそれに対して抵抗しようとは思わなかった。

私は下の階に響かないように静かに、しかし素早く雪ちゃんの所まで駆け寄り、雪ちゃんを思い切り抱きしめた。


「せ、先輩っ?」

「ありがとう。戻って来てくれて」

戸惑う雪ちゃんをよそに、私は抱きしめたその腕をいっそう強くした。


息が浅くなるほど泣いた。あの日あれほど涙を流したのに、まだまだ出てくるのには自分でも驚いた。

「先輩・・・・・・」

雪ちゃんは、ずっと腕の力を緩めない私の身体を、優しく抱きしめ返してくれた。

「私、寝てる時に夢を見たんです」

私の耳元で、雪ちゃんが優しく語り始める。

「私は川を渡ろうとしてたんです。多分三途の川だったんだと思います。そしたら、後ろから声がしたんです。渡っちゃだめだって」


やっぱり。眠っていても、声は聞こえていたんだ。

「それで、腕を引っ張られたんです。川の反対方向に走っていくように。それで出口みたいなところに出て、気付いたらベッドの上で目を開けていました。

私の声はちゃんと届いていたんだ。そう思うと、また涙が溢れそうになった。涙腺が壊れている。


「その時はわからなかったけど、目を覚ましてからわかりました。叫んでくれたのは、先輩だって」

ママから聞きました、と雪ちゃんは話を続ける。

「夜遅かったのに、先輩が走って来てくれたって。私に向けて何度も声をかけてくれたって。多分夢の中で聞いた声は、その時のだったのかもしれませんね」

そう、きっとそうなんだ。


あの時の私の必死の声が、眠っている雪ちゃんの耳にも届いた。それがどんなに嬉しいことか、表したくてもそれほどの語彙力はない。

そうだ。私は雪ちゃんに確認しなければならないことがある。

「私、林くんとのトークショーに出られることになったの。雪ちゃんが寝てる時にも一応伝えてみたんだけど・・・・・・」


「嘘、出れるんですか?!」

雪ちゃんが上体を勢いよく起こして言った。この話は聞こえていなかったみたいだ。

「うん。結果発表の時にサイトを見たら、名前が入ってたから確かだよ」

とりあえず横になろうかと言って、私は雪ちゃんの頭を枕元に戻す。

こんなに元気な様子だが、昨日まで生死をさまよった難病持ちの1人だ。


私は喉が渇いていることに気付き、雪ちゃんに何か飲み物はいるかと聞いた。

「先輩ごめんなさい。しばらくは甘いものとか食べたり飲んだり出来ないんです」

お水があったら持ってきて欲しいです。と雪ちゃんは言った。私は自分の軽率すぎる行動に、とてつもない罪悪感を感じた。


「あ、なんかごめん」

そんなしょうもない一言しか出て来なかった。雪ちゃんは私の顔を見て

「大丈夫ですよ。私はもう慣れっこなので、気にしないでください」

と笑顔で返してくれた。

本当にいい子だ。いつの間にか雪ちゃんのおばあちゃんのような目線になってしまう。

先程の罪悪感はどこへやら、私も笑顔で雪ちゃんの方を見る。


「じゃあ水持ってくるね。ちょっと待ってて」

私は一旦病室を離れて、自販機がある場所を探して歩いた。

自販機を見つけると、私はまず雪ちゃんの水を買い、その後に自分が飲みたいものを買って病室に戻った。


雪ちゃんは本当に強い女の子だと思う。私が雪ちゃんと同い年の時には、大した覚悟を持つようなものに出会わずに日々を過ごしていた。

でも、声優さんに出会った。一生懸命追いかけるものに出会って、人生が180度変わったようにすら感じる。まこっちゃんのことも追いかけ続けたから、雪ちゃんにも出会えた。運命というものは存在するのかな、と時々思う。


「お待たせ、持って来たよ」

雪ちゃんに水のペットボトルを渡し、自分のペットボトルのふたを開ける。ラベルには大きく紅茶と書かれている。ふたを開けると、紅茶というよりもミルクティーに近い甘い香りが広がる。

「先輩、わざわざ買ってきてくれたんですか?」


雪ちゃんが不思議そうな顔をして、私の方をじっと見ている。

「え、だって買わないとないよね・・・・・・」

「先輩、部屋出てすぐ横に給水機ありましたよ」

「え・・・・・・?」


後で確認すると、廊下には確かに“ご自由にお飲みください”と書かれた給水機が置かれていた。

また少しペースを速めて投稿しました。

どうでしょうか?雪ちゃん、元気になってよかったなあと私も思います。

私自身入院生活はよくあったのでわかるのですが、お水だけしか飲めないって結構つらいんです。莉奈はそんな経験はないということにしたんですが、雪ちゃんには私の過去を重ねてみました。

少し先のお話をすると、このあと、ついに莉奈の夢の実現に向けて事が動いていきます。どんな展開になるのか、もしこれを読んでくださっている方は、楽しみにしていてください。

それでは、次の更新までしばしお待ちください。

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