表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/21

05 幕間~それぞれの動き~

いつも閲覧ありがとうございます。

今回は幕間で、ヘクト側とセシル側のお話です。

 一方で、エルネシア王国の王都『シュクレール』にある王城では、有栖と卓以外のクラスメイトが広間にいた。

 というより、目覚めた先がこの王城の広間だったようだ。

 そこに、一人の若い男と一人の老人が現れ、クラスメイト達に語りかけてきた。


「ようこそ、異世界の勇者達よ! 私がエルネシア王国第一王子、ヘクト・ラム・エルネシアである」


「私はエルネシア王国大臣、グズーラ・カイギャクスと申します。 ここはエルネシア王国の王都『シュクレール』にある王城の広間です」


 ヘクト達の発言にクラスメイト全員がざわめく。

 今の自分たちがいる場所が、学校ではなく異世界の城の中だったからだ。


「諸君らを呼び出したのは、この世界に巣くう魔族を倒して貰う為の即戦力としてなのだ」


「現地の者よりも異世界の者の方が、基礎能力が高く、訓練期間も短く済むという事で、呼ばせていただきました」


「ふざけるな!! なんでそんな事をしないといけないんだ!」


「そうよ!! 元の世界に帰して!!」


 ヘクトと大臣のグズーラが、それぞれの理由を告げた瞬間、クラスメイトからのブーイングが発生した。

 それもそのはず。 平和な日常が急に非日常に切り替えられたのだから、納得がいかないのは当然の反応である。


(これはもしかして、主人公になれるチャンス…)


 だが、一部のクラスメイトの者はそうではなく、ライトノベルによくある『主人公最強』になれるチャンスでは…と考える輩もいた。


「諸君らの言いたい事はもっともだ。 だが、それ以上に諸君らの力がどうしても必要なのだ」


 ブーイングが多い中でも、クラスメイト達に勇者としての力を必要とする旨の発言をし、理解を得ようとするが、批判が根強くなかなか話が進まない。


「みんな、ここは引き受けよう」


「「「はぁ!?」」」


 そんな中で、密かに主人公最強の願望を抱いていた一人の少年が引き受けるように提言した。

 他のクラスメイトからしたら空気を読まないこの少年の発言に驚きを隠せなかった。

 さらに厄介な事にその少年と同じ考えを持った者達が少年に続いてこう発言した。


「王子様がここまで頼んでるんだ。 引き受けないとバチが当たるだろ?」


「そうさ。 俺達がこの世界に召喚されたのは運命なのさ」


「元の世界に戻るなら、引き受けた方が効率がいいぞ」


「ふざけないでよ! それで納得いくと思ってるの!?」


「いくも何も、納得するしか選択肢はないぜ?」


「それでも、納得いかないね! 突然、こんな非日常の世界に飛ばされたんだ。 はい、そうですかで済むはずかないじゃないか!」


「「「そうだ、そうだ!!」」」


 それでも、納得いかない面々がさらに怒りを隠しきれず、肯定派の少年達とそれ以外のクラスメイトで対立しだしたのだ。


(まさか、初っぱなからこうなるとは…)


 ヘクトはこの光景に頭を抱え、グズーラは対立したクラスメイト達を宥めようとするが、火に油を注ぐ形になり、さらに悪化していた。

 いわば、ヘクトの計画は、初っぱなから躓いたという事なのだ。


 そして、クラスメイト達はこの時は全く知らなかったのだ。

 彼等が二度と元の世界に戻れない事を…。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ヘクト兄さんが?」


「ええ、『異世界勇者召喚術』の行使を強行したわ。 私やアリア、シリルが力を合わせて介入し、干渉したけど、アリアの屋敷にいったのは二人だけ。 後はみんな王城の中よ」


「なんて事を…。 あれを使って召喚された者は元の世界に帰れないのに…」


 ここは、エルネシア王国の町『フローレ』に構える第一王女ミリア・リム・エルネシアの屋敷。

 そこを拠点と第二王子セシル・ラム・エルネシアの派閥が活動している。

 アリアと同じく継承権を破棄し、セシルをサポートしているミリアから、過激派の第一王子のヘクトが行った内容の報告を受けた。

 ヘクトが実行した術式の魔力をミリアと第二王女のシリルが察知し、当時この屋敷に来ていたアリアとシリルの力を借りて術式に介入し、干渉したが、別の場所…アリアの屋敷に飛んだ者は二人だけだったという。

 それを聞いたセシルは、頭を抱えた。

 ヘクトが行ったのは禁術の類。 それを使って召喚された者は二度と元の世界に戻れないという反作用を知っていたからだ。

 だが、ヘクトと大臣のグズーラは色々な仕込みでミリア達の目から逃れ続けた為に、結局禁術の行使を止められなかった。


「ヘクトは、魔族は滅ぼすべしという過激派だからね。 他国からの批判を浴びても考えを改めるどころか、魔族もろとも駆逐しようとしているからね。 今回の『異世界勇者召喚術』は、魔族の駆逐こそ正しいと証明する為の手段の一つに過ぎない」


「だからと言ってわざわざ異世界から人間を召喚するなんて…」


「異世界の人間は、私達現地の者より基礎能力が高い。 そして、思想を染まらせやすいからでしょうね」


「つまり、ヘクト兄さんの思想の道具と言うわけか…」


 ミリアとのやり取りで、セシルが理解したことはヘクトの思想の道具として、今回の『異世界勇者召喚術』を実行したと言う事だ。

 現地の者より、異世界の人間の方がこの世界の思想を理解していない者が多いので、洗脳させやすいのだ。


「アリア姉様の屋敷にいった二人が無事なのを祈ろう。 ミリア姉様は、シリル姉様と共にヘクト兄さんの動向を調査、襲ってきたら対処してほしい」


「分かったわ。 シリルにも伝えるわね」


 セシルの依頼を了承したミリアは、シリルにも伝える為に部屋を出た。

 彼等の陣営も動き出そうとしていた。



よろしければ、評価(【★★★★★】のところ)か、ブックマークをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ