03 アリアが治める村で暮らしていきます
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「本当にごめんなさい! 私達が止められれば良かったけど…。 ヘクトと大臣が狡猾だったから…」
「ま、まぁまぁ、落ち着いて…、確かに少しショックだったけど、そこまで悲観してないから」
俺達が戻の世界に戻れなくなった事を伝えたアリアが、その直後に必死で謝罪した。
それを俺が、なんとか宥めようとしている状況だ。
確かにショックな部分や驚いた部分はあるけど、俺達はあまり気にしてはいないしな。
「確かに元の世界に戻れなくなった事に関しては驚きましたけど…、私達はあの世界には未練はないですからね」
「えっと…、それってどういう事?」
俺がアリアを宥めている傍らで、有栖が元の世界に未練はない事を口にした。
それを聞いたアリアが、有栖の発言が気になったのか、その理由を聞いてきた。
「まぁ、俺達の両親は中学1年の時に亡くなってるしな」
「そ、そうなのですか!?」
「はい。 通り魔による無差別殺傷事件において、その通り魔に両親は殺されてしまったんです」
「ええっ!?」
そう、俺達の両親は忌まわしき通り魔の無差別殺傷事件で通り魔に殺されたのだ。
無差別に。そして的確に色んな人を刺しまくって次々と人の命を奪って行った。
これはニュースにも大体的に報道されていたので、よほどの世代でない限り皆知っている出来事だったのだ。
そんな内容をアリアとクリスタさんに説明した所、二人は悲しそうな表情をしており、その表情のままアリアが俺達にこう聞いてきた。
「そんな事が…。 じゃあ、両親が死んじゃったならどうやって生活を?」
「一応、親戚が支援してくれた…のかな?」
「親戚筋は嫌がってはいましたがね。 とにかく私達は元の世界に戻れなくても問題はありません」
「そういう訳なんだね」
そして、両親が死んだ後は一応、親戚からの支援は受けていたが、親戚自体は嫌がっていたし、特に有栖は親戚自体も嫌っていた節があった。
そう言った事もあってか、俺と有栖が元の世界に戻れなくても問題はないのだ。
まぁ、それを聞いたアリアとこの間はずっと黙って聞いていたクリスタさんの表情はやや歪んでいたが…。
「ともあれ、俺達は問題ないが、王都『シュクレール』の王城にいるクラスメイトが聞いたら発狂してそうだな」
「そうなるね。 だからヘクトや過激派の大臣たちはそういう事実は皆には敢えて伝えないんだよ。 途中で反逆されたくはないからね」
「なるほど…」
「まぁ、その人達にとってはその事実は都合が悪いでしょうからね」
とまぁ、そんな感じで俺達とアリアとクリスタさんと話をした。
そして、俺達の今後についての話題に入り、そこでアリアから俺達に、こう提案した。
「それで、スグルお兄ちゃんとアリスお姉ちゃんの今後についてだけど、この屋敷で一緒に暮らしていかない?」
「この屋敷で?」
「うん、私は王女としてだけでなく、辺境の村の村長も兼任しているからね。 自然に囲まれた村でのんびり暮らしてみるのもいいよ」
まさか、アリアが王女だけでなく、辺境の村の村長も兼任しているとは…。
という事は、この屋敷はもしかして…?
「ひょっとして、この屋敷はその辺境の村の村長宅でもあったりする?」
「うん、その通りだよ」
アリアが俺の質問に対して、ドヤ顔をしながら答えた。
この屋敷がアリアの村長としての家でもあったとは…想像できなかったよ。
「私達がこの辺境の村で暮らすのも悪くはないですが…、私達が居ないことに関しては向こうも気付いているのではないですか?」
「その可能性は否定できないけど、確率は少ないと思うよ。 何せこの辺境の村『キルシュ』は、王都『シュクレール』から大体馬車で5日はかかる距離だしね」
「5日!?」
「私やクリスタは転移ですぐに行くから実感が湧かないけど、普通なら大体それくらいは掛るくらいには王都との距離はかなりあるよ」
うわぁ、辺境の村と王都との距離は馬車で5日掛かるくらいの距離になっているのか…。
気が遠くなるな…。
すると、突然有栖が、とある心配をし始めたようで
「それだと、トイレが心配ですね…。 途中で行きたくなってきた場合とかあるから」
「あ、大丈夫だよ。 所要時間が2、3時間くらいの距離ごとにトイレ休憩所や宿泊所があるから、トイレに関しては大丈夫だよ。 ちゃんとトイレは男女別にあるしね」
「それなら安心ですね、兄さん」
「ああ、ならばお言葉に甘えてここで暮らしていく事にするよ」
外出とかがあった場合のトイレの心配をしていた有栖だが、アリアからの説明で安心したようだ。
これを確認した俺は、この辺境の村『キルシュ』でゆっくり残りの人生を全うすることにしようと決意した。
「決まりだね! じゃあ、改めてよろしくね、スグルお兄ちゃんにアリスお姉ちゃん」
「私からもよろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ兄共々よろしくお願いしますね」
「よろしくな、アリアにクリスタさん」
そう言いながら、俺達はお互い握手をしあった。 これから一緒に住むことになるのだからこうした挨拶はだいじだからな。
こうして、俺と有栖の異世界での新たな生活は、この『キルシュ』の村から始まっていくのだ。
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