02 異世界に召喚された理由がこれまた酷い
本日二回目の投稿です
「少し落ち着いた?」
「あ、ああ…」
「本当に夢ではなかったんですね…」
異世界に連れてこられたという事実にショックで固まった俺達をアリア王女とクリスタさんに宥めてもらった。
二人の温もりで、これは夢でないと改めて思い知らされた。
今更、ショックを受けてもしょうがないので、何でこうなったのかを聞いてみる事にした。
「それで、アリア王女…。 俺達は何でこの世界に召喚されたんですか?」
「アリアと呼び捨てでいいよ。 あと、話し方もため口でいいよ。 私は継承権争いが嫌で、王位継承権を捨てたからね。 王女の肩書は残ってるけど」
「継承権を捨てたのですか?」
アリア王女…もといアリアが、王位継承権を捨てたようで、そのことについて有栖は気になったが、まずは俺達の召喚された理由を聞かないと…。
「うん、今は穏健派のセシル第二王子と過激派のヘクト第一王子が継承権を巡っていざこざを起こしてるんだよ」
「穏健派と過激派…? アリアの国は本当に穏やかじゃないな」
「そうなんだよ。 特に過激派思想のヘクトは、ようやく和平状態になった魔族の人たちを全滅させるべきだという考えを持っている厄介な存在になってるんだよ」
ここまでで分かったのは、魔族とはようやく和平状態になったようなのだが、どうも過激派の第一王子がそれに怒りを隠さず、魔族は殲滅すべしという考えを掲げているようだ。
「でも、私を始め、お姉ちゃん達…いわば第一王女や第二王女は、弟のセシルの味方だからね。 過激派は思うように成果が上がってないんだよ」
「それに折角の和平を結んだ魔族を殲滅するなど愚の骨頂だと他国からも批判を浴びている状態ですからね」
「ああ…、確かに今どきその思想は…危ないですよね」
他国からも過激派思想に批判をしているのに、第一王子は考えを改めないのか。
確かに有栖の言うように、今の流れからして危ない考えだろうしな。
「そこで、数少ない過激派の大臣と結託して魔族を倒そうと即戦力を集めるために、禁断の手段を使ったんだよ。 それが『異世界勇者召喚術』だよ」
「何だって!?」
ここで『異世界勇者召喚術』という名称が出て来た事に俺達は驚く。
「まさか、私達は…?」
有栖もここで嫌な予感がしたようで、俺達がこの世界に転移した理由を恐る恐る聞いた。
「そうだよ。 あの第一王子ヘクトの主張が正しいと証明するために、魔族を殲滅する力を持った異世界の人たちを纏めて召喚したんだよ」
「ちなみに、召喚を実行した場所はエルネシア王国の首都『シュクレール』に存在する王城でした。 本来ならスグル様達もそこに呼ばれる予定でした」
「言われてみれば…。 では、何故私達はここに…?」
本来なら俺や有栖もその首都『シュクレール』の王城に呼ばれるはずだったらしいが、俺と有栖はこのアリアの屋敷にいる。
それは何故なのかと、有栖は二人に理由を聞いたようだ。
「私や第一王女のミリア・リム・エルネシアお姉ちゃん…、そして第二王女のシリル・リム・エルネシアお姉ちゃんがその術の魔力を察知して、何とか介入しようとしたんだよ」
「あの術、介入できるのか?」
「普通は無理だけど、私と二人のお姉ちゃんが力を合わせて魔力を練れば介入できるんだよ。 成功率は低いけど。 で、それを使って何人かをこっちに連れてこようとしたんだけど、ここに連れてくる事が出来たのはスグルお兄ちゃんとアリスお姉ちゃんだけだったんだよ」
「出来るだけ、多くの人を第一王子の思想の道具として扱われるのを避けたかったのですが…。 本当に申し訳ありません」
「い、いえ…! あなた達は悪くないですよ」
「そうだよ。 元凶はあのヘクトって奴だろう?」
俺達がここに飛ばされた理由は理解した。
俺と有栖がこの屋敷に召喚されたのは、アリア達姉妹が介入したから、こっちに呼ばれたみたいだった。
という事は、多くのクラスメイトがあの第一王子の思想の道具として扱われるわけか…。 なんだかなぁ。
あと、それに関連してかクリスタさんが謝罪したので、俺達は慌てて宥める。
「スグルお兄ちゃん。 クリスタが謝罪しているのはそれだけじゃないんだよ。 もう一つ重大な事があってね…。 これに関しては私も謝りたかったし…」
「重大な事? どういう事ですか?」
そこにアリアがもう一つの謝罪案件的な何かを言おうとしていた。
それが何なのか、有栖が首を傾げながらアリアに聞いた。
「第一王子ヘクトが使った『異世界勇者召喚術』は、禁術なんだよ。 理を壊す力を持っているからね」
「理を壊すタイプの禁術…、という事は…」
あー、何か嫌な予感がしてきた。 多分、これは下手したら他の人なら発狂するやつだ。
「そうだよ。 『異世界勇者召喚術』という禁術で転移された人たちは、理を無理やり召喚先の世界に固定してしまうため、二度と元の世界に帰れなくなるんだよ」
嫌な予感が的中した…。 俺と有栖は唖然とした。
つまり俺達を含め、この世界に転移してしまったクラスメイトは、もう二度と元の世界に帰れないという事。
アリアが言うもう一つの謝罪案件は、この事を言っていたのだ…。
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